昨今の異常気象の世界的な増加や、昨年9月の国連気候行動サミット等を背景に、気候変動問題に対する国際社会の危機感が、これまでになく高まっている。
私が昨年12月にスペインのマドリードで開催されたCOP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)に参加した際にも、2030年の温室効果ガス削減目標引き上げに向けた国際的議論が活発化していると身をもって感じた。
翻ってわが国はというと、経団連が主体的に推進してきた「低炭素社会実行計画」をはじめ、具体的な対策を積み重ねてきたことから、温室効果ガス排出量(2018年度)は、2014年度以降5年連続で減少しており、基準年の2013年度比で見ても、11%以上削減している。主要国と比較しても高い水準で、G7では英国に次ぐ2位となっている。
日本の優れた実績を国際社会の場でPRすることは重要であり、COP25の場では小泉環境大臣とともに経団連としても、日本の削減実績をアピールし、今後も具体的な行動で貢献していくという姿勢を表明した。
今後の方向性としては、昨年6月に閣議決定された日本の長期戦略でも掲げられているように、脱炭素社会は既存の技術だけでは到底なし得ず、非連続なイノベーション創出が不可欠である。
経団連としても、「チャレンジ・ゼロ」と呼ばれる行動指針を打ち出した。実現の裏付けがなく各国固有の事情への配慮に欠けた一方的な削減目標値の引き上げよりも、そこに至るまでの具体的なアクションの積み重ねこそが重要であるとの考えから、脱炭素社会実現に向けて各企業が取り組むイノベーションへのチャレンジを後押ししていく。
かけがえのない地球を次世代に受け継いでいくためには、国内だけでなく、地球規模で長期にわたり大幅に温室効果ガスを削減することが必要となる。「チャレンジ・ゼロ」の取り組みをはじめ、企業、政府、研究機関同士のイノベーションに向けた連携・協働が促進され、「環境と成長の好循環」が実現するよう、微力ながら励んでまいる所存である。