十倉雅和(経団連副会長、農業活性化委員長/住友化学社長)
農業の先端・成長産業化に向けて、経済界も最大限に貢献する決意である。経済界と農業界の連携はかつてなく深化している。経団連でも2016年には「連携プラットフォーム」を設立、企業のシーズと農業のニーズのマッチングを進めてきた。農業が産業として成り立つためには、競争、切磋琢磨できる事業環境が不可欠である。公益性と事業性の両立という、国連のSDGsや、Society 5.0とも共通するテーマに、農業はチャレンジしてほしい。
小池 聡(ベジタリア社長)
農場経営に新規参入、実践するなかで、前職のベンチャーキャピタリスト、IT企業経営の知見が農作物の生産現場で課題解決の糸口となり、最新植物科学とIoTセンサーなどのテクノロジーを活用した現在の事業(ビッグデータの解析、植物病院®)につながった。生産者と消費者をより結び付けたフードバリューチェーンのリデザインも必要。高齢化が進む農業で、ICTが当たり前のものとして受け入れられるには、インフラの整備が喫緊の課題である。今後、世界で人口増による食糧危機が懸念されるが、日本の農業、先端技術は、こうした地球規模の課題解決のソリューションを持っている。
別所智博(農林水産省農林水産技術会議事務局長)
日本の農業は今、転換期、チャンスの時代を迎えている。国内人口の減少、世界の食糧市場の拡大という状況下で、日本の農業が勝ち残るためには、国内市場への安定供給と海外市場でのシェア拡大の両立が重要な政策課題である。研究開発や社会実装を進めるうえで重要なポイントは、オープンイノベーションと出口戦略。作物の育成、収穫、流通、加工のバリューチェーン全体で活用できるデータ連携基盤を構築し、農業が総合性、持続可能性を高めることが、経済成長、さらには食料の安全保障につながる。
佐藤康博(経団連審議員会副議長、農業活性化委員長/みずほフィナンシャルグループ社長)
農業政策は、競争力強化、生産性向上に軸足を置いた「産業政策」へと変化しつつある。今後、日本の農業が輸出産業化していくためにはGAP認証の取得が鍵となる。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、その大きなチャンスである。また、農業の「データイノベーション」が進むなか、ITリテラシーと経営リテラシーを持った農業者の育成が急務であり、農業経営体のCFOとして金融業界の人材の活用が進むことを期待する。「面白くて儲かる農業」を打ち出すことが、農業の将来のために必要である。
嶋﨑秀樹(トップリバー社長)
「農業100年の計は人材育成にあり」というのが、私の持論である。当社は「儲かる農業」を標榜し、農業の組織化・大規模化を進めるとともに、若手農業経営者の育成にも努めてきた。農業を持続可能な産業とするためには、経営感覚を持った農業者の育成が不可欠である。データをきちんと活用するためには、意欲のある農業経営者にITリテラシーを身に付けてもらう仕組みを考えるべき。企業で蓄積された人材育成のノウハウを活用するなど、経済界と農業界の人材交流も、積極的に行っていきたい。
青山浩子(司会:21世紀政策研究所研究委員/農業ジャーナリスト)
- ■ フードバリューチェーンの動き
- ベンチャーキャピタリストから農業へ
- 農業100年の計は人材育成にあり
- 深化する経済界と農業界の連携
- 農業に参入する法人、若手就農者が増えている
- 世界市場で勝ち残れる農業を目指す
- ■ イノベーションが開く先端農業の姿
- Society 5.0における農林水産分野の役割
- デジタル分野・バイオ分野の革新的技術を活用せよ
- 農作物の「カスタマイズ化」が進む
- ■ 現場への実装可能性、農業に与えるインパクト
- フードバリューチェーンの「リデザイン」が必要
- 意欲のある農家に対するピンポイント支援が必要
- ■ 実現に向けた取り組み、経済界・農業界の役割
- 経済界の人材育成ノウハウを農業界へ
- 「面白くて儲かる農業」を打ち出せ
- 農業の持続可能性は食料安保につながる
- 農業は「公益性と事業性の両立」にチャレンジせよ
- 日本の農業は地球規模の課題に取り組んでいる