伊藤雅俊(経団連審議員会副議長/味の素会長)
従業員が健康に働くことと企業の成長は一体である。当社の「行動規範」において「従業員が健やかに働けるように、健康状態を把握し、健康の維持・管理の取り組みを行う」ことを明示している。具体的な取り組みとして、約4000人の従業員に対して、100%の実施率で個別面談を行うなど、「働きがい」を実感してもらうよう努めている。また、食品産業もヘルスケア産業の一部であると考え、「おいしさ」にこだわった健康食品の開発・普及に注力している。
翁 百合(日本総合研究所副理事長)
未来投資会議の構造改革推進徹底会合の議論では「医療・介護分野においてパラダイムシフトを起こしていく」という考え方のもと、医療・介護の軸足を「健康管理と病気・介護予防」「自立支援」に移すことを掲げている。その鍵となるのがデータの活用・分析であり、国民一人ひとりの健康医療関連データが一元的に管理される基盤整備が不可欠である。健康経営の普及、ヘルスケア産業の振興は、健康長寿、医療保険財政健全化などにより、国民の「将来不安」解消にも貢献し、日本の経済成長に大きく寄与すると期待している。
鈴木伸弥(経団連社会保障委員長/明治安田生命保険会長)
健康経営は、企業には生産性向上や健康保険財政の健全化などのメリットがある。また、従業員の健康増進を通じ、社会保障費の伸びを抑制し、国家財政を持続可能なものとする面で企業は一定の貢献ができる。当社は、特に、生活習慣病、メンタルヘルス、女性の健康管理への取り組みを強化している。また、ベンチャー企業と共同で中小企業向けの健康支援プログラムを開発し、提供を始めた。高齢者データは日本の財産ともいえ、これを活用できる優秀な人材をヘルスケア分野に振り向けていく仕組みが必要だ。
古井祐司(自治医科大学客員教授)
この40年間で会社員の平均年齢が7歳上昇し、職場における病気の発症率・死亡率は2倍に高まるなか、従業員の健康に投資する企業としない企業の差が顕在化してきている。企業には、経営トップのリーダーシップのもと、健康経営に取り組むことが求められる。一方、健保組合等のデータヘルス活用によって、職場の健康状況を構造化でき、打つべき対策がわかりやすくなる。データヘルスを活用し、各社および従業員個々の健康状態を「見える化」することで、健康に対する感度が高まっていくことが期待される。
井上 隆(司会:経団連常務理事)
- ■ 健康経営の推進
- 生産性向上のための健康経営
- 健康リスクの上昇とアブセンティーズム・プレゼンティーズム
- 医療・介護分野においてパラダイムシフトを起こしていく
- 従業員の80%が「働きがい」を実感できる会社にしたい
- 生活習慣病、メンタルヘルス、女性の健康管理への取り組みを強化
- ■ ヘルスケア産業の振興による国民全体の健康増進
- ヘルスケア産業が国民の将来不安をも解消する
- 健康に配慮しながらも「おいしさ」にこだわりたい
- ベンチャー企業と共同でヘルスケア事業を展開
- データヘルスによる「見える化」が人々の健康感度を上げる
- ■ 今後の企業の取り組みに対する期待や意気込み
- 健康経営の拡大を期待する
- 健康経営効果が出ている企業の3つの特徴
- 健康経営が経団連会員企業に浸透することを期待する
- 会社自体が健康でなければ健康経営はできない