「日本にとって人こそ資源であり、人を育てることが大事」と聞いて、異を唱える人はまずいないだろう。イノベーションを起こし、グローバルに活躍できる人材を輩出するためにも、幅広く質の高い教育を受けた厚みある層が存在し続けることが重要である。
将来の豊かな中間層を形成すべき日本の子どもたちに、現在は7人に1人という貧困問題が存在する。教育の機会均等が脅かされているとすれば、何とかしなければならない。
「教育国債」「子ども保険」といろいろな案が出てはいるが、日本の将来を担う子どもたちの健全な成長を支援するためには、国民全体で、親の健全な子育てを支える社会の仕組みが必要となろう。例えば、出産、育児、保育、そして義務教育についてはナショナルミニマムとして、全国一律に無償にできないだろうか。そうすることが、若い人たちの将来不安を多少なりとも和らげ、家族を持つことにつながり、結果として人口減少の抑制にもつながってほしい。
また、将来を担う子どもたちは国民全体で育てるという前提に立つならば、その財源は広く国民から集める税財源がふさわしいと考える。まず、社会保障給付を子どもたちへの支援に重点的に配分するために、現在の高齢者に偏った社会保障給付の見直しを行う。それでも足りないのならば、国民全体での負担を増やすしかない。
少子高齢化はどんどん進む。都市部への一極集中にも歯止めはかからない。団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年まで8年を切った。経済や地域の格差だけでなく、世代や所得の格差で社会の分断が起こるような事態は何としても避けなければならない。
将来を担う子どもたちの明るい未来を示し、きちんとした議論、十分な説明がなされれば、たとえ負担増が伴っても、この国では年齢を問わず、男女を問わず、皆、理解を示すと思う。やすきに流れがちな政治と世論に、厳しくとも必要な取り組みを浸透させるのが、経済界の役割ではないか。