石塚邦雄(経団連副会長/三越伊勢丹ホールディングス特別顧問)
生産性を高め、女性・高齢者・外国人などを新たな労働力として投入していけば、ある程度、潜在成長率を維持できる。一方、人口減少による消費市場の縮小は、われわれ小売・サービス業にとって深刻な問題である。働き方改革は、政府に言われたから進めるのではなく、企業にとって必要不可欠なものと認識し、自ら積極的に取り組むべきものであり、その目的はあくまでも生産性向上である。そして日本経済全体の生産性向上に向け、今後、業界内、サプライチェーン内での連携が重要になってくるだろう。
武田洋子(三菱総合研究所政策・経済研究センター副センター長)
政府の「働き方改革実現会議」では、長時間労働の是正、同一労働同一賃金、多様な人材の活躍、柔軟な労働市場といったテーマが議論された。働き方改革の本質は、日本の労働市場における慣行を改めることで、付加価値を高めるとともに、成長分野への労働移動により、マクロの生産性の上昇につなげることにある。日本の社会課題をイノベーションによって解決していくことで、持続可能な社会を実現することが重要である。
山内隆司(経団連副会長/大成建設会長)
建設業界は、他の産業と比べ就業者に高齢者が多く、若年者が少ない。また、賃金水準は低く、労働時間は長い。こうした後進性を打破するために、業界を挙げて「背水の陣」で働き方改革に取り組みたい。鍵となるのは、技術力による生産性向上であろう。業界内でもICTを活用した合理化・効率化が進められており、当社としても他社のモデルとなるべく率先して取り組んでいる。工事消化がピークを迎える2019年を乗り切るためにも、一層の改革を進めなければならない。
進藤清貴(経団連雇用政策委員長/王子ホールディングス会長)
紙パルプ産業は、人口減少、少子化、グローバリゼーション、ICT化の進展による電子媒体への移行など構造的要因に直面し、事業構造の再構築が不可欠な状況にある。事業構造の再構築をスピーディーに行うために、質の高い働き方がますます重要になっている。働き方改革は、「企業の力の源泉は人材」という大原則のもと、意識改革により旧態依然とした仕事の進め方を変え、仕事の質を高めることで、生産性の向上を目指すものだと考える。当社グループとしても、働き方改革として、労働時間改革、人事制度改訂、ワーク・ライフ・バランス支援強化に取り組んでいる。
椋田哲史(司会:経団連専務理事)
- ■ 働き方改革の必要性と課題
- 働き方改革の本質は、持続可能な社会の実現
- 働き方改革は企業の成長に不可欠
- 経営者も含め従業員一人ひとりの意識改革が不可欠
- 建設業界は技術革新による生産性向上を目指す
- ■ 課題克服に向けた各社の対応
- 営業時間短縮で社員間のコミュニケーションが密になる
- 経営トップ自らが働き方改革を先導することが重要
- 「電子調達」で生産性を高める
- 多様な働き手をマネジメントする管理職の育成が鍵
- 日本各地で小中学校の女子学生限定の見学会を開催
- 社員に対するダイバーシティ教育から社会を変えていく
- ■ 日本全体で改革に取り組んでいくには
- 日本の社会課題解決によるイノベーションを目指せ
- 橋梁やトンネルの仕様は「レディーメード」で
- 高齢者のモチベーションを高めるための定年延長
- 企業の壁を取り払った、業界内・サプライチェーン内での連携が必要