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月刊 経団連

月刊 経団連2017年4月号

特集 未来の観光産業・地域のあり方を探る

巻頭言

グローバリゼーションの新潮流

飯島彰己 (経団連副会長/三井物産会長)

グローバリゼーションへの逆風が強まっている。近年のグローバリゼーションの潮流のもとでは、先進国の企業は新興国で新たな収益機会を獲得し、新興国はそれを追い風に経済発展を加速させるという互恵的な関係が構築され、双方にメリットをもたらした。しかし、先進国、新興国の双方で国内の格差を拡大させるなど、負の影響も小さくなく、それが逆風の背景となっている。

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特集

未来の観光産業・地域のあり方を探る

2016年の訪日外国人旅行者数は2404万人と過去最高に達し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、「観光立国・観光先進国」に向けた取り組みは、全国で本格化してきている。他方、2030年を見据えると、世界的な観光需要の増加と誘客競争の激化、自動運転・IoT等の先端技術の進展、国内人口の減少・高齢化等により、観光産業を取り巻く状況は大きく変化していることが想定される。こうしたなか、わが国観光産業はどのような姿を目指すべきなのか、その将来像と、そこに至る道のりをめぐり議論する。

座談会:2030年のわが国観光産業を描く

  • 冨田哲郎 (経団連審議員会副議長・観光委員長/東日本旅客鉄道社長)
  • 田村明比古 (観光庁長官)
  • 伊達美和子 (森トラスト社長)
  • デービッド・アトキンソン (小西美術工藝社社長)
  • 今泉典彦 (司会:経団連観光委員会企画部会長/第一生命経済研究所副社長)

PDF形式にて全文公開中

冨田哲郎(経団連審議員会副議長・観光委員長/東日本旅客鉄道社長)
観光は裾野の広い産業であり、地方を含めた日本経済への波及効果は大きい。カルチャーツーリズム、アグリツーリズム、テクニカルビジット等、新たなスタイルの観光を開発していくこと、IoTやAI、自動運転など技術革新の成果を取り入れていくこと、地域主導による自律的な成長を促すこと等がポイントとなる。「稼ぐ」観光を実現するため、経団連としても情報プラットホームの構築、観光のバリアフリー化、休暇の分散化、観光人材の育成等に、政府・観光庁と一体となって取り組みたい。

田村明比古(観光庁長官)
人口減少時代を迎えるなか、日本が成長を維持していくには、交流人口を増やすことが不可欠であり、観光が有力な手段となる。観光は、日本の成長戦略の柱、地方創生の切り札である。2016年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」では、2030年に訪日外国人旅行者6000万人、同旅行消費額15兆円というチャレンジングな目標を掲げた。日本の観光産業の潜在能力は高く、成長する余地は大きい。政府、自治体、企業等が一体となって取り組み、目標を達成したい。

伊達美和子(森トラスト社長)
この3年間で観光をめぐる環境は劇的に変化した。ホテル業界の人たちの明るい顔を見ると、それを実感する。今は30年に1度のチャンスの時だと思っている。製造業のように「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし生産性を向上させるなど、今すぐにできることに取り組むべきである。そのうえで投資が必要になってくる。自治体が中心となって地域のコミットメントを形成し、観光のマスタープランを策定してもらいたい。投資に対する税制優遇、雇用に対する補助などのインセンティブも必要である。

デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)
日本の観光は潜在能力と実績のギャップが大きい。日本は観光立国の4条件(気候、自然、文化、食事)すべてを備え、本来は世界のトップ10に入っていてもおかしくない。人口増加時代に構築された「昭和の観光」のシステムを引きずっていることが、潜在能力を活かし切れていない原因の1つだろう。観光は産業であり稼ぐもの。ホテル、文化財や国立公園の整備等を進めるとともに、計画的かつ戦略的に、データ根拠に基づいた賢い発信やマーケティングに注力し、観光資源を磨き上げるべき。

今泉典彦(司会:経団連観光委員会企画部会長/第一生命経済研究所副社長)
観光産業が抱えている課題を解決し「観光立国・観光先進国」を実現する鍵の1つは人材にある。経団連の観光委員会では、観光人材育成の一翼を担うべく、立教大学・首都大学東京と連携して「経団連観光インターンシップ」を実施し、幅広い業種の企業の参画のもと、講義や現場での職業実習を行っているが、こうした観光人材の育成は、特に地方において急務である。企画部会としても、同インターンシップの継続・内容の質的向上を図るとともに、地方大学への展開を進めていきたい。

  • ■ 次世代の観光産業のあり方
  • 観光産業が「明日の日本」を支える
  • 日本は「観光立国」の4条件を備えている
  • 観光にかかわる企業はどうあるべきか
  • ホテル業界は30年に1度の変革期を迎えている
  • ■ 実現に向けた重要施策
  • 「稼ぐ力」を発揮するために
  • ハード面への投資にはインセンティブが必要
  • 魅力は「ある・ない」ではなく、つくるもの
  • 「観光先進国」への「3つの視点」
  • ■ 経済界・経団連に求められる取り組み
  • 観光人材の育成を積極的にバックアップしたい

創造的観光立国を目指せ
 寺島実郎(日本総合研究所会長)

  • なぜ「観光立国」なのか
  • 真のIR戦略とは
  • 「移動と交流」がもたらすもの

観光サービスの労働生産性革新への課題
 内藤 耕(サービス産業革新推進機構代表理事)

  • 時代に合わなくなったサービス
  • 方法論の確立
  • 科学的アプローチの導入

2030年において九州観光で実現したいこと
 石原 進(九州観光推進機構会長)

  • 九州観光戦略目標の見直し
  • インバウンドのさらなる獲得に向けて
    ~効果的なプロモーションとインフラ対策
  • 着実に課題に取り組む
    ~旅行支出増や労働生産性の向上に向けた施策

観光が豊かな地域をつくる
 月岡壽男(信州いいやま観光局理事長)

  • 観光地としての草創
    ~豪雪を活かしたスキー産業と農家民宿
  • 地域資源のブランド化
    ~ないものを無理に求めず、あるものを活用
  • 地域を巻き込むことで地域の魅力が込められる

これからの観光地づくりのあり方
 西村幸夫(東京大学大学院工学系研究科教授)

  • 連携で磨き上げる観光戦略が大切
  • 訪日客の関心は日本の都市・地域の生活そのもの
  • 飛騨古川が示唆するこれからの観光地づくりのあり方

グローバルコミュニケーション計画が実現する「言葉の壁のない社会」
 木俵 豊(情報通信研究機構ユニバーサルコミュニケーション研究所長)

  • 多言語音声翻訳技術とは
  • グローバルコミュニケーション計画
  • 社会に広がる多言語音声翻訳技術
  • さらなる翻訳精度の向上を目指して

誰もが旅を楽しめる社会に向けて
―すべての「旅したい」を応援します
 小山佳延(クラブツーリズム社長)

  • 障がいがあっても旅を楽しんでいただくために
  • もう1つのバリア“加齢”への対応
  • 東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた、
    ユニバーサルツーリズムの広がり

改定「観光立国推進基本計画」に対する意見
―地域主導の観光先進国の実現に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/012.html
 冨田哲郎(経団連審議員会副議長・観光委員長/東日本旅客鉄道社長)
 菰田正信(経団連観光委員長/三井不動産社長)

  • 次の5年が「観光立国・観光先進国」実現への分水嶺
  • 「稼ぐ観光」「地域主導の観光」を
  • 観光消費を喚起し、創造するために
  • 経団連のアクション
    ~消費喚起と人材育成

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一般記事

【提言】
Society 5.0の実現に向け官民プロジェクトの実行を

―提言「Society 5.0実現による日本再興」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/010.html
 内山田竹志(経団連副会長、未来産業・技術委員長/トヨタ自動車会長)
 小野寺 正(経団連未来産業・技術委員長/KDDI会長)

  • Society 5.0の位置付け
  • 実現に向けた行動計画
  • 必要な施策~5つの壁の突破

【提言】
Society 5.0に向けた電子政府の構築を求める

http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/011.html
 山本正已(経団連行政改革推進委員長/富士通会長)

  • 行政の電子化をめぐる状況と必要な視点
  • 電子政府構築に必要な施策(10の提言)

生物多様性の主流化と経団連自然保護協議会の活動
https://www.keidanren.net/kncf/
 二宮雅也(経団連自然保護協議会会長/損害保険ジャパン日本興亜会長)

  • 自然保護プロジェクトへの支援総額は37億円
  • 生物多様性の主流化を目指す愛知目標とSDGs
  • 「自然の恵み」を意識した事業活動の展開を
  • 25周年記念特別基金助成事業の実施
  • 愛知目標やSDGsへの貢献に向けて

連載

  • 企業スポーツの新たな挑戦
    シナジーを活かした企業スポーツのかたち
    ―コナミグループの取り組み

    • きっかけはゲームが持つ運動効果
    • 子どもたちの心と体を育み、アスリートの原石を発掘する
    • 引退後もスポーツにかかわることを可能に
    • 競技の普及発展に向けて
    • 娯楽と健康の分野で価値を提供
  • 地域と企業の連携が未来を生み出す
    希少糖の研究
    ―香川発のイノベーション

    • 進化の過程で見捨てられた単糖
    • 事業への参画は偶然
    • 学会にはコカ・コーラ、ネスレ、三菱商事などが参加
  • あの時、あの言葉
    心優しき強者となろう
    森川典子(ボッシュ副社長)

  • Essay「時の調べ」
    ルール整備の進む「日本ワイン」とその課題
    蛯原健介(明治学院大学法学部教授)

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