1. トップ
  2. 月刊 経団連
  3. 座談会・対談
  4. 2030年のわが国観光産業を描く

月刊 経団連  座談会・対談 2030年のわが国観光産業を描く

今泉典彦
司会:経団連観光委員会企画部会長
第一生命経済研究所副社長

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長

伊達美和子
森トラスト社長

田村明比古
観光庁長官

冨田哲郎
経団連審議員会副議長・観光委員長
東日本旅客鉄道社長

PDF形式にて全文公開中

冨田哲郎(経団連審議員会副議長・観光委員長/東日本旅客鉄道社長)
観光は裾野の広い産業であり、地方を含めた日本経済への波及効果は大きい。カルチャーツーリズム、アグリツーリズム、テクニカルビジット等、新たなスタイルの観光を開発していくこと、IoTやAI、自動運転など技術革新の成果を取り入れていくこと、地域主導による自律的な成長を促すこと等がポイントとなる。「稼ぐ」観光を実現するため、経団連としても情報プラットホームの構築、観光のバリアフリー化、休暇の分散化、観光人材の育成等に、政府・観光庁と一体となって取り組みたい。

田村明比古(観光庁長官)
人口減少時代を迎えるなか、日本が成長を維持していくには、交流人口を増やすことが不可欠であり、観光が有力な手段となる。観光は、日本の成長戦略の柱、地方創生の切り札である。2016年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」では、2030年に訪日外国人旅行者6000万人、同旅行消費額15兆円というチャレンジングな目標を掲げた。日本の観光産業の潜在能力は高く、成長する余地は大きい。政府、自治体、企業等が一体となって取り組み、目標を達成したい。

伊達美和子(森トラスト社長)
この3年間で観光をめぐる環境は劇的に変化した。ホテル業界の人たちの明るい顔を見ると、それを実感する。今は30年に1度のチャンスの時だと思っている。製造業のように「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし生産性を向上させるなど、今すぐにできることに取り組むべきである。そのうえで投資が必要になってくる。自治体が中心となって地域のコミットメントを形成し、観光のマスタープランを策定してもらいたい。投資に対する税制優遇、雇用に対する補助などのインセンティブも必要である。

デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)
日本の観光は潜在能力と実績のギャップが大きい。日本は観光立国の4条件(気候、自然、文化、食事)すべてを備え、本来は世界のトップ10に入っていてもおかしくない。人口増加時代に構築された「昭和の観光」のシステムを引きずっていることが、潜在能力を活かし切れていない原因の1つだろう。観光は産業であり稼ぐもの。ホテル、文化財や国立公園の整備等を進めるとともに、計画的かつ戦略的に、データ根拠に基づいた賢い発信やマーケティングに注力し、観光資源を磨き上げるべき。

今泉典彦(司会:経団連観光委員会企画部会長/第一生命経済研究所副社長)
観光産業が抱えている課題を解決し「観光立国・観光先進国」を実現する鍵の1つは人材にある。経団連の観光委員会では、観光人材育成の一翼を担うべく、立教大学・首都大学東京と連携して「経団連観光インターンシップ」を実施し、幅広い業種の企業の参画のもと、講義や現場での職業実習を行っているが、こうした観光人材の育成は、特に地方において急務である。企画部会としても、同インターンシップの継続・内容の質的向上を図るとともに、地方大学への展開を進めていきたい。

  • ■ 次世代の観光産業のあり方
  • 観光産業が「明日の日本」を支える
  • 日本は「観光立国」の4条件を備えている
  • 観光にかかわる企業はどうあるべきか
  • ホテル業界は30年に1度の変革期を迎えている
  • ■ 実現に向けた重要施策
  • 「稼ぐ力」を発揮するために
  • ハード面への投資にはインセンティブが必要
  • 魅力は「ある・ない」ではなく、つくるもの
  • 「観光先進国」への「3つの視点」
  • ■ 経済界・経団連に求められる取り組み
  • 観光人材の育成を積極的にバックアップしたい

「2017年4月号」一覧はこちら

「座談会・対談」一覧はこちら