先日の英国メイ首相とドイツ・メルケル首相の初会談をBBCはこう報じた。
「ナンセンスを許さない、現実主義的な2人の女性リーダーが欧州史上最大の危機対応にあたる」
経団連初の女性役員に就任し早くも1年がたつ。この間にいくつかの海外ミッションにも参加したが、何しろ相手国側に女性のリーダーが増えた。
とはいえ、いまだマイノリティー。国を超え女性同士の連帯感を意識する。
会議のあとのレセプション、コーヒーブレイク、あるいは、お化粧室では「すてきな靴ね、バッグとよく合っているわ。どこで買ったの」「今度日本に行ったら、また会いましょう」。
戦略や駆け引きではなく、女性ならではのエスプリのきいた会話で親交が深まっていく。
昨年、訪米ミッションで出会ったウェンディ・カトラー氏もその後交友を続けている1人。彼女は当時の米国通商代表代理でTPP(環太平洋パートナーシップ)協定大筋合意に向け、フロマン米国通商代表の右腕として大活躍した人物である。ウェンディは「アジア各国のTPP交渉団の3分の1は女性。合意に向け、彼女たちが示したリーダーシップは素晴らしかった」と女性たちの活躍を振り返る。
私もグローバルビジネス界にいて、事態が四面楚歌に追い込まれたとき、究極の危機に直面したときに見せる女性たちの現実的、包括的でかつ強靭な対応を何度も見てきた。
自然災害などの不測の危機にあって、コミュニティーや経済再構築で女性の果たした貢献事例は、東日本大震災はもちろん世界各地で枚挙にいとまがない。
戦いと混乱が繰り返される世界の歴史のなか、男性を支えることで時代の危機に対応してきた女性たち。しかし、かつてないこの大転換期には男性も女性もない。皆が最前線に立ち、ありったけのリーダーシップを発揮することが期待されているのかもしれない。
米国で女性大統領が就任しようものなら、来年のG7は3主要国の首脳が女性ということになる。
世界のトップがかつてない外交手腕で連携に躍起になる昨今、「すてきな靴ですね、ジミー チュウですか」くらいの気の利いた会話が日本の首相からも出てくるようにならないといけない。そんな時代の到来だ。