今夏、日本列島は記録的な猛暑となった。世界的に見ても温暖化の傾向は顕著で、米国の海洋大気局によれば、今年1月~7月の世界の平均気温は観測史上最高を記録したという。気候変動問題はもはや地球規模で解決されなければならない喫緊の課題である。
来月パリで開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)では、気候変動に関する2020年以降の国際枠組みについて合意が目指されている。私も策定に携わった、わが国の「2030年度までに2013年度比26%削減」という目標をはじめ、主要国の温暖化対策に関する「約束草案」はすでに出そろい、交渉が本格化している。
1997年に採択された「京都議定書」は、温室効果ガスの二大排出国である米国と中国が参加していないうえ、参加国の目標も対策の裏付けがない、いわゆる「トップダウン」で決まったものが多いことから、実効性と公平性を欠いていた。この反省に立ち返り、今回の交渉では、数値目標の多寡を争うのではなく、先進国も途上国も自主的に目標を掲げ、その成果を着実に積み上げていける仕組みそのものを合意の本質とすべきである。
また、今回の交渉は、わが国が「課題解決先進国」として、国際社会に貢献する姿勢をアピールできる絶好の機会でもある。温室効果ガス削減のすべは、技術をおいてほかにないが、わが国には石油危機以降の40年間でエネルギー効率を約4割改善させてきた高度な省エネ・低炭素技術がある。世界全体に占める温室効果ガス排出割合が3%弱にすぎないわが国としては、むしろ海外への技術移転を積極化して、地球規模で温暖化対策に取り組むスタンスを前面に押し出すべきである。
わが国は、京都議定書策定の議長国として、早い段階から国際交渉をリードし、今の新たな枠組みづくりに関する議論の流れもつくってきた。政府には、その自信と自覚を持って、米中はもとより、少しでも多くの国が参加する実効ある枠組み構築にしたたかに取り組んでほしい。私も経団連代表団の長として、この交渉を最大限バックアップする所存である。