内山田竹志 (経団連副会長/トヨタ自動車会長)
ASEANはさらなる成長が望める新興市場として、自動車産業にとって重要なパートナーであると考えている。今後、ASEAN経済統合による域内の競争、また環境意識の高まり(環境規制導入・強化)やFTAによる市場のグローバル化進展により、自動車産業の競争は激化すると予想される。裾野産業も含めた競争力の強化には、域内インフラ整備や人材育成が急務である。
河合正弘 (東京大学公共政策大学院特任教授)
ASEAN地域に対する日本企業の直接投資残高は、対中国よりも大きい。域内のサプライチェーンも日本企業が中心になってつくってきたことから、日本にとって特に重要な地域である。ASEAN各国はハード面・ソフト面での課題を乗り越え、2015年末のASEAN経済共同体設立へ向けて、各国間の連結性を高めつつある。各国が経済統合や制度・規制の共通化のメリットを認識し、それに必要な国内経済改革を進めることで、共通のフレームワークに収束させることが望まれる。
中西宏明 (経団連副会長/日立製作所会長)
ASEANとしての連結性を完結させるためには、ものと人の移動の自由度を高める交通インフラの整備が不可欠である。これは、日本企業にとって大きなビジネスチャンスでもある。インフラ投資の受注競争に勝ち抜くためにも、ASEANの一員として日本が協力する意識が大切である。日立製作所が1996年からアジアの次世代リーダー育成を目的に行ってきた「日立ヤングリーダーズ・イニシアティブ」のような取り組みが今後も日本企業に求められるだろう。
矢野 薫 (経団連審議員会副議長・国際協力委員長/日本電気会長)
パッケージインフラの輸出は日本の成長戦略の柱になっており、経団連としても、さまざまな提言を行ってきた。先進国から発展途上国への投資は、民間資金がODAの2.5倍の額になっているなかで、日本からASEAN地域へのPFI、PPPが進んでいない。日本企業が制度を積極的に活用することで、具体的な案件が出てくることになろう。人材育成に関しては、ASEAN諸国から日本への留学生を増やすために、魅力ある大学づくり、奨学金など制度の充実が求められる。
久保田政一 (司会:経団連事務総長)
- ●ASEAN地域における企業のビジネス展開の現状と展望
- 世界市場で中国・インドに対抗するユニークな存在
- ASEAN各国は自動車産業にとって重要なパートナー
- ニーズは家電からインフラ関連へ
- シンガポールをハブ、ショーウインドウにして各国に展開
- ●ビジネス上直面している課題とASEAN経済統合に対する期待
- インフラ整備と、一貫した法運用を望む
- インフラ整備は課題であると同時にチャンス
- 強じんなサプライチェーンを構築するために
- 共通のフレームワークに収束させる努力を
- ●ASEAN経済統合に向けたわが国官民の役割
- 人材育成において官民が協力することが重要
- 大規模な投資は政府の保証がなければ進めにくい
- ASEAN諸国からの留学生を増やす
- 「中所得国の罠」から抜け出すことが最大の課題