わが国は国民の祝日「海の日」を持つ、世界でも数少ない国である。
1995年に制定された時は、7月20日だった。明治9年、若き明治天皇が、いまだ人心収まらぬ東北に行幸され、函館から「明治丸」に乗船し無事横浜に帰着されたのが7月20日だった故事にちなんだ。そして祝日「海の日」の趣旨は、国民こぞって「海の恩恵に感謝し、海洋国家日本の繁栄を祈る」ことにあった。
制定された1995年は、1月に阪神・淡路大震災があった。その時最初の救援物資の多くが海から運ばれたことが、国会での「海の日」制定審議を加速したことはあまり知られていない。その後2003年、いわゆる「ハッピーマンデー制度」の導入により、「海の日」は7月第三月曜日となった。
その結果、今の特に若い人々は、この日が一体何の日かを深く考えることもなく、ただ連休を楽しんでいるように見える。観光対策は別途行うとして、ぜひともこの祝日を元の7月20日に戻し、国民が広く「海」のことを考える日にしてほしいと願う。
あらためて言うまでもなく、わが国は海洋国家であり、日本経済・国民生活を支えるエネルギー、資源、食糧の多くは海上を運ばれて来る。特にエネルギーについては、原発停止中のため化石燃料への依存率が現在90%にも達しているといわれるが、LNGも石油も石炭もそのほとんどすべてが輸入である。
ホルムズ海峡、マラッカ海峡などシーレーンの安全保障が脅かされれば、わが国は、一日たりとも正常な国民生活や経済活動を継続することが困難になる。その意味で、国連安保理決議に基づき米、欧、露、印、中、日など20カ国以上が共同して、ソマリア沖で海賊からの護衛活動を継続していることは心強い。
わが国においても集団的自衛権など、安全保障をめぐる議論が活発化しているが、こうしたわが国の現実を踏まえ、「海の日」が国民一人ひとりにとって海洋・海上輸送に関する安全保障を考える契機になればと願っている。