佐々木則夫 (経団連副会長/東芝副会長)
電力料金の上昇は、産業競争力と設備投資の意欲を削いでいる。アベノミクスの「第三の矢」である経済成長を実現するためにも、安価な電力を安定的に供給することが喫緊の課題である。原発の停止により、年間三・六兆円の国富が海外に流出している。貿易収支の悪化は、財政の悪化、ひいては国債の信用低下を招きかねず、危機意識を持って、エネルギー問題に対処すべきである。原子力は世界標準の安全基準で、火力発電は高効率で環境にやさしいものに更新していくことで、「S+3E」のベストミックスが可能になる。
浅田浄江 (WEN(ウイメンズ・エナジー・ネットワーク)代表・消費生活アドバイザー)
東日本大震災後、国民のなかで原発は不要だという意識が高まり、それは二年半以上経過した現在も変わっていない。連日、汚染水問題が報道されているが、原発事故の収拾、福島の復興なくしては、原子力を電力の選択肢として考えることはできない。一方で、消費者としても、多面的にリスクを考え、冷静に判断すべき時期にきている。「S+3E」に反対する人はほとんどいない。政府には消費者が総合的にエネルギーのベストミックスを判断できるかたちでの情報の提示を、また、産業界にはさらなる技術革新を期待したい。
井手明彦 (経団連審議員会副議長・資源エネルギー対策委員長/三菱マテリアル会長)
東日本大震災から二年半余りが経過したが、電力の供給不安と料金上昇が今も続いている。国民・企業や電気事業者の努力により、大規模停電は回避されているが、楽観できる状況にはない。こうした状況が続けば、企業の投資は萎縮し、国際競争力の低下を招きかねない。「S+3E」を満たすエネルギーミックスを実現するために、新しいエネルギー基本計画には、原子力の利用を盛り込む必要がある。そのためには、事故の経験を踏まえた安全対策の実施が不可欠である。
秋元圭吾 (地球環境産業技術研究機構(RITE)システム研究グループグループリーダー)
福島の復興が信頼回復の出発点になることは間違いない。原子力発電については、安全性のリスクだけに注目するのではなく、電力供給途絶のリスクや長期的なリターンを考慮し、「S+3E」を実現するための選択肢に加えるべきである。再生可能エネルギーを増やしていくことは必要だが、現在の「固定買取制度」による導入は、結局、国民負担のかたちで跳ね返ることになる。早急に見直して、適正な価格で買い取るかたちにすべきである。
鯉沼 晃 (司会:経団連資源エネルギー対策委員会企画部会長/昭和電工取締役常務執行役員)
原発停止により、電気料金が上昇し、国富の流出、国内産業の競争力低下が進めば、厳しい未来が予想される。少なくとも電力多消費型産業の国内での新規設備投資はあり得ない。多くの日本企業がアルミ精錬から撤退した結果、「ジャパン・プレミアム」が発生したことを忘れてはならない。原子力発電所については、事故の教訓を踏まえて、安全性をさらに高める必要がある。
- ●エネルギー問題に関する現状認識と当面の課題
- 電力コスト上昇によって日本企業の国際競争力は低下
- 経済成長の実現は電力の安定供給にかかっている
- 福島の復興が何よりも重要
- 「再生可能エネルギー固定買取制度」の見直しが必要
- 今こそエネルギー問題を冷静に考えるべき
- ●新たなエネルギー政策に関する基本的な考え方
- 「S+3E」を基本にエネルギーのバランスを考える
- 安価なシェールガスに依存しすぎるのは危険
- 現実的なシナリオとして原子力の利用を盛り込むべき
- 消費者も多様な課題があることを理解するべき
- ●政府への要望
- エネルギー源の特性を踏まえたエネルギーミックスの実現を
- 火力発電のリプレースを進めるための施策を
- 消費者が比較しやすい情報提供を
- 原子力のコストに関する正しい情報提供が必要
- ●今後の産業界の取り組み、産業界への期待
- 世界標準の安全性を備えた原子力発電設備を導入すべき
- 再生可能エネルギーとしての地熱発電の可能性
- HEMSを含めたスマートハウスの開発・普及に期待する
- 優れた技術を活かして世界のグリーン化に貢献する