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月刊 経団連  巻頭言 フルラインアップの新たな産業構造の実現で前進を

日覺昭廣 (にっかく あきひろ) 経団連審議員会副議長/東レ社長

10月1日、安倍総理が17年ぶりの消費税引き上げとともに、大胆な経済対策の実行を決定された。これは、景気回復を確実なものにすることにより、経済再生と財政健全化を両立させていく決意の表れであり、前向きに受け止めたい。

この決定により、経済運営における当面の焦点は、消費税引き上げに伴う景気への配慮と、「第三の矢」と安倍政権が位置付ける成長戦略の着実な実行に移ってきた。政府は、5兆円規模の経済政策パッケージを決定したが、これは経済の好循環を実現し、成長の果実を国の隅々にも浸透させていくためのものである。企業や生活者の景況感も前向きなものになるなかで、消費税率の引き上げがあってもなお、日本経済再生に対する市場の期待は日増しに高まっているといえる。

われわれ産業人も、国の成長戦略が加速することを前提に、個々の企業の成長への道筋をステークホルダーと共有していく必要がある。そのため、イノベーション実現に向けた戦略とリスクを総点検し、スピード感を持って革新的な経営戦略の策定と実行に取り組んでいかなければならない、まずは、これまでの開発投資を収益の果実に転換し、再投資へ向かわせる新しい時代を自ら創り出すことが、中長期の経営課題として浮かび上がってこよう。

私は、「素材には社会を本質的に変える力がある」という信条のもとで会社経営を行っているが、失われた20年といわれる日本経済の停滞が確実に変化に転ずる兆しを見せているこの2013年の年末にあたり、自社のサプライチェーン全体をしっかり見通しながら、成長戦略の確実な実行を図っていきたいと考えている。

貿易立国を基本構造とするわが国は、鉱物・石化資源を除けば、世界に貢献できるあらゆる財を生み出す実力を持っている。農林漁業の強化もあわせて実現し、文字どおりフルラインアップの産業構造によって支えられる新しい国のかたち、あるべき産業国家の姿を構想し、それを実現するために前進していくことが、今こそ求められている。

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