荻田 伍 (経団連副会長・起業創造委員会委員長/アサヒグループホールディングス会長)
日本社会におけるベンチャーに対する見方が、起業の障壁になっている。成功した企業へのバッシングをやめ、起業しやすい環境をつくるべきだ。エンジェル税制の拡充など、政府による環境整備も重要である。社内ベンチャーについては、各企業におけるベンチャー風土の維持や強化が必要である。また、経営トップは成長のためにリスクを取る覚悟を持たなければならない。視野を広く持ち、新しいチャレンジを応援することは、企業の社会的使命である。
有馬 誠 (グーグル代表取締役)
日本でベンチャーが育ちにくいのは、風土・環境の問題が大きい。米国では、新しい価値を生み出すことは何よりも尊敬され、ヒーローとして賞賛される。政府も、企業も、チャレンジする人を応援する、成功した起業家をリスペクトするような気運を高めていくべきだ。また、一流大学・大学院を出たエリート層からベンチャーの成功者が出る確率が高い。日本でもセーフティーネットの整備など、彼らが起業しやすい、再チャレンジしやすい仕組みをつくる必要がある。
安達俊久 (伊藤忠テクノロジーベンチャーズ社長/日本ベンチャーキャピタル協会会長)
日本のベンチャーキャピタルの投資額は、年間1000億円程度で、米国の約20分の1でしかない。しかし、日本に資金がないわけではなく、人材も豊富である。最大の問題は、企業や国民のマインドセットだといえる。挑戦者をバッシングするのではなく、賞賛する環境をつくらなければならない。この数年、若い世代の優秀な層がベンチャーで起業する例が増えてきている。ベンチャーキャピタルとしては、彼らを継続的にサポートして、成功事例を積み上げていきたい。
鈴木五郎 (立山科学工業常務)
規模の小さな地方の企業は、限られた資本・人材を有効に活用するために、新しいニーズを見つけて、そこに研究開発テーマを絞る必要がある。当社は、産学官の連携のなかで、ニーズをとらえ、強みを活かして、オンリーワンの企業を目指している。政府の支援を受け、富山大学医学部と共同で開発したウイルスの抗体を抽出する技術などは、その成功事例である。また、富山県内の企業としては初めてミャンマーに進出するなど、新たな挑戦を続けている。
椋田哲史 (司会:経団連常務理事)
- ●事例に学ぶベンチャー・事業成功の要因
- ものづくり企業からサービス産業への転換
- 「20%ルール」が生んだGmail
- 若い人たちのアイデアを企業の力に変えていく
- ベンチャー企業の突破力を活用する仕掛けづくり
- ●日本におけるベンチャーの難しさ
- ベンチャー企業の特性を受容する社会へ
- エリート層からベンチャー成功者が出ている米国
- 産学官の連携のなかでオンリーワン企業を目指す
- 社内ベンチャーをカーブアウト、スピンアウトさせるために
- ●ベンチャーを育てる税制・金融等の支援策のあり方
- 日米のベンチャーキャピタルの差とは
- ベンチャーキャピタルに潤沢な資金が投下される仕組みが必要
- 投資判断をする「目利き役」の育成が必要
- 「日本版JOBS法」で新規上場するベンチャーを増やす
- ●ベンチャー・新事業創造にチャレンジする人材育成のあり方
- 経営陣がベンチャー精神を見せることが大切
- 全部門の年間計画に必ずビッグアイデアを入れさせる
- 実践のなかで成功事例を積み上げていくしかない
- チャンスを与えて、やらせてみることで人は成長する