春は若い人が真新しいスーツ姿で出勤する風景を見かける季節、新入社員は高い志と理想を持って人生の新たな門出に立ったはずだ。その新入社員に会社は何を期待し迎え入れているのであろうか。
私が新入社員だったころも含め、以前は長らく、会社の方針をがむしゃらに遂行できる「ハードな労働力」としての期待が大きかったような気がする。確立されたビジネスモデルのもとで、速く大きく数字を伸ばすことこそが、会社の至上命令の時代が続いたからだ。
しかし日本は、少子高齢化・人口減に直面するなど、未曾有の社会変革期に突入しており、およそすべての会社でビジネスモデル自体の革新が求められている。それに伴い、新入社員に対しては、会社に新しい感覚・視点をもたらす「ソフトな労働力」としての期待を従前になく高めるべきではないか。
若さには未熟で荒削りな面もある。しかし、いまの日本の会社に求められる変革の内容やスピード感からすると、豊富な経験、それに裏打ちされた洗練された判断に、未熟で荒削りな面からこそ発揮される斬新で大胆な発想が加わらないと対処しきれなくなると日々感じている。
アジア太平洋地域では、2030年までに中間所得層(日々の支出が10~100ドルの人々)が約32億人(世界の中間所得層の7割)に拡大すると見込まれている。この地域が今後、ビジネスの主戦場になるのは言うまでもないが、この間、多くのアジア新興国で中心的な世代となるのは20代から30代である。ITを介してクロスボーダーで情報が行き交う環境が子どものころから当たり前の世代でもあり、商品・サービスのニーズや評価についての同世代間の共感・共有は、ビジネス開拓の大きな鍵となる。
「いまどきの若い者は…」とつい辛口に語りがちだが、いまどきの若い者を「ソフトな労働力」の源泉ととらえ、大いに活用して国内の変革を進め、アジア太平洋地域での競争に打ち勝っていきたい。