畔柳信雄 (経団連副会長/三菱東京UFJ銀行相談役)
経済成長と財政改革の両立は、中央政府のみならず地方経済に突きつけられている課題である。地方自治体は、経営の視点を持って、グローバルな環境変化を見据えて成長戦略を描き、行財政改革・バランスシート改革の徹底によって成長の原資を確保し、選択と集中を行っていかなければならない。その具体的な実践のなかから道州制のイメージが形成される。また、経団連としては、道州制の導入に向けた政治のリーダーシップを期待する。
片山善博 (慶應義塾大学法学部教授)
自治体ごとに主体的な取り組みができる環境をつくることが、地方分権の基本である。これまでの分権改革の取り組みを一言で評価するなら、「遅々として進んできた」というところか。民主党政権下の総務大臣として、補助金改革、出先機関改革などをある程度進めることができたと振り返る。しかし、改革の成果を活用する地方の側も、そのあり方が問われる。
鈴木康友 (浜松市長)
市長として、自治体運営を経営者の視点で考えている。浜松市では、「産業イノベーション構想」により、既存産業の高度化・新産業の育成を進めるとともに、「新・ものづくり特区」を国に申請し、農・工業の振興を図っている。また、静岡県や静岡市とも連携し、「しずおか型特別自治市」を模索しているが、これは「特別自治市制度」の次善策として、現行の制度下で、特別自治市と同様の効果をねらった地方分権改革の試みである。道州制実現に向けては、基礎自治体が県から住民に身近な行政サービスを全て引き受け、自立する覚悟が必要である。
林 宜嗣 (関西学院大学経済学部教授)
行政運営・自治体のあり方にもパラダイムシフトが起こっている。しかし自治体改革の多くは従来の行政の守備範囲にとどまっている。新しい取り組みを始めるにも、財政健全化は喫緊の課題であるが、同時に、自治体に求められるのは企業はじめ民間の活動をサポートしていくという発想である。道州制実現に向けては、抽象的な議論に終始するのではなく、地域にふさわしい道州制の姿を、住民を巻き込んだ議論のなかから見出していくべきである。
椋田哲史 (司会:経団連常務理事)
- ●地方経済の現状と課題
- 市長が「経営者」の視点を持つ
- 「幸福度」の高い地域からなぜ人口が流出するのか
- ●地方分権改革の動向とその評価
- 「遅々として進んできた」地域主権改革
- 国の出先機関改革と大阪都構想の進展に期待
- 国は肝心な部分を手放さない
- 課題解決型の地方分権議論に変えていくべき
- ●地域主導の国づくり、地方経済活性化に資する制度改革・統治機構のあり方
- 企業目線で、各地域のグローバル対応を支援
- 「しずおか型特別自治市」という挑戦
- 公共事業に頼らない自立した地域経済を目指せ
- 地方行政は民間の活動を支援せよ
- ●道州制の実現に向けた課題と求められる施策
- 道州制実現に向けた政治のリーダーシップに期待
- まずは基礎自治体が覚悟を決めること
- 道州制特区から始めるべきこと
- ボトムアップ型で道州制の実現を