わが国の持続的な経済成長実現のためには、「環境・エネルギー・安心・安全」といった今後重要となるテーマでのイノベーション創出が何よりも必要である。その際、単一の技術や商品単位ではなく、「街づくり」のようなシステムづくりのなかで「全体最適」を考えることが重要となる。
このような「街づくり」に関して経団連では、「未来都市モデルプロジェクト」を推進しており、トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市も参加し、次世代エネルギー・社会システムの実証実験に取り組んでいる。
豊田市の実証実験では、各家庭は太陽光発電や蓄電池、ホーム・エネルギー・マネジメント・システム等を導入して、スマートハウス化している。またプラグインハイブリッド車等の次世代車両導入拡大や、ITを活用した低炭素交通システムの実験を順次実施している。さらに住宅や商業・公共施設をネットワーク化し、街全体のエネルギー利用の最適化と低炭素化を進めていく予定である。
「街づくり」では、こうした「環境・エネルギー」のテーマのみならず、「安心・安全」に関しても「災害に強い街」「高齢化社会に対応した街」といった幅広いテーマがあり、異業種の連携、産学官の連携、国と地域の連携が不可欠である。これからはこうした多様なプレーヤーが垣根を越えて新技術を持ち寄り、大部屋でワイワイガヤガヤ、いわば「仲良くけんか」しながら議論をすることによってイノベーションが生み出されていく時代だと思う。
こうした連携には、リーダーシップが不可欠である。街の「全体最適」を考える「総合プランナー」が、道路や鉄道、公園、学校、病院等の配置や、人や物の流れを考えながら、リーダーシップを取るべきである。豊田市のような経験が各地で蓄積されることにより「総合プランナー」が育ち、地域主導の「街づくり」が拡大していく。さらにこうした街づくりを「揺りかご」として、実り多いイノベーションが創出されていくことを期待している。