吉井博明 (東京経済大学教授/内閣府「首都直下地震に係る首都中枢機能確保検討会」座長)
今後予想される災害として、首都直下地震と三連動地震があるが、首都直下は、国家の中枢機能、企業の本社が直接被害を受ける点で、政府・企業のBCPの真価が問われる。まずは、各省庁、機関ごとのBCPを検証して、改善していかなければならない。さらに、これを機能ごとに統合して、共通BCPをつくる必要がある。今後は、政府と企業が連携して、危機管理体制を構築していく努力が不可欠である。
木村惠司 (経団連国民生活委員会共同委員長/三菱地所会長)
東日本大震災当日、首都圏では大量の帰宅困難者が生じた。三菱地所では、丸ビルをはじめとする大手町・丸の内・有楽町エリアのビルを中心に首都圏で、約3500人の帰宅困難者を迎え入れた。経済中枢である首都・東京を守るという観点から、首都直下地震への備えを万全にしておくべきだ。企業も、BCPの充実や社会との連携を進めていく必要がある。政府には、規制緩和やインセンティブによって企業が協力しやすい環境をつくることが期待される。
後藤 斎 (内閣府副大臣・衆議院議員)
昨年の秋以降、政府は、各省庁別に60近い検討会・委員会を開催してきた。現在、こうした議論の取りまとめに注力している。私たち政治家は「想定外」という言葉を二度と使わない決意のもと、最も悲観的なケースを想定して対策を講じなければならない。規制緩和や法整備については、喫緊のものから対応していく。日本は、災害との共存を覚悟したうえで、世界一優れた減災国であることを、世界に発信していくべきである。
川合正矩 (経団連国民生活委員会共同委員長/日本通運会長)
東日本大震災では、日本通運をはじめ物流各社、鉄道・航空・海運の各輸送機関が、社会インフラとしての物流機能の維持に努め、緊急支援物資などの輸送を行った。その経験から、非常時における、交通規制等の課題、法令の弾力的運用の必要性を痛感した。災害に強い経済社会の構築に向けては、法制・体制の整備に加えて、国民一人ひとりの防災意識を向上させるために、防災教育に力を入れることが大切である。
橋本孝之 (経団連防災に関する委員会委員長/日本アイ・ビー・エム社長(現会長))
東日本大震災では、ICTの有効性が再認識された。日本IBMも、クラウド提供や「Sahana」という被災地情報支援システムによる協力を実施した。経団連会員への調査では、今回の震災でBCPの有効性がある程度実証されたが、今後はサプライチェーンや地域とも連携した広範囲のBCP強化が必要だ。また、データセンターの社会インフラ化による継続運用確保や、オフィスのサテライト化、テレワーク化による機能分散強化も重要だ。首都直下地震や三連動地震を仮定でなく未来の現実ととらえて、真剣に取り組みを強化すべきである。
久保田政一 (司会:経団連専務理事)
- ●東日本大震災の教訓を踏まえた当面の課題
- 「災害との共存」を前提とした国づくりを進める
- 社会インフラとしての物流機能の発揮
- 帰宅困難者対策のために必要な総合的な取り組み
- 災害発生時におけるICTの重要性
- 首都圏直下型・三連動地震を盛り込んだBCP強化が不可欠
- ●災害に強い経済社会の構築に向けた中長期的な課題
- 「ゆるぎない日本」の再構築を目指す
- 省庁別だけでなく、機能ごとにBCPを統合するべき
- 標準化とICT活用で、世界最先端の災害に強い経済社会モデルを構築
- 防災への取り組みを通じた都市の国際競争力強化
- 首都直下地震等を前提とした法制度の整備を
- ●防災における官・民の連携、災害先進国としての国際貢献
- 世界一の減災国としてメッセージを発信する