この一年間ほど、東日本大震災、タイの大洪水など、事業継続にとっていかにサプライチェーンが重要であるか、あらためて実感させられる事象が立て続けに起こった。日ごろ流通業は、電気、ガス、水道、通信、輸送に続く「第六のインフラ」という自負を持って事業に取り組み、大震災の折も当社は、震災の翌日以降も被災地域の店舗を含む全店で営業を継続した。しかし、商品の生産拠点、物流拠点の被災は広範囲に及び、震災直後には商品の調達・輸送に知恵を絞らなければならなかった。幸いにも当社は、日ごろから商品生産・調達から物流等についてグループやお取引先との緊密なチームワークを築いてきた結果として、緊急事態に際し、東北地方の被災地へは関東・甲信越から商品を送り、関東・甲信越には関西から送るというように、全国の生産・物流機能を連携させることで迅速な対応ができた。
その時の体験は、私たちの「ふだん」や「当たり前」が、多くの企業によって生み出される付加価値に支えられていることをあらためて教えてくれた。とりわけ、製造、物流、販売など個々の機能を「結び合わせる」ことの重要性を教えられた。震災以後、盛んに言われるようになった「絆」とは、そうした「付加価値の連鎖」総体への視点を強く示唆しているように思う。
少子高齢化や人口減少など、日本社会は先進諸国に先んじてさまざまな課題に直面している。それを新たな社会発展の機会に変えるには、遍く存在する付加価値を結び合わせ、新たな付加価値に昇華させるハブ機能の高度化が重要になると考える。
その意味で、流通業の役割はさらに重要性を増すものと考えている。ICT技術とリアルな事業基盤の融合を進めることで、個々の生産者とお客様のニーズを緊密に結び合わせることも可能になる。そのような付加価値の連鎖を支える「流通サプライチェーン」の構築が、日本社会の活力と国際競争力を生み出すと確信している。