「力強い農業の実現に向けて」
政府は、新成長戦略の実現に向け、「国を開き」、「未来を拓く」ための決意を固め、高いレベルの経済連携を進める旨を閣議決定した(「包括的経済連携に関する基本方針」2010年11月9日)。その実現にあたっては、国内産業の競争力強化等、様々な分野において抜本的な改革を断行する必要がある。
とりわけ、農業分野は、上記「基本方針」の通り、「将来に向けてその持続的な存続が危ぶまれる状況にあり、競争力向上や海外における需要拡大等我が国農業の潜在力を引き出す大胆な政策対応が不可欠」である。
国民に食料を供給する重要な役割を担うとともに地域の基幹産業である農業の持続可能な発展に向け、今こそ国内の優良な農地を確保しつつ、新規就農の促進等により多様な担い手を確保し、これら担い手への農地集約による経営規模の拡大と生産性の向上を通じた農業の競争力強化を実現すべきである。併せて、農商工連携の推進や農産物の輸出促進等により、農業の成長産業化を図るべきである。
同時に、環太平洋パートナーシップ(TPP)をはじめとする経済連携協定の交渉においては、高いレベルの経済連携を目指しつつ、わが国の事情を踏まえた国境措置の取扱いを確保するとともに、国内改革と国際交渉の進展を踏まえ真に必要な国内対策を総合的に講じることにより、国を挙げて経済連携の推進と国内農業生産基盤の強化との両立を実現していかねばならない。
政府は、昨年11月30日に総理を本部長とする「食と農林漁業の再生推進本部」を立ち上げ、持続可能な力強い農業を育てるための政策の検討を開始した。当本部において実効ある改革方策が取りまとめられることを強く期待するとともに、これら国内改革の早期実現に向けた政治の強いリーダーシップが発揮されることを強く要望する。
経団連では、農業経営の安定と消費者に豊かな食生活を提供する観点から、また、開発・生産・加工・流通・販売・消費まで一貫したわが国のフードシステムの活性化の観点から、農業者、製造業、流通・販売業者等が互いに連携・協力して付加価値を高めていくことを目指して、経済界と農業界との連携・協力の強化のための取組みを進めている。今後とも農業の競争力強化と成長産業化に向けた出来得る限りの活動を進めていく所存である。
特に、経団連の会員企業・団体による農業界との連携・協力についての事例の収集・公表を改めて行い、経済界全体で優良事例の横展開を図るとともに、企業・団体との連携・協力を模索する農業界や地域の参考に供し、一層の拡大・深化を図っていきたい。