TPPを契機に新たな地平の開拓を
TPP協定により、大企業のみならず中小企業、地域の産業が世界の成長センターであるアジア太平洋につながり、活躍の場を広げることが可能となる。このことにより、地域の産業がグローバル化し地域創生が実現できる。
一方、農業にとって、TPP協定による農産物の関税・削減撤廃に伴う負の影響を最小限に押さえることは当然重要である。しかし、わが国の農業が持続可能な成長産業となるためには、国境措置に頼らず、グローバル化と整合的な構造に転換していく必要がある。そのためには、むしろTPPを、輸出促進や海外市場開拓など、新たな地平を切り開くチャンスとしなければならない。
現地ニーズとのパイプの重要性:物流と商流の確保に向けて
パネルディスカッションでは、日本の高品質な生産物への高い需要を背景とした現地の具体的ニーズを汲み上げ、国内生産者とつなぐパイプをいかに形成するかという物流・商流の円滑化を焦点のひとつとして、具体的取り組みや政策課題を議論した。
まず、コイルセンターでベトナムに進出している大裕鋼業から、その動機や狙い、そして実際の経験から中小企業が海外進出する際の利点や留意点を述べてもらった。次に、ヤマト運輸から、ANAとの提携を通じ、日本の国際物流ネットワークの構築が進み、小口の生産者が海外消費者と直接取引する強力なツールとなりつつあることが報告された。また、九州経済連合会のようにJAと地元経済界が共同で直販会社を設立する取組みでは、店舗を有する流通企業との提携を通じた販路確保の重要性や、コストを抑える海上輸送のためのコンテナ技術の向上といった技術面の課題、また、放射能検査という課題の解消の必要性が示された。
将来を見据え輸出拡大の工夫を
TPPを通じた農産物の関税削減・撤廃は20年といった長期間に亘り行われる。その時点を見据えて、改革を進める必要がある。
わが国の農業の将来を占う重要な課題は稲作である。政府として輸出拡大の目標を立て後押ししているが、現状の輸出は加工品や水産物が多く、7000億円の輸出のうち、農産物は1000億円に届かない。日本の食を世界に届ける工夫が必要であり、なかでもコメの輸出可能性をいかに探るかが重要である。
パネルでは、ぶった農産からコメの海外販売経験が披露された。中国、台湾、香港では贈答品として高価格のコメの需要があるが、高価格で販売するには、このような消費者ニーズにマッチしたパッケージ(包装)が必要とのことであり、マーケティングの重要性が強調された。
議論全体を通じ、TPP活用への前向きな姿勢が見られ、日本経済再生に向けた努力を進めるべきとの認識が共有できた。これらの取組みが全国に広がり、農業の成長産業化と地方創生につながることを願う。