(社)日本経済団体連合会
1.はじめに
欧州の債務危機が広がりを見せるなど、世界経済の先行き不透明感が高まる中、アジアは引き続き高水準の経済成長を維持している。この成長を持続的かつ均衡のとれたものとし、世界経済の牽引役を担っていくためには、ハード・ソフト両面でのインフラ整備等と併せて、アジア太平洋地域の経済連携をさらに推進し、人、モノ、サービスが自由に往来するシームレスなビジネス環境を構築する必要がある。
わが国は、震災からの復旧・復興に止まらず、新技術の開発をはじめとするイノベーションの推進によって、新たな国づくり「新生日本」を目指す必要がある。そのためには、官民が一体となって一層国を開き地域経済統合に主導的な役割を担うことによってアジアを中心とする諸外国の活力を取り込んでいかなければならない。
かかる観点から、アジア太平洋地域における経済統合に向けたわが国の取組のあり方について、以下の通り提言する。
2.基本的考え方
今般、わが国政府は、APEC首脳会議を前に、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加に向けて関係国と協議に入る旨表明した。また、東アジア・サミットにおいては、ASEAN+6による域内包括的経済連携協定の推進に向けて取り組むことが合意された。経団連は、これらの政府の決断を高く評価する。今後、わが国が官民一体となって国を開く姿勢を明確にした上で、まずTPPを推進し、併せてTPPに参加していない国をも包含するASEAN+6経済連携協定の締結を追求することによって、2020年を目処にアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を完成させるべく、地域経済統合をリードしていくよう強く求める。FTAAPの完成は、多様性に富むこの地域における価値観の共有、それを通じた安定的な秩序の形成にも資するものであると共に、わが国への経済波及効果が期待される。なお、昨年11月のAPEC首脳宣言「横浜ビジョン」は、既存の取組を発展させることで、包括的な自由貿易協定としてAPEC規模の広がりをもつFTAAPの実現を目指すことに言及し#1、また、本年のAPEC「ホノルル宣言」においても、FTAAPを含む貿易協定を通じて、次世代の貿易投資上の課題に取組むことで地域経済統合をさらに進める旨謳っている#2。わが国としては、この目標の実現に向けて精力的に取組む必要がある。
経団連では、本年4月の「わが国の通商戦略に関する提言」#3において、経済連携協定(EPA)と地域経済統合の推進に際し、新しい製品・サービス、ビジネスモデルに対応したルールを先導的に導入すると共に、EPAで規定されたルールの広域化を図ることの重要性を指摘している。また、本年9月29日の第2回アジア・ビジネス・サミット#4においても、アジア太平洋地域の経済統合のあり方が検討され、以下の点でアジアのビジネスリーダーの意見が一致した#5。
- (1)既存の経済連携協定、自由貿易協定の活用促進と共に、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現のための経路として各エコノミーの事情とニーズに応じて、ASEAN+6経済連携協定、TPP等の締結に向けて取組む
- (2)質の高い地域経済統合を実現すべく、専門的な知識・技能を有する人材の国境を越えた活動の促進、外資制限の緩和や不透明な国内規制の是正による投資・サービスの自由化、さらなる関税の引き下げ、輸出規制等の撤廃に向けた取組を強化する
わが国経済界としても、アジア太平洋の各国・地域の経済団体等と連携し、生産活動やビジネスを展開する上で直面する貿易投資上の具体的な障害事例を集約し、これらの協定交渉に反映させるなど、EPAの広域化および地域経済統合の推進に向け、主体的に取組んでいく。
3.TPP交渉への参加
今般、わが国がTPP交渉参加の方針を表明したのと同時にカナダ、メキシコも参加の意向を表明した。わが国を含めた3カ国が加わることになれば、TPPはAPECの21参加国・地域のうち12カ国、GDPにして世界の約4割をカバーすることになる。わが国として、以下を踏まえつつ、TPP交渉に積極的に参加し、地域の成長に資する協定の成立に全力を尽くす必要がある。
- (1)TPPが交渉の対象としている21分野#6全てにわが国の主張を反映させ、高度な自由化と質の高いルールづくりに貢献する。TPPが目指す21世紀型の新しいルールは、これに見合った高度な日中韓FTA、日韓経済連携協定の実現ならびに日EU経済統合協定の交渉入りなど、わが国の戦略を後押しする。また、将来的にFTAAPを通じて地域におけるビジネスのルールとなり、さらには、WTO等におけるグローバルなルール形成につながることが期待される#7。
- (2)実質的全ての分野において、関税の撤廃(含段階的撤廃)・引き下げを実現することで、わが国の輸出競争力を確保し#8、国内の産業空洞化を防止し得る。
- (3)TPPに参加しているアジア諸国(ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム)との連携を強化する。現に、アジア諸国からは、TPP交渉において日本がアジアの利益を代弁することに対する期待#9が大きい。また、交渉を通じて、これら各国との既存のEPAの高度化も図り得る。
なお、TPPに参加するにあたり、わが国農業の競争力強化のあり方について具体的な方針を打ち出す必要がある。わが国の農業生産額は8兆円規模であり、世界の十指に入る。また、品質の高い作物を生産する技術を有する。このように、世界一の農業を育て得る基盤を有することから、構造改革を推進することによって、高い国際競争力を実現していく必要があり#10、経済界としても、農林水産業の経営や生産の高度化に貢献していく。
4.ASEAN+6経済連携協定の実現
アジアに目を向けると、2015年にASEAN自由貿易協定(AFTA)を完成させるべく、加盟国間で域内関税の撤廃に向けた取組が行われている。また、日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)をはじめとするASEAN+1や二国間経済連携協定を通じて、貿易投資の自由化が進んでいる。しかし、わが国と現段階でTPPに参加していない中国、韓国の三国間はいまだに自由貿易協定でカバーされない空白地帯であるほか、日中韓、インド、豪州、ニュージーランドとASEANの経済統合も実現されていない。AFTAによるASEANの完全統合に併せて、アジア全体の貿易投資活性化、インフラ整備、成長著しい中間所得層のニーズを踏まえた商品提供、環境問題への協力等を推進できるよう、早期にASEAN+6経済連携協定を実現する必要がある#11。完全統合を控えたASEAN、ASEAN+6のGDPの7割以上を占める日中韓、成長著しいインド、食糧、鉱物資源の供給基地である豪州、サービスの自由化に積極的なニュージーランドが参加する形で自由経済圏を構成することは、FTAAP構築の道筋における重要な要素であり、TPPに比して見劣りすることないよう、実質的全ての貿易における関税の撤廃(含段階的撤廃)・引下げ、ネガティブ・リスト方式#12による投資・サービス貿易の自由化、知的財産権の保護、ビジネス環境の整備をはじめとする広範囲をカバーする質の高いものを目指すことが重要である。
ASEAN+6については、本年8月のASEAN経済大臣関連会合においてASEAN+3と共に推進する旨、日中両国が共同提案し、11月の東アジア・サミットでは、交渉の立上げを念頭に作業部会での協議を推進することとなった。経済界としてこれを歓迎すると共に、「イニシャル・ステップス」#13に掲げられた (1)物品貿易、(2)税関手続・貿易円滑化、(3)経済協力、(4)産業政策、(5)ハードインフラとコネクティビティの強化、(6)投資・サービス貿易、(7)熟練労働者の移動の各分野について、各国経済界の意見が十分反映されるよう、産官学共同研究の実施等を要望する。
わが国としても、TPP交渉参加後の課題として、ASEAN各国との経済連携協定の見直し#14や日印EPAの活用を通じてASEAN+6に向けた基盤づくりを推進すべきである。また、同様に残された課題として日豪経済連携協定ならびに日韓経済連携協定#15の早期実現を求める。とりわけ、日豪経済連携協定は、資源・エネルギーの輸出制限の禁止、日本企業が資源・エネルギー分野に投資する際の環境改善等に貢献するものと期待される#16。
5.日中韓FTA交渉の立ち上げ
ASEAN+6を実現するためには、まず、同地域のGDPの7割以上を占める日中韓の間でFTAを締結し、貿易投資を活性化することが前提となる。
とりわけ対中国市場アクセスの改善はわが国にとって重要課題である。日本の中国からの輸入1520億ドルのうち、7割が無税であるのに対し、対中国輸出1490億ドルのうち、約7割に関税が賦課されている#17。また、サービス・投資分野でも参入制限等が少なからず存在するため、日中韓FTAの実現による貿易投資の自由化が求められる。関税の撤廃により、製品がより安価に市場に出回ることになり、消費者の選択肢が増え、域内の消費拡大が期待される。また、部品等の関税撤廃は、現地での生産活性化に直結する。さらに、サービス・投資の自由化は企業進出を促し、現地の雇用を促進する。このほか、経済界の期待の大きい知的財産権保護、環境問題への対応、資源・エネルギーの輸出制限の緩和、国際標準化、ビジネス環境整備等についても日中韓FTAにおいて取極めるべきである。
現在、日中韓FTA産官学共同研究が行われており#18、本年末を目処に交渉のベースとなる報告書が取りまとめられる運びである。経団連では、この共同研究に参画し、経済界の意見を反映してきた。2012年の早い時期に日中韓FTA交渉の立ち上げるよう求める#19。
6.おわりに
TPPの推進と併せてASEAN+6の締結に取組みFTAAPの完成に至る過程で貿易投資の更なる自由化を図ることは、事実上進んでいる国際分業をさらに推進すると共に、域内サプライチェーンの強化を図るという意義がある。また、こうした動きは、わが国企業の国際競争力の行方に重大な影響をもつ日EU経済統合協定の早期の交渉入りにも資することが期待される。
このように重要な課題を前に、わが国の経済外交はその真価を問われている。総理が司令塔となって、省庁横断的に政府挙げて取り組むよう切に求めるものである。経済界としても、かかる視点から各界各層における合意形成に全力で努め、オール・ジャパンで取り組んでいく所存である。
FTAAPに至る経済統合の中で実現すべき事項
~基本的な考え方~
以下に掲げる事項は、「日中韓自由貿易協定の早期締結を求める」(2010年11月)、「わが国の通商戦略に関する提言 別添 -TPPを通じて実現すべき内容-」(2011年4月)等から主要関心分野を抜粋したものである。すべての関心分野、関心事項を網羅的に記載したものではない。
1.物品貿易の自由化
- (1)関税の撤廃・引き下げは、消費者の選択肢の拡大を通じた域内の消費刺激や、原材料、部品の輸入拡大による現地での生産活性化に直結する。また、わが国にとっても、企業の輸出促進を通じて産業空洞化を防止する観点から、物品貿易の自由化が不可欠である。
- (2)EPA・FTAをWTOに整合的なものとするためには、「実質的にすべての貿易の自由化」(GATT第24条8項)を実現する必要があり、この観点からも関税の引き下げ・撤廃が求められる。
- (3)わが国の主力産業である、鉄鋼製品#20、自動車#21、自動車部品#22、電気・電子機器(含:IT製品#23、家電#24)、石油化学製品、化学繊維、ガラス製品、医療機器、繊維、紙類、食品、医薬品等、広汎な分野に亘る関税引き下げ・撤廃が必要。
2.非関税障壁の撤廃・貿易円滑化#25
- (1)関税が撤廃されても、輸入検査や税関手続・輸送規制上の障害が残存した場合、物品貿易の活性化に悪影響が生じる。
- (2)輸入検査に関しては、電子機器・部品に係る基準の国際的調和、製品検査・検疫の手続の簡素化等が求められる。
- (3)税関手続の透明化・迅速化に関し、関連法令の透明化、法令・規制を変更する場合のリードタイムの設定、課税評価・査定基準の明確化が重要。
- (4)このほか、輸出品に対する付加価値税の着実な還付が求められる。
3.原産地規則
- (1)企業にとって使い勝手の良い制度とすべく、原産地証明発給手続の簡素化、円滑化を図る。
- (2)原産地規則の累積規程を整備する。
- (3)認定輸出者による自己証明制度を導入する。
4.貿易救済措置の規律強化
- (1)アンチダンピング、セーフガードは、濫用された場合、通商制限的に機能する恐れがある。各国が保護主義的なルールの運用をすることないよう、規律強化が必要とされる。
- (2)アンチダンピングについては、調査開始前の事前協議制度#26、ゼロイングの禁止#27、Lesser duty rule#28の導入を図る。また、アンチダンピングの相互不賦課#29についても検討する。
- (3)セーフガード発動による域内における通商制限的効果を回避すべく、原則として域内国からの輸入を調査対象から外す#30。
- (4)逆に、関税撤廃の結果、域内国からの輸入が急増し、国内産業に重大な損害を与えるおそれがある合理的なケースに限り、協定発効後一定期間(例えば10年)域内セーフガードの発動を認める#31。
5.投資・サービスの自由化
- (1)国境を越える投資交流は、投資受入れ国にとって国内雇用の創出や新たなビジネス・モデル、技術を導入する契機となる。EPA・FTAによって、拠点設置を通じたサービスの提供(サービス貿易の第3モード)を含む投資の自由化を推進する。
- (2)金融、建設、不動産、流通、広告、通信、電子商取引等の主要サービス分野や自動車、鉄鋼、造船、食品等の主要製造業の分野における外資制限、参入制限、過度な免許要件等を撤廃・緩和する。
- (3)外資制限ならびに外国企業に対する規制の撤廃・緩和に関し、ネガティブ・リスト方式を導入する。
- (4)外資制限・参入制限の緩和に加え、清算・撤退・減資の自由を保証する。
- (5)技術移転要求、国産化比率の義務付け、合弁の義務付け、現地人雇用義務、納税水準の約束等のパフォーマンス要求を撤廃する。
- (6)国境を越えたデータフロー(サービス貿易の第1モード)の円滑化を図ると共に、関連する情報セキュリティ・個人情報保護・知的財産に関する法整備を推進する#32。
- (7)送金の自由を保証し、現地企業への技術ライセンス供与のロイヤリティ等の利潤回収を保証する。
- (8)投資家対国家紛争処理制度#33を導入する。
6.知的財産権
- (1)模造品や商標権侵害は企業の間の公正な競争を歪める。「クール・ジャパン」で推進しているコンテンツ産業等の新たな産業の発展や中小企業の振興を支援する観点から、EPA・FTAによって知的財産権の保護を徹底する(知的財産に関する官民による委員会の設置等)#34。
- (2)技術ライセンスのロイヤリティ額の上限、契約期間の制限を撤廃、ロイヤリティ支払いの損金算入の確保を通じて、わが国企業が国内で先端分野の研究開発を行い、海外にビジネスベースで技術移転を推進できる体制を確立する#35。
7.資源エネルギー
天然資源(コークス、レアメタル、レアアース等)やエネルギー資源の輸出規制、輸出関税の撤廃、資源開発分野への投資の自由化を推進し、アジア太平洋地域の資源・エネルギー安全保障体制を確立する#36。
8.環境問題への対応
- (1)省エネ・環境技術の規格、基準の標準化推進。
- (2)ハイブリッド車、省エネ家電等、環境物品の関税引き下げを推進する#37。
- (3)環境問題に関する官民による委員会を設置する。(セクター別の環境技術の移転、環境に優しいインフラの輸出、CO2オフセット#38等について、二国間ないしは複数国間で協議)
9.人の移動
- (1)高度専門知識を有する人材の受入推進、人材が不足している分野における中間技能労働者の受入の解禁等。(看護・介護、製造現場における技能者等)
- (2)労働許可証取得義務の撤廃、企業内転勤の円滑化、短期出張者に対する査証免除、入国手続の簡素化等#39。
10.政府調達
- (1)アジア太平洋諸国の中にはWTO政府調達協定に加盟していない国も存在するため、政府調達の透明性、最恵国待遇、内国民待遇等、同協定レベルの水準を確保する。
- (2)PPPによるインフラ整備を推進すべく、価格本位ではなく、品質が評価される入札制度を整備する#40。
11.移転価格税制、PE課税など国際租税のルール整備#41
- (1)各国政府の移転価格税制、PE(Permanent Establishment)課税の運用強化により、過大な負担になる二重課税が発生すると共に、技術の円滑な移転や人の自由な移動に支障が生じている。
- (2)透明性、予見性確保の観点から、OECD移転価格ガイドライン、モデル条約をAPEC域内共通ルールとする。
- (3)二重課税が生じないよう、租税条約改訂等を通じ、事前確認制度(APA)の円滑な活用の促進、相互協議による案件処理の強化、相互協議不成立の場合の仲裁の仕組みの導入等を図る。
- (4)運用ルールを大幅に変更する場合は、事前に通知して、然るべき協議を行う体制を整備する。
12.ビジネス環境整備
企業の参入に係る規制が撤廃・緩和されたとしても、現地の国内法が予告なく頻繁に変更される、規則の運用に関する客観的なガイドラインがなく、担当官の裁量で判断が変わる、申請手続が煩雑であるといった国内規制上の弊害が存在する場合、企業活動は活性化されない。そこで、ビジネス環境整備に関する委員会を設置し、国内規制ならびにその運用の透明化を推進することが不可欠である。
- http://www.apec.org/Meeting-Papers/Leaders-Declarations/2010/2010_aelm.aspx
- http://www.apec.org/Meeting-Papers/Leaders-Declarations/2011/2011_aelm.aspx
- http://www.keidanren.or.jp/policy/2011/030.html
- アジア11の国・地域から13の経済団体が参加:中国企業連合会、中国国際貿易促進委員会、インド工業連盟、インドネシア商工会議所、全国経済人連合会 (韓国)、マレーシア日本経済協議会、比日経済委員会 (フィリピン)、シンガポール経団連、東亜経済会議台湾委員会 (台湾)、工商協進会 (台湾)、タイ商業・工業・金融合同常任委員会、ベトナム商工会議所、経団連
- 「第2回アジア・ビジネス・サミット共同声明」(2011年9月29日)
- 物品市場アクセス、原産地規則、貿易円滑化、SPS(衛生植物検疫)、TBT(貿易の技術的障害)、貿易救済、政府調達、知的財産、競争政策、越境サービス貿易、商用関係者の移動、金融サービス、電気通信サービス、電子商取引、投資、環境、労働、制度的事項、紛争解決、協力、分野横断的事項
- 「わが国の通商戦略に関する提言」(2011年4月)別添において、TPPを通じて実現すべき内容として、関税撤廃等に加え、サービス貿易・投資の自由化、投資・知的財産権の保護、政府調達市場の開放、貿易手続の円滑化等をはじめ、アジア太平洋地域の広域経済統合に向けて整備すべきルールを例示。
- 例えば自動車、家電等の分野での競争力確保が期待される。
- 第2回アジア・ビジネス・サミットにおけるシンガポールの発言
- 「わが国の通商戦略に関する提言」(2011年4月)において、競争力確保のためには、(1)優良な農地確保、(2)新規就農ならびに企業の参入促進等による経営感覚あふれる担い手確保、(3)地域の合意形成に基づく農地の集積・経営規模の拡大、(4)生産性の向上、(5)六次産業化や農商工連携の推進、(6)農産物等の輸出促進等を図る必要がある旨指摘している。
- わが国としては、個別のEPAを締結していないミャンマーとの投資協定も並行して検討する必要がある。
- 原則すべての投資・サービス分野について自由化を約束し、リストに掲載した項目についてのみ自由化を留保する方式。
- ASEAN+6経済連携協定の中長期的な方向性として、2010年8月のASEAN経済大臣関連会合の場で日本が提案。
- 今後、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムとの経済連携協定の見直しが予定されている。タイについては「日タイ経済連携協定の高度化およびビジネス環境整備を求める」(2011年11月)参照
- 2003年12月交渉開始。2004年11以降、交渉中断。本年10月の日韓首脳会談(於ソウル)の場で、交渉再開に向けた実務者レベル協議の本格的推進について合意。
- 「日豪経済連携協定の早期交渉開始を求める」(2006年9月)
- 2010年(JETRO資料等に基づく)
- 2010年5月開始。これまでに6回開催。経団連では経済連携推進委員会が中心となって参画しており、2010年11月には「日中韓自由貿易協定の早期締結を求める」を取りまとめ、インプットを行っている。
- 例えば、2012年の日中韓首脳会議の際に交渉入りに合意することが期待される。
- 中国向け関税10%
- 中国向け完成車25%、米国向け乗用車2.5%、米国向けトラック25%
- 中国向け10%
- WTOでもITA品目の拡大について長年議論されてきたが、いまだ実現されていない。FTAAPに至る道筋において、IT関連品目の完全な関税撤廃が求められる。
- 例えば、液晶テレビについて、中国向け30%、米国向け5%
- 詳細については「日中韓自由貿易協定の早期締結を求める」(2010年11月)、「日タイ経済連携協定の高度化およびビジネス環境整備を求める」(2011年11月)参照
- 韓米FTAにおいて導入。
- ダンピング調査において、輸出取引の価格を加重平均する際、調査対象製品のうち輸出取引の価格が正常の価額を上回る製品も計算の対象とすること。
- ダンピング価格差に相当する額よりも少ない額のアンチダンピング課税賦課で国内産業に対する損害を十分防止し得る場合、その少ない額のみ課税すること。EU韓国EPAで導入。
- 豪州・NZ経済緊密化協定、豪州シンガポールEPA等で導入。
- セーフガードの調査対象と発動対象が一致すること(パラレリズム)が求められ、これに反するセーフガード発動は無差別原則(セーフガード協定第2条2項)に違反すると解釈されている(「米国溶接ラインパイプ事件」上級委員会報告)。
- EU韓国EPAで導入。
- 日本を含む主要国のサービス産業団体が関心。「フィナンシャル・リーダーズ・ワーキンググループならびにグローバル・サービス・コアリション 越境データ流通とサービス貿易に関する声明」(2011年11月21日)(Financial Leaders Working Group and Global Services Coalition Statement: Cross-Border Data Flows and Trade in Services)参照。
- 投資紛争が生じた場合、ホスト国の国内裁判所に紛争処理を委ねるのではなく、企業が直接ホスト国を相手どり、仲裁裁判に付託する制度。仲裁裁判は、投資紛争解決国際センター(ICSID)、国連商取引法委員会(UNCITRAL)、当事者が選定する仲裁人によって行われる。
- 「日中韓自由貿易協定の早期締結を求める」(2010年11月)
- 「わが国の通商政策に関する提言」(2011年4月)
- GATT第11条は数量制限の一般的禁止について定めているが、EPA・FTAにおいてその運用の厳格化を図る必要がある。
- APEC「ホノルル宣言」にも、各国が2015年末までに環境関連物品の関税を実効税率で5%以下に削減することが盛り込まれている。
- 低炭素技術の導入によるCO2削減分を技術供与国の貢献とする制度。環境に優しいインフラの普及による地球温暖化防止に効果があり、また、わが国としても輸出競争力強化を図ることができる。
- このほか、社会保険料の二重払いの解消等、二国間社会保障協定で対応すべき問題もある。
- 国内法整備の問題であり、EPAで大枠を設定した上で法整備支援等を実施する必要がある。例えば、WTO政府調達協定同様、選択入札についてEPAで規定し、国内法上、競争的交渉方式(予め受注候補者を絞り込み、発注者との協議を通じて最終落札者を決定する方式)を導入するのも一案。
- 経済連携協定のみならず、二国間租税条約で対処することも考えられる。