経団連は3月9日に、会社法施行規則・会社計算規則等の改正を踏まえた「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(以下、ひな型)の改訂版を公表した。
会社法施行規則の改正により、事業報告での「役員等賠償責任保険契約」の開示が必要となった(改正施行規則121条の2)ことから、第4回は、この部分に関して解説する。
役員等賠償責任保険契約は、改正会社法430条の3の1項および改正施行規則115条の2に定義の記載があるが、基本的にはD&O保険のことを指す。
そのうえで、会社が役員等賠償責任保険契約を締結している場合には、①当該契約の被保険者の範囲および②当該契約の内容の概要――を開示することになる。
①については、事業報告作成会社の役員等でない者が被保険者に含まれている場合には、その者も記載の対象となる。被保険者の氏名までは要しないが、範囲等の記載により、被保険者となる者が特定できることが必要。
②については、(a)被保険者が実質的に保険料を負担している場合におけるその負担割合(b)塡補の対象とされる保険事故の概要(c)当該契約によって被保険者である役員等(当該株式会社の役員等に限る)の職務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合におけるその内容――を含むとされている(改正施行規則121条の2の2号)。当該契約の内容の重要な点(特約がある場合には、主契約と特約を合わせた契約全体の重要な点)を理解するにあたり必要な事項を記載することが求められ、(b)としては、その重要な点を理解するにあたり必要な事項の記載が必要。また、(c)の一例としては、一定額に至らない損害については塡補の対象としないことなどが考えられるが、特段の措置を講じていない場合には記載は不要。
記載の範囲としては、事業報告の対象事業年度の初日から末日までに有効であったすべての役員等賠償責任保険契約に関する記載が必要。
記載の方法は、会社役員に関する事項に注記する方法や、別項目を立てて記載する方法が考えられる。後者の場合の記載例は下記を参照。
[別項目を立てて記載する際の記載例]
(役員等賠償責任保険契約の内容の概要)
- ①被保険者の範囲
当社および当社のすべての子会社のすべての取締役、執行役および監査役。 - ②保険契約の内容の概要
被保険者が①の会社の役員としての業務につき行った行為(不作為を含む)に起因して損害賠償請求がなされたことにより、被保険者が被る損害賠償金や争訟費用等を補償するもの。ただし、贈収賄などの犯罪行為や意図的に違法行為を行った役員自身の損害等は補償対象外とすることにより、役員等の職務の執行の適正性が損なわれないように措置を講じている。保険料は全額当社が負担する。
【経済基盤本部】