経団連は6日、東京・大手町の経団連会館で、企業主導型保育事業に関する説明会を内閣府と共同で開催した。東出公一郎人口問題委員会企画部会長の司会のもと、内閣府の担当官から事業に関する説明を聞くとともに、実際に事業を活用している企業の担当者による事例紹介を受け、質疑応答を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 「企業主導型保育事業の概要」
内閣府子ども・子育て本部参事官・竹林経治氏
企業主導型保育事業は、2017年度末までの保育の受け皿整備目標の上乗せ分10万人のうち、5万人分の確保を目指すものである。事業所内保育所に対する助成の給付水準は、子ども・子育て支援新制度の小規模保育事業等の公定価格に準じた高い水準となっており、企業の負担は低く抑えられている。
事業所内保育所の設置方法としては、共同設置や共同利用が可能であるほか、運営を保育事業者等へ委託することも可能である。なお、設置にあたり市町村の関与は不要だが、継続的な運営のために、事前に地域の保育ニーズを自治体に問い合わせることをおすすめしている。
3月30日時点で、利用定員数で約2万人分の助成決定がなされている。今年度も引き続き、多くの企業に事業の活用を検討してほしい。
■ 事例紹介(1)「ダイナシティ保育園」
ダイナシティグッドライフ事業部部長・大木俊幸氏
当社は、神奈川県小田原市に位置する、同県西部エリア最大級のショッピングセンターの開発・運営・管理を行っている。施設内のテナントの従業員のうち、約8割が女性であり、女性が安心して長く働ける職場環境の整備が経営課題となっている。その具体的な取り組みの一環として、企業主導型保育事業を活用し、テナントの従業員が利用できる、共同利用型の保育所を設置することとした。
当社は保育事業のノウハウを有していないため、設置から運営までの実務を外部の事業会社に委託している。委託先によるさまざまな場面での手際よい対応のおかげで、この4月に無事開所することができた。企業主導型保育事業の活用に際し、よいパートナーと組めるかどうかが、成否のカギを握ると思う。
定員については、テナントの従業員が利用する企業枠のほか、地域住民のための地域枠も設定している。当初の入園申し込みは多くなかったが、2月の園見学・説明会のほか、認可保育所へ入所できなかった方々に対する小田原市からの案内で大幅に増えた。園児募集に加え、保育の質の向上や認可保育所との連携を図るうえでも、行政との連携は重要であると感じている。
■ 事例紹介(2)「吉泉保育所」
吉泉産業設計課技術顧問・小久保力郎氏
当社は、カット野菜のスライサー等の機械を製造・販売しており、関西文化学術研究都市の津田サイエンスヒルズ(大阪府枚方市)にある。同地区内では、業績はよいものの人材不足に悩んでいる企業が多く、当社の社長も優秀な女性従業員に継続して働いてもらえるような環境整備が課題との認識を持っていた。
こうした背景から、社長の主導により、地区内企業の従業員向けの保育所設置に向けて、検討を開始した。地区内の企業に対するアンケートを行ったところ、一定の保育ニーズがあることもわかった。認可保育所の設置は枚方市に待機児童がいないために断念し、事業所内保育所の設置を検討していたところ、昨年4月に企業主導型保育事業の存在を知り、申請するに至った。
開所は来年4月を予定している。環境のよさに加えて、朝・夕の送迎時はもちろん、多くの男性従業員が利用する地区内の食堂棟と保育所の建物が隣接しており、昼の休憩の際にも子どもとのスキンシップが図れるなど、利用者にメリットを感じてもらえると思う。
【経済政策本部】