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月刊 経団連  巻頭言 未来への積極的な投資

稲垣 精二 (いながき せいじ) 経団連審議員会副議長/第一生命ホールディングス会長

日経平均株価は史上最高値を更新し、売上高経常利益率といった収益性指標もすでにバブル期を超えている。企業業績は好調に見える一方で、日本経済には長らく解決を迫られている課題がある。それは、企業の貯蓄超過である。国内投資を抑制し、借入金返済や内部留保を優先している結果ともいわれる。バブルが崩壊した1990年代後半以降、実に四半世紀にわたって、わが国の非金融法人部門ではこの貯蓄超過が続いている。

その要因の一つに、国内経済の成長期待の低さがある。内閣府の調査によると、かつてバブル期には3%台半ばであったわが国の期待成長率は、足元では1%程度と低迷が続いている。また、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、日本の対内直接投資残高のGDP比は世界198カ国中196位だ(2022年)。成長期待が低い国への投資は難しいということだろう。

改めて政府には、各種の成長戦略の着実な遂行と、具体的な成果に基づいた成長期待の引き上げが強く求められる。同時に、われわれ民間企業も長いデフレ環境下で萎縮したマインドを払拭する必要があろう。

現在、われわれは地球温暖化をはじめとする環境問題、人口減少、食料安全保障、エネルギー問題等、様々な社会課題に直面している。これら課題の克服は、持続可能な社会の実現に向けて避けては通れない道だ。同時に、こうした課題の解決にこそ日本経済の復活と成長のチャンスがある。

今こそ社会課題の解決を機会と捉え、社会性と経済性が両立する事業への投資により、未来をつくる新たな産業を創出していくことが求められている。そのためには、既存事業の見直しや、時代にあった事業構造への転換がこれまで以上に重要となる。

過去の成功体験にとらわれず、摩擦やリスクを恐れず、挑戦を続けていく。力強い投資が牽引する日本経済の復活、そして「サステイナブルな資本主義」の実現には、そんな「アニマルスピリッツ」を持って挑戦し続けることが欠かせないと考える。

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