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テムズ川沿いのパブから(筆者は右) |
筆者は、e-Learning等のオンライン学習プラットフォームやギガスクール構想によりデジタル化が進む学校教育現場で日々蓄積される、教育ビッグデータ(生徒の学習ログやテスト問題への解答データなど)から、各教科単元の理解や教科横断的な学習や高次の学力の評価を行うための統計学の方法論の研究を行っている。
一つ目のプロジェクトは、生徒の理解や学力の評価に用いられる潜在変数モデルと呼ばれる統計モデルを教育ビッグデータへ適用できるようにするための新しい推定法を開発する研究であった。確率的最適化の手法を用い、次元数が多く、テスト問題への解答データが膨大にある場合であっても、高速かつ精度良く推定できる方法を提案することができた。二つ目のプロジェクトは、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)などの国際学力調査の際に、各国の生徒の学力水準の推定・算出に実際に利用されている、学力水準の推定・算出方法の課題を解決する研究に取り組んできた。具体的には、潜在回帰モデルと呼ばれる潜在変数モデルを用いた既存の学力水準の推定・算出方法を、どのように学力水準が生成されたかに関する解釈可能性と、生成された学力水準が、生徒のテスト問題への回答をどの程度予測できるかに関する予測精度という二つの観点から、既存手法を向上させる新しい手法を提案した。
元々、学部では心理学を専攻し、修士課程では教育学研究科に在籍しており、数学・統計学へのバックグラウンドは強くなかったが、数理的に高度な統計学の方法論の研究をしてみたいという気持ちから、統計学科で開講されている統計学の博士課程に進学することを選択した。そのため当初は、測度論を使った数理統計学の授業や研究で求められる数理最適化の知識などを学ぶのに苦労したが、少しずつ取り組んでいるうちに、理解する必要のある概念にも慣れていき、それなりにやっていけそうだという感覚を掴むことができた。また、今までは英語でプレゼンテーションをするときには、前もって原稿を手元に用意しておかないと不安を感じていたが、今では原稿を用意せずとも発表することができるようになり、少しずつ英語力への自信もついてきた。今後は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにて統計学の博士号の取得を目指し、その後も引き続き研究に励んでいく予定である。
この度は、このような貴重な学びの機会を与えてくださいました経団連国際教育交流財団及び東京倶楽部の皆様に心より感謝申し上げます。
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