企業人政治フォーラム速報 No.17
1997年6月13日発行
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総会・シンポジウム特集号
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去る6月4日、当フォーラムの1997年度総会・シンポジウム並びに記念パーティーが約300名の会員の方の出席を得て開催された。
【第一部 定時総会】
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定時総会では、1996年度の事業報告・収支決算、1997年度の事業計画・収支予算、ならびにフォーラム役員である代表幹事の交替の件が諮られ、承認された。
今回、新たに以下の3名が代表幹事となった(カッコ内は退任役員)。
- 吉井毅 新日本製鐵副社長(末廣六郎)
- 石川博一 さくら銀行常務取締役(岡田明重)
- 内田公三 経団連事務総長(三好正也)
*三好正也氏は新たに常任顧問に就任。
【第二部シンポジウム−どう進めるか、行政改革】
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シンポジウムでは、今まさに正念場を迎えている行政改革について、自民党行政改革推進本部の佐藤孝行本部長と柳沢伯夫事務局長から、自民党の取組状況等を聞くとともに、行政改革の課題や今後の進め方などについて各パネリストとの活発な意見交換を行った。以下はその概要である。
●パネリスト
- 佐藤孝行 自民党行政改革推進本部長
- 柳沢伯夫 自民党行政改革推進本部事務局長
- 鈴木敏文 経団連副会長/イトーヨーカ堂社長
- 宮内義彦 行政改革委員会規制緩和小委員会座長/オリックス社長
- 大田弘子 埼玉大学助教授
- 宮智宗七 産能大学教授(進行)
- これまでの行政改革の取組みについて
- 佐藤本部長:
- 昨年、橋本総理から行政改革推進本部長への就任を依頼され、まずは、国民に一番目につくものとして、特殊法人の改革に取組み、先般、11特殊法人等の民営化・廃止を決めた。現在、第2弾として、政府系金融機関を手がけているが、中でも大きいのが、開銀と輸銀であり、その他にも縦割りで重複している機関の民営化、スリム化を図りたい。その後で、10月頃までにその他の公益法人の改革を手がけたい。
国民全体に国家の再建に理解を持ってもらい、一緒にがんばって何とか日本の未来を切り開いていきたい。
- 柳沢事務局長:
- 6月3日に発表した「財政構造改革の推進方策」については、構造改革にふみこんでいないとの批判があるが、それは承知の上であり、構造改革はこれからやる問題である。土光臨調のときは、増税なき財政再建と行政改革がいわば手段と目的の関係であったが、今回は並列の関係である。行革そのものが目的であり、それは即ち日本の活性化につながる。今回の「財政構造改革の推進方策」は、行革を行なう前の現在のシステムの中でどう支出を減らすかという話である。本当の行革はその後にやり、それがまた財政構造に反映することになる。
行革は、官民分担を中心にシステムを変えるもので、その具体的な中身が、規制緩和であり、特殊法人を含めた直轄事業の見直しである。改革の最終的な集約として、中央省庁の再編成を行なう。
- 大田助教授:
- 行政改革の本質は、第1に政府の役割の見直し、第2に官僚の許認可事項と裁量性をなくすことである。今回の行革の試金石として、公共事業の縦割り是正、規制緩和、財政投融資の改革ができるかに注目している。
- 鈴木副会長:
- 今回、従来聖域とされてきた農業、防衛、社会保障、文教その他の分野でマイナス予算を組もうとする姿勢は評価したい。
行革の課題の中では、地方分権が、規制緩和の実質が伴うかどうかという意味で重要である。
- 宮内座長:
- 戦後、日本の経済発展のリーダーを担ってきた自民党政権自らイニシアティブをとって構造改革を行なう決断をしたことを高く評価する。しかし、今日、改革が今のようなやり方で本当に間に合うのか疑問である。「仕組み」を変えねばならないときに、「仕方」を変えるにとどまっている。
地方分権については、今まで均衡ある国土の発展を国是とし、税制と公共事業で地方へ金を流してきたが、「自立した個性ある地方の展開」という考え方に変えた上で地方分権を進めないと、日本は破滅する。六大改革の中に税制が入っていないことは非常に残念である。
- 大田助教授:
- 地方分権で最も重要な問題は財源であり、地方に課税自主権を与え、地方は自らのコスト意識で公共事業を行なうべきである。
- 佐藤本部長:
- ノウハウと人材があるという前提で地方分権を考えると失敗する。地方分権は重要だが、性急な改革は現状を知らないといわざるをえない。
- 柳沢事務局長:
- 地方財源の問題だが、地方議会は総与党化しており、監査機能も弱い。地方税と国税の徴収機関を一本化した方がよい。
- 今後の課題
- 宮内座長:
- 規制緩和については、行政対民間という単純な構図ではなく、民間の中にも規制の中で高コスト体質のまま行政との間に独特のシステムを作っている産業もあり、この分野を規制緩和により活性化しようと努力している。
- 鈴木副会長:
- 一つの心配は景気である。厳しい状況を覚悟しなければならないのは当然だが、最低今のレベルは維持しないと、折角の財政再建も掛け声だけになってしまう。民需を引き上げる意味からも優遇税制を外してでも、特別減税、所得税引下げを考えるべきだ。
- 柳沢事務局長:
- ある程度のデフレは覚悟しなければならない。小規模企業、自営的企業がどんどん出てくるような規制緩和を行ない、不況を乗り切り、明るい日本経済を展望したい。
- 大田助教授:
- 行政改革のこれからの課題について3点指摘したい。第1に、事前統制から事後的チェックというが、これを支える司法制度などの仕組みの整備が必要である。第2に、行政をチェックする体制の確立が必要で、官庁の隠れ蓑になっている審議会は廃止すべきである。第3は、公務員人事の問題であり、中途採用など、外からの風を入れるような仕組みを作るべきである。
- 政治のリーダーシップをどう実現するか
- 宮智教授:
- フランスを見ても、政治のリーダーシップで改革をうまく進めないと、体制的な不安定に結びつきかねない。
- トヨタ自動車 張専務(フロア発言):
- 民営化にしても規制緩和にしても、自由に競争させることが重要だが、これを進めると、雇用をはじめさまざまな面に影響を及ぼす。それに対応するためには、労働市場の流動化、新産業の育成を活発に進めていく必要があり、この面における政治のリーダーシップも必要だ。
- 柳沢事務局長:
- 今の指摘は非常に重要なポイントであり、小企業がどんどん出てくるような活気のある社会にしていかなければならない。
- 大田助教授:
- 政治にこれまでにない活気が出てきた。ただ、政党はたくさんできたが、政策的な対立はそれほど明らかになっていない。国会で重要な問題を真正面から議論し、国会を面白くしてほしい。
- 宮内座長:
- 最近ストックオプションについて、議員立法により今年の株主総会に間に合うように改正が行われたが、このように政治のリーダーシップで大きな枠組みを動かして、欠陥があれば変えていくのが新しいやり方である。
- 鈴木副会長:
- 財政再建の話にしても、一般の人々の関心は薄い。大衆に周知徹底させることも政治のリーダーシップである。
- 宮智教授:
- 未来に結実するものへの夢と期待がなければ、改革は成し遂げられない。そこには、猛烈な執念、責任感、相互信頼が必要である。
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