「1998年度 社会貢献活動実績調査結果」 要約

本年７月、経団連会員企業ならびに１％クラブ法人会員の合計1,054社を対象にアンケート票を郵送し、98年度の社会貢献活動支出、その経常利益額に対する比率、寄付金損金算入限度枠の利用率、社会貢献活動を推進するための社内体制や従業員の社会貢献活動支援制度の導入等について回答いただいた。

回答総数は378社（回答率；35.9％）。

社会貢献活動に関する支出

本調査では、各社の「社会貢献活動支出額」と、それを構成する「寄付金額」ならびに「自主プログラム(各社が自ら実施する社会貢献プログラム)に関する支出額」について質問している。支出の集計結果は以下のとおりである。

社会貢献活動支出額

社会貢献活動支出について回答した360社の98年度の社会貢献活動支出総額は1,376億円であった。１社平均では3億8,200万円と97年度の4億円1,400万円に比べ7.7％減少した。

	92年度 （381社）	93年度 （398社）	94年度 （404社）	95年度 （367社）	96年度 （405社）	97年度 （376社）	98年度 （360社）
合計額	1,670億円	1,494億円	1,542億円	1,454億円	1,620億円	1,557億円	1,376億円
１社平均	4億3800万円	4億 500万円	3億8200万円	3億9600万円	4億円	4億1400万円	3億8200万円
対 前 年	16.6％減	7.5％減	5.7％減	3.8％増	1.0％増	3.5％増	7.7％減

また、２年連続で回答した283社の社会貢献活動支出額の増減を見ると、支出額を増やした企業が79社にとどまったのに対し、支出額を減少させた企業が196社にのぼっている。

寄付金額

社会貢献活動支出額のうち、寄付金額１社平均は、2億4,700万円(357社)と97年度に比べ10.2％減少した。

	92年度 （380社）	93年度 （366社）	94年度 （402社）	95年度 （360社）	96年度 （396社）	97年度 （373社）	98年度 （357社）
合計額	1,207億円	1,074億円	1,128億円	1,071億円	1,049億円	1,027億円	883億円
１社平均	3億1800万円	2億9300万円	2億8100万円	2億9700万円	2億6500万円	2億7500万円	2億4700万円
対 前 年	15.9％減	7.9％減	4.1％減	6.0％増	10.8％減	3.9％増	10.2％減

自主プログラムに関する支出額

社会貢献活動支出額のうち、自主プログラムに関する支出額１社平均は、1億3,800万円(357社)と97年度に比べ4.2％減少したものの、社会貢献活動支出額の中で自主プログラム支出額が占める比率は、ここ数年高い水準にある。

	92年度 （329社）	93年度 （365社）	94年度 （361社）	95年度 （361社）	96年度 （387社）	97年度 （367社）	98年度 （357社）
合計額	463億円	420億円	413億円	383億円	571億円	530億円	493億円
１社平均	1億4100万円	1億1500万円	1億1500万円	1億 600万円	1億4700万円	1億4400万円	1億3800万円
対 前 年	40.5％減	18.4％減	0.0%	7.8％減	38.7％増	2.1％減	4.2％減

社会貢献活動支出額が経常利益額等に占める比率(単純平均)

98年度回答企業の社会貢献活動支出額が経常利益に占める比率(単純平均)は、社会貢献活動支出額の減少を反映し、2.59％(295社)と97年度に比べ0.04ポイント下降した。また、売上高比、税引前利益比も97年度を下回り、これまでで最低の水準となった。

	92年度	93年度	94年度	95年度	96年度	97年度	98年度
売上高比	0.15% (327社)	0.21% (321社)	0.17% (347社)	0.16% (341社)	0.18% (384社)	0.12% (363社)	0.10% (342社)
経常利益比	2.86% (343社)	3.47% (315社)	3.25% (333社)	2.36% (326社)	2.40% (368社)	2.63% (337社)	2.59% (295社)
税引前利益比	3.24% (330社)	4.25% (310社)	3.50% (318社)	3.30% (312社)	2.88% (350社)	2.97% (319社)	2.70% (256社)

寄付先別の１社平均寄付件数および寄付金額

98年度の寄付先別の寄付件数を見ると、「国・地方自治体への寄付」と「特定公益増進法人への寄付」を除き97年度を上回った。とくに、「市民活動団体への寄付」件数は大幅に増加し、１社平均で40件に達している。
一方、寄付金額を見ると、「市民活動団体」以外への寄付については減少していることから、１件あたりの寄付金額が小口化していることが伺える。そうした中、「市民活動団体への寄付」は960万円と少額ではあるが97年度に比べ増加している。

	92年度	93年度	94年度	95年度	96年度	97年度	98年度
(1) 国・地方自治体への寄付	6800万円	6500万円	6300万円	5900万円	6000万円	25.7件 3700万円	21.0件 3300万円
(2) 指定寄付金						17.7件 2600万円	18.4件 1600万円
(3) 特定公益増進法人への寄付	8400万円	8700万円	6900万円	7200万円	7700万円	44.3件 9300万円	43.4件 8000万円
(4) 特増でない公益法人への寄付	12000万円	11000万円	11000万円	12000万円	11700万円	28.9件 5900万円	34.6件 5500万円
(5) 市民活動団体への寄付						32.5件 800万円	40.2件 960万円
(6) その他の寄付						113.7件 7200万円	116.2件 6200万円
うち自社財団への寄付	5600万円	6400万円	7100万円	9900万円	11800万円	1.8件 11100万円	1.9件 10500万円

寄付金の損金算入限度額の利用率(単純平均)

寄付金の損金算入限度枠(免税枠)の利用率は、一般寄付が51.0％、特定公益増進法人（以下、特増）への寄付が22.9％であり、いずれも97年度を４〜５％下回った。また、限度枠利用率が100％に達している企業は、一般寄付で42社(13.5％)、特増への寄付で13社(4.3％)であった。

	92年度	93年度	94年度	95年度	96年度	97年度	98年度
一般寄付免税枠	50.2% (333社)	47.0% (307社)	48.8% (329社)	52.8% (286社)	51.2% (328社)	55.1% (324社)	51.0% (312社)
特増法人免税枠	24.6% (330社)	24.8% (298社)	27.2% (318社)	29.1% (269社)	24.8% (313社)	27.8% (315社)	22.9% (302社)
	92年度	93年度	94年度	95年度	96年度	97年度	98年度
一般寄付免税枠	56社 (333社の16.8%)	42社 (307社の13.7%)	30社 (329社の9.1%)	25社 (286社の8.7%)	34社 (328社の10.4%)	51社 (324社の15.7%)	42社 (312社の13.5%)
特増法人免税枠	22社 (330社の6.7%)	20社 (298社の6.7%)	22社 (318社の6.9%)	12社 (269社の4.5%)	19社 (313社の6.2%)	20社 (315社の6.3%)	13社 (302社の4.3%)

寄付金、自主プログラムの分野別支出比率(単純平均)

寄付金支出の比率を分野別に見ると、支出割合が高い分野は、「学術・研究」(19.8％)、「教育」(12.3％)など専門性を要する分野や「地域社会の活動」(14.1％)などとなっている。
一方、自主プログラムに関する支出割合が高い分野は、「芸術・文化」(21.1％)、「地域社会の活動」（18.5％）、「環境保全」(12.2％)などであり、とくに「環境保全」が大幅に伸びているのが特徴的である。

	98年度寄付金支出比率			98年度自主プログラム支出比率
	(329社)		97年度	(186社)		97年度
１.社会福祉		7.1%	8.9%	(4)	10.3%	10.9%
２.健康・医学		6.1%	5.3%		5.3%	4.3%
３.スポーツ		6.1%	8.1%	(5)	9.8%	10.2%
４.学術・研究	(1)	19.8%	17.6%		5.2%	6.0%
５.教　　育	(3)	12.3%	14.3%		8.9%	9.6%
６.芸術・文化	(5)	9.5%	8.3%	(1)	21.1%	22.7%
７.環境保全		4.8%	5.0%	(3)	12.2%	9.6%
８.史跡・伝統文化保存		2.3%	2.5%		1.2%	1.5%
９.地域社会の活動	(2)	14.1%	13.0%	(2)	18.5%	16.4%
10.国際交流・協力		5.8%	5.9%		3.3%	4.4%
11.災害救援		1.2%	1.1%		1.2%	0.2%
12.その他	(4)	11.0%	10.0%		3.2%	4.1%

＊；(1)〜(5)は支出割合が高い順位

社会貢献活動推進のための社内体制・制度導入状況

社会貢献活動を推進するために何らかの社内体制を整備している企業は、全体の56.3％にあたる213社にのぼっている。とくに、「基本方針の明文化」(148件)、「専門部署または専任担当者の設置」(123件)を行っている企業が多い。

社会貢献活動推進のための社内体制

		91年度 以前	92年度	93年度	94年度	95年度	96年度	97年度	98年度	合　計
新規制度の導入企業数		114社	49社	24社	25社	26社	21社	30社	27社	213社 [56.3%]
（内訳・件数）
	基本方針の明文化	59件	24件	13件	11件	8件	5件	16件	12件	148件
	専門部署または専任担当者の設置	49件	18件	13件	8件	8件	6件	15件	6件	123件
	事業所毎の社会貢献担当者の設置	9件	9件	3件	3件	3件	5件	3件	6件	41件
	社会貢献委員会の設置	27件	10件	6件	1件	4件	7件	8件	4件	67件
	予　算　制　度	37件	8件	4件	2件	7件	1件	8件	4件	71件
	金額換算ルールの設定	14件	5件	2件	3件	3件	1件	4件	0件	32件
	そ　　の　　他	4件	9件	1件	3件	1件	2件	2件	3件	25件
	合　　　　計	199件	83件	42件	31件	34件	27件	56件	35件

企業が従業員の社会貢献活動を支援するための制度導入状況を見ると、これもほぼ半数の企業(205社)が何らかの制度を導入している。とくに、「ボランティア休暇制度」(98件)、「青年海外協力隊参加休職制度」(78件)など各種休暇・休職制度を導入している企業が目立つ。
また、「その他」の回答の中では、社員やその家族等がボランティア活動を行っている団体に対し、備品の購入資金や活動運営費用の一部を支援する制度を導入している企業が数多くあった。

従業員の活動を促進するための制度導入状況

		91年度 以前	92年度	93年度	94年度	95年度	96年度	97年度	98年度	合　計
新規制度の導入企業数		71社	51社	34社	36社	32社	28社	33社	23社	205社 [54.2%]
（内訳・件数）
	ボランティア休職制度	6件	15件	9件	8件	5件	4件	7件	3件	57件
	青年海外協力隊参加休職制度	27件	14件	9件	12件	3件	4件	5件	4件	78件
	ボランティア休暇制度	6件	21件	13件	10件	15件	13件	13件	7件	98件
	地域活動奨励休暇制度	3件	6件	7件	3件	2件	0件	1件	1件	23件
	ボランティア活動者表彰制度	12件	7件	2件	7件	1件	4件	5件	3件	41件
	ボランティア活動者登録制度	2件	2件	5件	7件	7件	5件	4件	3件	35件
	マッチング・ギフト制度	5件	14件	5件	1件	4件	4件	3件	4件	40件
	地域貢献活動促進運動	23件	9件	4件	0件	2件	1件	7件	3件	49件
	そ　の　他	5件	4件	2件	3件	4件	2件	4件	10件	34件
	合　　　　計	89件	92件	56件	51件	43件	37件	49件	38件