政府は、新産業・新事業の創出による良質な雇用の確保と生産性向上のための投資拡大に重点を置いて、本年1月末を目途に「産業再生計画」をとりまとめる予定である。
そこで、「産業再生計画」の策定に向け、経団連では、新産業・新事業創出のための環境整備に関する働きかけを効率的に行うため、新産業・新事業委員会メンバー企業等150社を対象に、1月7日〜14日に、緊急アンケート調査を実施した。[回答率56.7%(85社)]
ベンチャー・ビジネス
「資金調達」(80.0%)、「販売ルートの確保」(52.9%)、「マネジメントの確保・育成」(38.8%)などが創出を困難にしていると指摘する意見が多く、政府に対して、「エンジェル税制の拡充」(61.2%)、「資金調達面の支援」(60.0%)、「ベンチャー・キャピタル税制の導入」(55.3%)などを優先的に実施すべきとする意見が強い。
既存企業による新分野参入
新しい企業の立上げやその仕掛けを作る「ビジネス・プロデューサーの確保・育成」(49.4%)、「技術開発」(43.5%)、「販売ルートの確保」(38.8%)などが当面の課題であるという意見が多く、政府に対して、「連結納税制度の創設」(80.0%)、「子会社設立手続きの簡素化」(48.2%)、「大学から企業への技術移転の拡充」(44.7%)などを望む声が強い。
その他、新産業・新事業創出のための政府の役割等に関し、金融監督庁が昨年12月12日に公表した「金融マニュアル検討会・中間とりまとめ」に対して、融資先を定量的な基準によって一律に評価すべきではない、などの意見も寄せられた。
新産業・新事業の創出をとくに困難にさせている要因
(選択肢12項目中、上位5項目順)
新産業・新事業の創出に向けて、政府としてとくに優先的に取り組むべき項目
(選択肢21項目中、上位5項目順)
新産業・新事業の創出をとくに困難にさせている要因
(選択肢12項目中、上位5項目順)
新産業・新事業の創出に向けて、政府としてとくに優先的に取り組むべき項目
(選択肢21項目中、上位5項目順)
(1)新産業・新事業の創出をとくに困難にさせている要因
要因 | 件数 |
---|---|
資金調達 | 68 |
技術開発 | 11 |
技術者の確保・育成 | 13 |
マネジメントの確保・育成 | 33 |
ビジネス・プロデューサーの確保・育成 | 27 |
その他人材の確保・育成 | 11 |
設備等施設の確保 | 9 |
販売ルートの確保 | 45 |
政府規制 | 10 |
経営ノウハウの修得 | 19 |
参入分野に関する情報入手 | 6 |
その他 | 3 |
(2)新産業・新事業の創出に向けて、政府としてとくに優先的に取り組むべき項目
要因 | 件数 |
---|---|
連結納税制度の創設 | 7 |
エンジェル税制の拡充 | 52 |
ベンチャー・キャピタル税制の導入 | 47 |
ストックオプション税制の拡充 | 21 |
倒産法制の見直し | 13 |
子会社設立手続きの簡素化 | 3 |
国立大学の教員の兼業規制の見直し | 25 |
年金ポータビリティの実現 | 13 |
職業紹介・労働者派遣の規制緩和 | 3 |
その他政府規制の緩和 | 12 |
行政サービスの民間へのアウトソーシング | 9 |
公共調達におけるベンチャーの参入機会の拡大 | 31 |
政府研究開発費のベンチャーへの重点配分 | 33 |
資金調達面の支援 | 51 |
新事業支援施設の整備・拡充 | 12 |
店頭登録市場の活性化 | 25 |
起業家教育の推進 | 27 |
産学協同の推進 | 17 |
大学から企業への技術移転の拡充 | 19 |
個人の能力開発の促進 | 2 |
その他 | 3 |
(1)新産業・新事業の創出をとくに困難にさせている要因
要因 | 件数 |
---|---|
資金調達 | 9 |
技術開発 | 37 |
技術者の確保・育成 | 23 |
マネジメントの確保・育成 | 21 |
ビジネス・プロデューサーの確保・育成 | 42 |
その他人材の確保・育成 | 14 |
設備等施設の確保 | 2 |
販売ルートの確保 | 33 |
政府規制 | 24 |
経営ノウハウの修得 | 16 |
参入分野に関する情報入手 | 26 |
その他 | 8 |
(2)新産業・新事業の創出に向けて、政府としてとくに優先的に取り組むべき項目
要因 | 件数 |
---|---|
連結納税制度の創設 | 68 |
エンジェル税制の拡充 | 5 |
ベンチャー・キャピタル税制の導入 | 7 |
ストックオプション税制の拡充 | 26 |
倒産法制の見直し | 3 |
子会社設立手続きの簡素化 | 41 |
国立大学の教員の兼業規制の見直し | 19 |
年金ポータビリティの実現 | 22 |
職業紹介・労働者派遣の規制緩和 | 13 |
その他政府規制の緩和 | 35 |
行政サービスの民間へのアウトソーシング | 21 |
公共調達におけるベンチャーの参入機会の拡大 | 7 |
政府研究開発費のベンチャーへの重点配分 | 13 |
資金調達面の支援 | 14 |
新事業支援施設の整備・拡充 | 10 |
店頭登録市場の活性化 | 7 |
起業家教育の推進 | 20 |
産学協同の推進 | 37 |
大学から企業への技術移転の拡充 | 38 |
個人の能力開発の促進 | 16 |
その他 | 3 |
金融監督庁が昨年12月22日に公表した「金融マニュアル検討会・中間とりまとめ」では、例えば、実質的な債務超過が2年以上続き、さらに5年以内に再建できる確実な計画がなければ、一律に破綻懸念先と認定されてしまう。これでは、経済の活性化を担うベンチャーの芽を摘み、根を枯らしかねない。新産業・新事業の創出の観点より、全業種・業態を一律に評価する定量的な基準のみを設けるのではなく、業種や業態、ベンチャー等、その特性にも配慮できる定性的な基準も必要である。
税制、融資、技術移転などの面でベンチャーを支援するための政策を、既存の個々の法令の中で小手先で展開するのではなく、それらの政策を集大成したベンチャー振興基本法を省庁横断、挙国一致で整備することにより、ベンチャー振興に本腰を入れて取り組むべきである。
従来の公共事業中心の予算配分をするのではなく、成長15分野へ戦略的に重点配分すべきである。
特定分野について、一定期間法令の適用除外にするなど、特別措置を講じるべきである。
中小企業を含めた既存産業を活性化させ、新技術・新製品の開発を活発化させ、その延長線上で新産業が次々と生み出されていく循環の基盤を整備する必要がある。
新産業・新事業創出のための各種施策・投資による効果を総合的に分析・評価・公表し、フォローアップすることが重要である。
リスクテークに耐えられるビジネスインフラ(税制を含む)の整備が必要である。
中長期的な視点から、起業家を輩出する策を講じることが重要である。特に、若年層への教育の段階より、企業・市場・投資等に関する教育プログラムやインターンシップ制などの導入が望まれる。
産業活動分野の原則自由化(非合法活動には厳格な罰則)の実現ならびにハイリスク・ハイリターン事業への税制面のサポート(連結納税等)、官公庁サービスの民間への開放、移管が必要である。
事業認可は極力撤廃されることが望ましいが、形式や前例に囚われることなく、事業の将来性や市場性等により判断すべきである。
行政機関の有する情報の開示があれば、それを基にしたビジネスや行政効率化に資するビジネスが生まれやすくなる。例えば、産業用、家庭用廃棄物の処理費用の明細など、行政費用の内訳を公開してもらうことにより、より透明性が高く、効率的なサービスの提供が可能となる。
人材と技術の流動化を促す政策が必要である。
技術移転、学術交流などについて、国境を越えた活動を可能とする施策展開が必要である。
大学教育を根本から見直し、創造性を重視した教育を重視すべきである。
公共用地等、公的資産の民間事業への活用機会の提供が求められる。
スピードが大切。規制緩和、各種施策の立案・実施など政府対応の一層のスピードアップを望みたい。
ばらまき支援でなく、対象を絞った支援の実行が求められる。