1998年7月23日
(社)経済団体連合会
現在のわが国はデフレスパイラルの懸念が指摘されるなど極めて厳しい状況にあり、景気を本格的に回復させ、内外からの信頼を取り戻すには、税制改革、金融システムの安定化をはじめとした構造改革に早急に取り組まねばならない。
金融再生トータルプランの究極の目的は国民に質の高い金融サービスを供給できるよう金融機関を再編・強化することにある。今後は上記目的にてらして我が国金融機関が、世界と競争できるよう、業界・行政が協力して前向きの再編・強化の将来像を示し、そこに向けて主体的に取組むべきである。
金融機関は第II分類債権をリスクに応じて細分化して、必要な引き当てを行い、出来る限り早期に自主的にディスクロージャーすべきである。
金融行政においては、大蔵省金融企画局が金融監督庁・日銀・預金保険機構との役割・責任分担の明確化と連携強化を図りながら、迅速かつ的確に制度的枠組みを整備し、システミックリスクを起こさないようにすべきである。そのために大蔵大臣を長とする常設委員会の設置を検討すべきである。
すでに7月2日に「金融再生トータルプラン」というグランドデザインが提案されており、今後は臨時国会において、不良債権処理のための臨時不動産関係権利調整委員会、サービサー、競売等の関連法案を早急に成立させる必要がある。
金融システムの安定化と機能強化のために、画期的なブリッジバンク構想が提案されているが、その法制化にあたっては、公的資金投入に関する国民の懸念に十分配慮して、制度設計全体にわたって、透明性・客観性・公平性を確保し、モラルハザードを排除することが求められる。
そこで、我々はブリッジバンク関連法制の整備にあたって、以下のことを要望する。
破綻に瀕した金融機関を放置し、市場の判断に委ねることは、かえって国民に重い負担を課す可能性があるため、金融監督庁が、日銀と密接に協力・連携しながら重点的に検査を行い、迅速に破綻を認定すべきである。
本スキームは善意かつ健全な借り手の保護を目的としているため、制度の運用によっては借り手のモラルハザードが懸念される。
そこで、金融管理人や審査判定委員会が行う債権の区分けにあたっては、金融当局が行う債権分類と整合性を保つ必要がある。また、金融管理人や審査委員会が行う融資が適正なものになるよう、金融当局が国としての厳格で統一的な融資審査ガイドラインの策定が不可欠である。併せて、公的資金投入に関するルールを明確化する。
本スキームは2年以内に譲受金融機関に営業譲渡することを基本としており、原則を遵守することが最大のモラルハザードの防止につながる。よって、期限終了後に公的ブリッジバンクが存続することのないようにする。
そのためには、営業譲渡を円滑に進めるためのインセンティブ(例えば、従業員の引受けや債権譲渡価格の設定等)を講ずることも検討すべきである。
以 上