1997年12月11日
(社)経済団体連合会
当会では、昨年12月、「透明で持続可能な年金制度の再構築を求める」と題する年金改革の提言をまとめた。そこでは、厚生年金保険の積立方式への移行・民営化など、公的年金改革の方向を示すとともに、企業年金については、その重要性がますます高まりつつあるにもかかわらず、硬直的な制度設計、不合理な税制を強いられていることを指摘し、それら問題の解決のため、企業年金に関する法整備を求めた。
企業年金制度については、その後、「規制緩和推進計画の再改定(1997年3月28日閣議決定)」、1997年度厚生年金基金制度・適格退職年金制度の改正を通じて、規制緩和の努力がなされてきたことは評価するものの、基本的な問題点は解決されていない。そこで、当会では、今回、企業年金制度の抜本改革を求める意見をとりまとめた。
このような時代の要請が高まっているにもかかわらず、現行企業年金制度については、
21世紀の経済社会において、従業員が社会保障としての公的年金と、自助努力による企業年金を支えとして、自由な人生設計と豊かな老後を手に入れるためには、現行制度の抜本的改革が必要である。その際の基本的な考え方は、次の3点と考える。
我々が目指す21世紀の企業年金の枠組み『新退職年金制度(仮称)』は、次の通りである。
労使の合意に基づく自由な制度設計
年金で受け取るか、一時金で受け取るかは、従業員一人一人が選択できるものとし、給付水準・基礎率等の設定についても、労使の合意に基づき合理的で自由な設定を認める。その際、厚生年金基金の代行部分については返上を選択できるものとする。また、制度設計に関する選択の幅を広げるために、米国の401(K)プランに代表される確定拠出型企業年金制度を導入する。こうした自由な制度設計は、企業年金の充実、ひいては豊かな長寿社会の実現につながる。
自由化の前提としての受給権の確保
積立金の外部拠出、従業員への情報開示、積立基準のクリア(確定給付型のみ)、受託者責任の明確化等により、受給権は十分に確保されるものと考える。従って、企業年金はあくまで私的年金との認識に立つならば、支払保証制度は不要であるばかりか、企業年金の運営は自己責任原則に立つということが忘れられ、モラル・ハザード、不合理な企業間の所得移転という弊害をもたらす。
共通の税制と退職年金への支援
制度設計の違いによる税制措置の違いを解消するとともに、退職後所得確保のための自助努力を促すとの観点から、拠出時、積立時は非課税とし、受給時課税に一本化し、特別法人税は改革の実現を待つことなく即刻撤廃する。また、企業の積立努力を促すため、弾力的な拠出を認めるような税制措置を講じる。
ポータビリティの確保
経済構造の変化の中で、企業年金のポータビリティの確保が重要となってくる。ポータビリティの確保のためには、退職時に一時払いで受け取った積立金を「個人勘定(仮称)」に繰り入れることとし、課税の繰り延べ措置(ロールオーバー)を講ずるものとする。
上述の『新退職年金制度(仮称)』は、既存の厚生年金基金制度、適格退職年金制度、退職一時金制度等の受け皿になるものと考えられる。1999年度年金制度改革においては、既存の企業年金制度の手直しにとどまらず、ここに提言した『新退職年金制度(仮称)』を裏付けるような、必要最低限の共通ルールと税制上の支援策のための法整備を行うべきである。
以 上