1997年10月21日
(社)経済団体連合会
財政構造改革の下、規制緩和は経済活性化の重要な方策である。とりわけ、経団連が、規制撤廃・緩和の一環として求めてきた借地借家法の改正は、土地・住宅の需要を掘り起こし、大きな経済効果をもたらすものと期待されている。これにより、ライフステージに合わせた住み替え需要を満たす家族向けの良質な借家や、多様なニーズに対応する事業用建物を大量に供給することになり、賃貸人と賃借人の双方にとって極めてメリットが大きいと考えられる。
経団連では、1995年10月に定期借家権の創設、正当事由の見直し、並びに定期借地権の期間短縮を要望したところであるが、議員立法に向けた動きがみられる中、改めて、自己責任原則と契約自由の原則を尊重した下記の借地借家法の改正を求めるものである。なお、法改正は、新規の契約に適用することとし、既存の契約に影響を及ぼさないものとすべきである。
現行法の借家契約の正当事由制度は、戦中の賃借人保護の枠組みを残しており、賃貸人の権利保全が明確でないことから、借家の貸し渋りの要因となっている。
賃借人の多様なニーズを満たす借家の供給を増やすためには、契約で定めた期間の満了により借家関係が自動的に消滅する定期借家権の創設が早急に必要である。なお、その創設に当たっては、存続期間、建物の用途、面積、地域などによる適用範囲の限定はすべきではない。
現行の正当事由の規定は抽象的であり、賃貸人と賃借人の双方にとって予測可能性を害している。当事者の合理的判断の基準を明確にするため、例えば借家については、賃貸人による自己使用またはそれに準ずる使用の必要性がある場合、賃貸人による建物売却の必要性がある場合、賃借人に反復的賃料不払いや使用目的の違反がある場合等を正当事由として具体的に列挙し、更新の拒絶または解約ができるようにすべきである。
また、市街地再開発事業、土地区画整理事業等の都市計画事業による権利変換、または、換地により、立地条件・構造等の理由から借家関係を継続することが困難と認められる場合を正当事由に追加すべきである。
なお、正当事由の適用除外となる期限付建物賃貸借の現行要件を拡大し、次の場合も認めるべきである。
非居住用建物の賃貸借については、賃貸人、賃借人とも営業活動を行う経済主体であることから、正当事由がなくとも更新の拒絶または解約の申し入れができるものとすべきである。
現行法では、事業用の定期借地権の存続期間が10年以上20年以下であるのに対し、居住用の定期借地権の最短期間は50年と長く、現実のニーズに合わない。また、建物譲渡特約付借地権は最短期間が30年とされているが、現行法において認められている借地期間終了後も、この借地上の建物にかかる借家権は当然には消滅せず、事実上、土地が戻らないことが懸念され、利用が進んでいない。したがって、定期借地権の最短期間を30年に短縮すべきである。
以 上