コーポレート・ガバナンスのあり方に関する緊急提言
1997年9月16日
(社)経済団体連合会
わが国のコーポレート・ガバナンスのあり方が、各方面で様々に議論されている。メガ・コンペティションの時代にあって、日本企業が21世紀に向けて引き続き国際競争力を維持・強化していくために、グローバル・スタンダードに対応したコーポレート・ガバナンスが求められている。
企業は、平素より、経営効率の向上、株主重視の方針の実践に努めているところであるが、加えて、企業倫理の確立と経営の健全性確保という見地から実効性あるコーポレート・ガバナンスの実現が望まれている。この観点から、会社機関のあり方や相互牽制関係、経営のチェックの仕組み等の検討が必要となっている。かかる問題は、既に企業において適切に対応されている例もみられるように、現行法制度の下で、自主的に対応・改革していくことも可能である。
しかし、経団連では、昨今の企業不祥事を真剣に受け止め、コーポレート・ガバナンスの当面の対策と指針について、わが国の商法の体系とこれまでの商法改正の経緯を踏まえ、下記の監査機能の強化と株主代表訴訟制度の見直し等を提言する。
記
- 監査役(会)機能の強化を中心にした監査体制の強化
過去の商法改正により、わが国の監査役(会)の権限は強化されてきている。しかし、取締役会からの監査役(会)の独立性・地位の安定性が確保されていないことから、充分に機能しているとは言いがたい状況にある。そこで、原則として公開会社(上場会社、店頭登録会社)を対象とする以下の改善を行う必要がある。
- 社外監査役の要件の厳格化
現行法上「就任前5年間会社またはその子会社の取締役又は支配人その他の使用人でなかった者」とされる社外監査役の要件を厳格化し、過去に会社またはその子会社の取締役又は支配人その他の使用人でなかった者とする。
- 社外監査役の法定員数の増員
現行法上1人以上とされている社外監査役の員数を選任時に全監査役の半数以上とする。
- 監査役の選任議案に対する監査役会の同意
監査役の選任議案の株主総会への提出について、監査役会の同意を経て、取締役会が株主総会に提案することとする。
- 監査役が任期途中に辞任した場合の説明義務
監査役が任期の途中で辞任する場合には、その理由について、監査役会が株主総会で説明する義務を負うものとする。
- 更に、会計士監査の充実のため以下の措置を講じることが望ましい。
- 監査役監査との連携強化
- 監査法人内の関与社員の交替
- 他の会計士による監査の事後的審査
- 株主代表訴訟制度の見直し
株主代表訴訟制度は、1993年の商法改正の際、訴訟手数料の改定(実質的な引き下げ)が行われたが、1950年の導入以来、制度全体の検討が行われてこなかったため、現在、制度の不備が顕在化している。そこで、以下の見直しを行う必要がある。
- 原告適格の見直し
- 訴訟の原因となる行為の時点で株式を保有していた者とする。
- その他の適格要件については今後の検討課題とする。
- 会社の被告取締役への訴訟参加・訴訟支援の容認
会社(株主全体)の判断を株主代表訴訟に反映させる観点から、監査役会が全会一致で認めた場合には、会社の被告取締役への訴訟参加・支援を認める。また、全会一致による監査役会の申立に基づき裁判所が訴訟を却下できるよう制度整備を行う。これに伴い、株主からの提訴請求後の熟慮期間を30日から60日に延長する。
- 取締役の損害賠償責任
取締役の会社に対する損害賠償責任につき、定款で責任額の上限を規定できるようにする。また、総会の特別決議によって個々の案件について責任を免除・軽減できるようにする(監査役全員の承認を得て、監査役会が総会に提案)。
- 経営判断の原則の規定への明記
米国で導入されている経営判断の原則を法律の規定に明記する。
- その他
上記の他、勝訴取締役の訴訟費用の会社負担、和解、及び取締役の責任の時効・相続に関しても法改正が検討されるべきである。
- 企業の自主的対応
- 各社で企業行動指針を策定し、その徹底に努める。
- 取締役会を活性化するための方策を検討する。
- 監査役の求めにより主要役員会への出席を認める。
- 今後の課題
経団連では、引き続き、以下について検討を行う。
- 取締役会のあり方
- 株主総会の見直し
- その他
経営における他のステークホルダース相互と株主の位置付け、およびディスクロージャー充実の方策等について
以 上
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