1997年7月22日
(社)経済団体連合会
森林の有する国土保全や水資源のかん養、地球温暖化の防止等の公益的機能への認識が高まっている現在、森林整備は国民的な課題である。とりわけ国有林は、国民の共通財産として位置づけ、基本的に、国が責任をもって管理運営すべきである。
国有林野事業については、昭和50年度に赤字に転落して以来、財政投融資資金からの借入れで経費を賄なってきた。その間、4次にわたる「国有林野事業の改善に関する計画」を策定して経営改善に努めてきたものの、改善の目処は一向に立っておらず、平成7年度末の債務残高は3兆3千億円にのぼっている。このような状況のなか、今般、林政審議会は、森林の受益者を特定して森林整備費用の負担を求める内容の中間報告をとりまとめた。
そもそも、森林による様々な恩恵は、広く国民一般が享受しており受益の範囲は限定できない。したがって、国有林の整備に係る費用は、国民が広く薄く負担していくべきであり、維持・管理費用の徹底した合理化を前提として、基本的に一般財源で賄うべきである。
その意味で、本来多岐にわたる森林の公益的機能の一部のみに着目し、受益者を特定して、流域単位に負担を求める「基金」を造成したり、新しい税等を創設することは不合理と言わざるを得ない。財政構造改革や経済構造改革への取組みが行われている最中に、財源不足を理由として、新税や負担金を創設し、国民負担率を高めることは許されない。
工業用水並びに発電用水の利水者は、既に取水量等に応じて、流水占用料として応分の費用を負担しており、また、産業界は森林整備対策等として、これまでにも「緑と水の森林基金」(造成額180億円)や「河川整備基金」(造成額274億円)をはじめとした各種基金の造成にも相当程度協力してきた。新税や新たな負担金等の創設により、これ以上の負担を産業界に課すことは、受益と負担の公平性を欠くばかりでなく、先進国のなかで突出した高水準の法人課税を強いられているわが国企業の国際競争力を一層損なわせることになり、絶対に認められない。
以 上