世代を越えて持続可能な社会保障制度を目指して
〜社会保障制度改革のビジョン〜
(概要)
1996年12月17日
(社)経済団体連合会
高齢化、国際化および価値観の多様化が進む中で、21世紀に向け豊かで活力あ
る経済社会を実現するためには、行政改革、財政構造改革などと並んで、社会保
障制度の抜本的な改革に早急に着手する必要があると考える。
経団連では、社会保障制度改革の基本方向と、それに基づく医療保障制度改革
、高齢者介護制度のあり方、年金制度改革について、下記の通り意見をまとめた。
記
- 社会保障制度改革の基本方向
(「世代を越えて持続可能な社会保障制度を目指して」参照)
これまでの総花的、画一的な制度を改め、自立・自助を前提に、国民全体で高齢化に伴う負担を分かち合う、効率的で公平かつ多様な選択肢を持った、経済的に持続可能な社会保障制度を目指すべきと考える。政府としても、社会保障制度改革の総合ビジョンを早急に示していただきたい。
- 医療保障制度改革、高齢者介護制度のあり方
(「国民の信頼が得られる医療保障制度の再構築」参照)
- 介護制度と医療改革の一体審議
高齢者介護制度の創設については、関連する医療保険改革、特に老人保健制度の改革と一体のものとして議論していただきたい。介護保険法案を医療改革と切り離して単独で審議することには反対である。
- 医療保険改革の断行
医療保険改革は、行政改革の試金石と考える。被用者保険の自己負担を2割に引き上げ、高齢者の自己負担を定率化(1割)するともに、医療の分野にも競争原理を導入し、医療費の効率化を図るべきである。
- 高齢者医療、介護の財源の再検討
高齢者の医療、介護とも、リスク・シェアを目的とする社会保険方式には馴染まない。両制度の財源については、世代間扶助の考え方から公費方式を基本に見直すとともに、老人保健拠出金を撤廃していただきたい。
- 医療・介護分野における民間企業の参入促進
医療・介護の分野においても、企業による病院経営、介護施設サービスなど民間企業の参入を認めることにより、民間活力の活用、サービスの効率化を図るべきである。
- 年金制度改革
(「透明で持続可能な年金制度の再構築を求める」参照)
- 財政再計算の早期見直し
1994年財政再計算の基礎率(出生率、標準報酬上昇率、運用利回り等)と実績は乖離しつつあり、公的年金制度の継続可能性について懸念が増している。1999年を待つことなく早急に財政再計算の見直しに着手し、年金情報の開示を進めるべきである。
- 公的年金の改革
基礎年金の目的を高齢者にとって必要最低限の生活を保障することとし、その財源を賦課方式とする(高額所得者には給付しない)。また、報酬比例部分の目的を現役時代の生活水準の一定割合を確保することとし、その財源を完全積立方式(物価スライド等の排除)とすべきと考える。
- 企業年金等の改革
特別法人税を撤廃するとともに、適格年金における資産運用規制の撤廃・緩和、予定利率の一律規制の見直し、給付設計の弾力化に早急に着手していただきたい。
また、厚生年金基金と適格年金を包括する「企業年金法(仮称)」を制定するとともに、企業年金のポータビリティの確保、自助努力に基づく個人年金の普及を広く支援していただきたい。
以 上
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