日米関係の強化に向けた5つの重要課題

1997年4月15日
(社)経済団体連合会


経団連では、昨年、2020年の日本のあるべき姿を示した「魅力ある日本―創造への責任」を公表した。その中で、若者が未来に希望を持ち、世界の人々が日本に住んでみたい、ビジネスをしたい、あるいは学んでみたいと思うような「活力あるグローバル国家」の構築を提唱した。これを実現するためには、日本は、自らの経済社会をさらに自由、公正かつ透明性の高いものに変革し、かつ、国際社会の一員としての責務を積極的に果たしていくことが必要不可欠である。

「活力あるグローバル国家」構築のための前提である市場経済の発展や国際社会の安定は、これまで主として米国のリーダーシップによってもたらされた。米国には、今後ともそうした役割を期待したい。しかし、冷戦終焉後、世界の政治、経済情勢が目まぐるしく変化する中で、今後は日本も米国と共に国際的責務の一翼を担っていくことが求められる。

日本と米国は、国の成り立ちや風土、国民性を異にしながらも、戦後半世紀にわたり、日米安保条約を基礎に相互依存、相互信頼関係を深めてきた。今日では、両国は、政治、経済、文化など様々な分野で、目的、利害、価値を共有しうる側面が多くなっている。たとえば経済面での日米の相互依存は、アメリカ委員会が取りまとめた「日米経済ハンドブック」に明らかなように、着実に強まっている。

しかし、ここ数年来の日米関係は、ややもすると対立点や相違点に焦点が当てられ相互の信頼感が揺らいだり、あるいは互いの関心が相対的に低くなる傾向にある。むしろ、今こそ日米がこれまで培ってきた互恵的な側面を積極的に評価し、世界全体の利益向上に結びつけていかねばならない。

こうした観点から、経団連では、これまで日米関係が両国や世界に果たしてきた意義を踏まえ、日米関係を将来に向けてより一層強化するために重要と考えられる5つの課題を提起したい。

日米関係は、日米の政治家、行政関係者、経済人、報道関係者、学者、学生、NGOなどあらゆるレベルの人々が、相互理解を深め、コミュニケーションのパイプを太くしていく地道な努力の積み重ねによって強化されていくものと信ずる。日米関係に対する問題意識と関係強化の必要性を唱えた本提言が、日米両国政府はじめ日米関係に携わる様々な関係者の理解を得て、日米の信頼の絆を強めるための行動指針となることを望むものである。


日米関係の強化に向けた重要課題

  1. 日本は自らの課題として規制の撤廃・緩和や一層の市場開放に取り組み、日本経済の高コスト構造を速やかに是正すること
  2. 日本は、経済の高コスト構造を是正するため、政治の強いリーダーシップ の下、規制の撤廃・緩和や一層の市場開放に主体的に取り組むことが不可欠である。経済界としても、改革に伴う痛みを自ら受け入れ、その早期実現に努力する。

  3. 日米がアジアの一層の安定と発展に協力して取り組むこと
  4. 日米関係の強化をはかることが、アジア地域の安定に寄与する。日米両国政府は、アジア問題について率直な対話を進め、協力関係を強化すべきである。経済界同士でもアジアをめぐる意見交換を活発に行う。さらに、日米安全保障体制がアジア地域の安定に果たしている意義をはっきりと認識し、経済界としても議論に参加していく。

  5. 日米が市場経済の維持、発展のために協力して取り組み、世界市場でのビジネス環境を整備すること
  6. 経済のグローバル化が進展している現状を踏まえ、日本は米国とともにWTO等の国際機関の運営やビジネスに関わるルール作りでイニシアティブを発揮し、世界市場でのビジネスの円滑化のための環境整備に努めるべきである。

  7. 経済協力や環境、エネルギー、食糧問題の解決などコモン・アジェンダを推進すること
  8. 日米の政府と民間が連携をとりながら、発展途上国への経済協力や環境、エネルギー、食糧問題の解決など日米間で合意されたコモン・アジェンダの推進に努めることが重要である。経済界としては、問題解決に向け、民間の有する技術・ノウハウを積極的に提供する。

  9. 日米のあらゆるレベルでコミュニケーションのチャネルを強化して、相互理解を深め、信頼関係を確保すること
  10. 日米のあらゆるレベルで常日頃からコミュニケーションのパイプを太くしていくことが、相互理解と信頼関係の強化の基本である。経団連では、米国の関係者との交流ネットワークの強化に努めるとともに、政府に対して、民間交流の推進のための環境整備を働きかける。

『日米関係の強化に向けた5つの重要課題』に関する説明


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