平成8年5月22日

阪神・淡路経済復興シンポジウム・アピール

―自立的で創造的な復興をめざして―

(社)経済団体連合会
(社)関西経済連合会
神戸商工会議所  

阪神・淡路大震災の発生から1年4カ月余りが経過した。この間、国および兵庫県、神戸市はじめ関係機関による並々ならぬ努力により、応急・復旧対策が順調に進んできた。しかし、被災地域の産業経済は、わが国の景気がゆるやかながらも回復に向かうなかで、いまだ立ち直ったとは言い難い状況にある。大震災の記憶は時の経過とともに次第に薄れつつあるが、本格的な経済復興への取り組みは、むしろ非常に重要な局面に入ってきていると思われる。

そこで、われわれは全国的な視点にたって、阪神・淡路地域を21世紀の文明を創造する地域へと復興させることをめざし、本日、題記シンポジウムを開催した。
本シンポジウムでは、経済復興に向けた基本的考え方に関し、次の3点について参加者のコンセンサスが得られた。

  1. 阪神・淡路地域には、各種の構造問題に直面するわが国経済社会のシステム改革を先導する地域として先駆的な役割を担わせるべきである。
  2. 今後の復興にあたっては、住民や民間企業の創意工夫・活力を引き出す規制緩和、および地方自治体の自主的な選択による自立的な再生への取り組みを可能とする地方分権が重要であり、国はその環境整備を行うべきである。
  3. 今回の大震災を歴史的教訓とし、将来発生しうる大規模災害を想定して、災害発生時の応急的な対応にとどまらず、本格的な復興を遂げるための政策フレームを確立すべきである。
経済界としては、(1)阪神・淡路復興委員会が提言した4つの復興特定事業の推進、(2)被災企業の事業再建および内外企業の誘致、(3)ベンチャー企業の育成・支援、(4)大震災により特に厳しい経営環境にある小売業・観光業などサービス産業の復興に向けたキャンペーンの推進、などの面で積極的に被災地を支援していく決意をここに表明する。

国および地方自治体など関係機関においても、あらためて阪神・淡路大震災が投げかけた問題の重大性と複雑性、そしてその解決の緊急性を再認識し、下記の課題について早急に取り組むよう要望したい。

― 記 ―

  1. 経済復興を促す「モデル地区」の創設
  2. 期間および区域を限定して特例的に規制緩和を実施する「モデル地区」の創設を図るべきである。同時に、企業の規制緩和要望を取りまとめるための枠組みづくり、立地・事業コストの低減に資する税制・金融上の優遇、および用地取得費の助成などの措置を講ずべきである。これらの措置により、被災地における民間企業の創意工夫を生かして新産業・新事業の創造を図るとともに、内外のさまざまなタイプの企業を積極的に誘致する。
    また現在、急ピッチで復旧が進められている港湾施設を十二分に活用できるよう、利用コストの低減、サービス水準の向上など利用者ニーズに即した港湾をめざして、神戸港を「モデル地区」の1つに指定し、関連諸規制の緩和および手続きの簡素化を実現すべきである。

  3. 国際物流拠点としての競争力強化
  4. 地域産業の中核的な基盤である神戸港を中心に、大阪湾ベイエリア全体においてアジア・太平洋地域を視野に入れた特色ある国際物流機能を整備するとともに、港湾の整備および運営における効率化・合理化を思い切って推進し、競争力をさらに強化することが必要である。
    そこで、諸外国の事例を参考にしつつ、航空・陸上輸送など他の輸送モードとのネットワークの強化を図るとともに、広域の港湾管理組織を設立し、そこに関連する諸規制・諸手続きを一元的に移管することなどによって、今後の国際化・情報化の進展および物流システムの変化に対応した全国的なモデルとすべきである。

  5. 阪神高速3号神戸線の早期復旧
  6. 産業活動を正常化し、経済復興を着実に進める上で大きな障害となっている市内の交通渋滞を緩和するとともに、被災地の住宅復興・街づくりなどを円滑に進めるため、阪神高速3号神戸線の一刻も早い全線復旧を図るべきである。

  7. 官民一体となった経済復興の推進
  8. 現在、国と兵庫県、神戸市との意見交換の場として定期協議会が開催されているが、今後の経済復興を着実に進めるため、民間人も参加して政策を検討する場を新たに設けるべきである。

以  上

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