今後の情報通信市場のあり方に関する見解
VI.おわりに
- 以上、電気通信ネットワークを中心に現状を俯瞰し、問題点および課題を整理するとともに、今後の望ましい競争の枠組みについて、われわれの見解を明らかにした。冒頭述べたように、高度情報通信ネットワーク社会に向けて、料金・サービス両面でユーザー利便を一層向上させ、国際競争力のある電気通信ネットワークを構築することによって、国民生活の質の向上を図るとともに、産業の国際競争力を強化することを通じて経済の活力の維持・発展を図ることが重要である。このような観点から、われわれは検討にあたって、市場原理に基づく競争を一層促進し、高度で多様なサービスが低廉かつタイムリーに提供され、市場の活性化・拡大につながるような環境を整備することを目的とした。そのためには、Vで述べたように、
- NTT以外の事業者については規制を大幅に緩和・撤廃するとともに、NTTに対しては他事業者より厳しい規制を時限的に課す、いわゆる非対称規制を行う、
- 相互接続の法定・ルール化など競争を促進するための明確なルールを策定する、
- 地域通信市場において競争を促進するための施策を講じる、
- これらによる競争の進展状況ならびにルールの遵守状況を監視し実効を担保する、
など規制緩和を中心とする通信行政の抜本的な見直しが必要であるというのがわれわれの結論である。
- なお、そうした規制緩和を中心とする通信行政の抜本的な見直しに加えて、NTTに対するいわゆる構造的措置が必要との意見もある。
そこで、Vで指摘した措置に加えて、さらにNTTに対して構造的措置を講じる必要性の有無について、
- 公正有効競争条件の確保、
- 地域通信市場における競争の促進、
- 料金・サービスへの影響、
- 通信産業ならびに産業全体の国際競争力への影響、
- 研究開発力への影響、
- NTTの経営管理規模・経営効率化への影響、
などの観点から検討した。また、構造的措置に伴う諸々のコストへの対応、ならびにNTT株主権利の保護(構造的措置を講じる場合、損失防止について商法・税法上の措置を講じること等)についても検討した。その結果、構造的措置が問題解決の一つの手段として有効であるという意見と、構造的措置は不要であり、かえって弊害が多いとする意見があった。
- いずれにしても、規制緩和を中心とする通信行政の抜本的な見直しを可及的速やかに、かつ確実に実行することが緊要である。その際、実行を担保するために、それら一連の措置の実行スケジュールを明確にするとともに、進捗状況を定期的に公表することが必要である。
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