今後の情報通信市場のあり方に関する考え方(中間的整理)
1995年9月28日
社団法人 経済団体連合会
電気通信問題ワーキング・グループ
1.問題意識・基本的考え方
- 産業の国際競争力の強化等による経済の活力の維持・発展、国民生活の質の向上が課題。
- これら課題を解決する有効な方策の一つは情報通信の最大限の活用。
- 情報通信の活用にあたって、料金・サービス両面での一層の利便の向上が必要。それに応えるためには、市場原理に基づく競争の一層の促進による高度で多様なサービスの低廉かつタイムリーな提供、市場の活性化・拡大のための環境整備が重要。
- ワーキング・グループとしては、情報通信ネットワーク、なかんずく電気通信ネットワークをめぐる課題に焦点。
- 基本的な考え方として、
- 公正有効競争が実質的に確保される枠組みの構築、
- 国際競争力のある電気通信ネットワークの構築、
- 高度情報通信ネットワーク社会の実現に向け、情報通信の利用を一層促進するようなネットワークの構築、
が重要。
2.国内通信市場の現状と課題
1.現状と問題点
- 85年の改革の結果、多数の事業者が新規参入、料金の低廉化が進展。
- 他方、米国等と比べると料金・サービスの多様化は進展しておらず。料金の低廉化も十分にあらず。
- その結果、市場の活性化・拡大は不十分。
2.課題
- 公正有効競争条件の整備
- 地域通信市場における競争の促進
- 規制の撤廃・緩和、行政裁量の排除、競争促進のためのルール作り
3.グローバル競争の現状と課題
1.現状と問題点
- 国際的な事業者間の連携等において、わが国通信事業者は中核的な位置を占めるに至っておらず。
- 外国通信事業者のわが国国内通信市場への積極的な進出の可能性あり。わが国通信事業者の海外市場展開は欧米事業者と比べ立ち遅れ。
- わが国通信事業者・通信機器メーカー等はデファクト標準については主導性を発揮するに至っておらず。
2.課題
- 国内市場における競争の促進を通じた国際競争力の強化
- (1) 欧米並みの国際通信事業・海外市場展開、(2) 外国通信事業者のわが国市場におけるより自由な事業展開、のための環境整備
- 1,2項を通じたわが国産業立地環境の改善、アジア地域におけるハブ化
- デファクト標準を含む国際標準化で主導性を発揮するための研究開発の国際戦略化
4.高度情報通信ネットワーク社会に向けた現状と課題
1.現状と問題点
- コンピュータ・ネットワークの利用が進展。
- インターネットの特徴はオープン性。その上で多様なアプリケーションが自由に展開。
- コンピュータ・ネットワークの発展は、電気通信ネットワークに発想の転換を要求。ネットワークに対する期待は一層高度化。
- コンピュータ・ネットワークの一層の高度利用にあたっては、高い通信料金等の問題あり。
- 高度情報通信ネットワーク社会に対応したネットワーク・インフラの高度化が必要。
2.課題
- 自由かつ低廉なアクセス・利用を可能とするネットワークのオープン化、需要促進的な料金水準・体系の実現
- 規制の撤廃・緩和、行政裁量の排除、競争促進のためのルール作り
- アプリケーション、コンテンツ分野における公正競争条件の整備
- 多様な事業者間の連携による新たなアプリケーションの開発、ネットワーク・インフラの高度化のための投資と研究開発
- 公共分野の情報化・ネットワーク利用、情報通信の利用を想定していない諸制度の抜本的な見直し
5.今後の情報通信市場のあり方−競争の枠組み
- 急速な技術革新に伴う通信事業者とユーザー間のダイナミックな相互作用で市場が活性化・拡大。
- それを制約しないよう「原則自由、例外規制」が政策の基本。
- 市場動向に合わせ、枠組みの不断の見直しが必要。
1.公正有効競争条件の整備
- 内部相互補助の防止、情報流用の防止、情報の開示の速やかな法定・ルール化
- 相互接続の義務づけを含めた法定・ルール化
- 相互接続に必要な基本的な機能の明確化、当該機能の準備コストのNTTによる負担
2.地域通信市場における競争の促進
- 技術革新による競争促進の可能性の拡大
- 代替手段の発展の促進、サービス競争の促進
- ユニバーサル・サービスの範囲ならびにコスト負担のあり方の決定
3.規制の撤廃・緩和、第三者機関の設置
- 規制の撤廃・見直し
- 第三者機関の設置に向けた検討開始
- NTT法の撤廃と代替ルール
- KDD法の撤廃と代替ルール
4.研究開発のあり方
- 情報通信産業の発展、国際競争力の源泉として重要な研究開発
- 主要通信事業者による研究開発開始当初からの内外の事業者・メーカー等との連携、研究開発成果のオープン化・普及の促進
- 新たなアプリケーションの開発に向けた独創的ベンチャー企業の支援の仕組みの充実、ネットワーク・インフラの高度化に向けたエンド・エンド・サービスを提供する通信事業者の主要な役割
- 国公立研究機関・大学が基礎的研究で主要な役割を担うことができるような環境整備。事業に直結した形での実用化研究の推進
※ さらに検討を要すべき事項
- 仮に第5項に掲げた措置をさらに補完する必要があるとした場合、考えられる措置としては以下のものがある。これらについては、さらに検討が必要。
- プライスキャップ制
- 長距離・地域分離
- 長距離・地域分離、地域分割
- 加入者回線の分離、地域分割
- その他
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