[経団連] [意見書]

企業の社会貢献活動実績(1993年度)調査結果

1994年12月13日
社団法人 経済団体連合会

1.「企業の社会貢献活動実績調査」について

経団連は、1991年以来、会員企業ならびに1%クラブ法人会員を対象に 「社会貢献活動実績調査」を行っている。これは、各社から前年度の社会貢献支出額や 社会貢献活動推進のための制度導入などについて質問票に回答していただくものである。
本年は、これらの項目に加え、3年ぶりに各社の社会貢献活動に対する意識や 社内体制整備などについても質問した。調査の枠組みは以下の通りである。

(1) 調査対象
経団連会員企業、1%クラブ法人会員の合計 990社
(2) 担当委員会
社会貢献推進委員会(椎名武雄委員長)
国際文化交流委員会(西尾信一委員長)
(3) 調査目的
企業による社会貢献活動の実態を明らかにし、社会の理解を深めるとともに、 今後の各社の活動に資する。
(4) 調査内容
1993年度の社会貢献活動支出額(国際文化交流を含む)、 その経常利益に対する割合、従業員のボランティア活動支援制度の導入等に加え、 各社の活動事例、社会貢献に関する意識を調査。
(5) 調査時期
1994年7月
(6) 調査方法
質問票を郵送・回収
(7) 回答数
398社(回答率:40.2%)

2.調査結果の概要

(1) 社会貢献活動に関する支出

この調査では、各社の「社会貢献活動支出総額」と、それを構成する「寄付金額」ならびに 「自主プログラムに関する支出額(各社が自ら実施する社会貢献プログラムへの支出額)」 について質問している。回答結果は以下の通りである。

1. 社会貢献活動支出総額

93年度の企業の社会貢献活動支出総額は、1,494億円(369社) となり、今次不況の「底」の年であったが、 1社平均の社会貢献活動支出額は4億500万円と4億円台を保った。

90年度91年度92年度93年度
総 額1,113億円
(254社)
1,838億円
(350社)
1,670億円
(381社)
1,494億円
(369社)
1社平均
対前年度伸び率
4億3,800万円
──
5億2,500万円
19.9%増
4億3,800万円
16.6%減
4億500万円
7.5%減

2. 寄付金

93年度の1社平均の寄付金額は、2億9,300万円(366社) となり、 92年度の 3億1,800万円(380社) に比べ、2,500万円減少(7.9%減) した。

90年度91年度92年度93年度
総 額927億円
(253社)
1,307億円
(346社)
1,207億円
(380社)
1,074億円
(366社)
1社平均
対前年度伸び率
3億6,600万円
──
3億7,800万円
3.3%増
3億1,800万円
15.9%減
2億9,300万円
7.9%減
うち免税額623億円
(191社)
1,176億円
(332社)
965億円
(363社)
873億円
(340社)
1社平均
対前年度伸び率
3億2,600万円
──
3億5,400万円
8.5%増
2億6,600万円
24.9%減
2億5,700万円
3.4%減

3. 自主プログラムに関する支出

93年度の自主プログラム支出の1社平均は 1億1,500万円(365社) となり、 92年度の 1億4,100万円(329社) に比べ、2,600万円減少した。

90年度91年度92年度93年度
総 額185億円
(111社)
531億円
(224社)
463億円
(329社)
420億円
(365社)
1社平均
対前年度伸び率
1億6,700万円
──
2億3,700万円
41.9%増
1億4,100万円
40.5%減
1億1,500万円
18.4%減

4. 社会貢献活動支出が企業利益等に占める比率

93年度は、厳しい不況の「底」にあたる年であり、企業収益が大きく減少したが、 回答各企業は社会貢献活動支出をできるだけ維持しようと努めたため、 経常利益等に占める支出の比率が上昇した。

社会貢献活動支出の売上高、経常利益、税引前利益に占める比率(単純平均)
90年度91年度92年度93年度
売上高比0.10%(176社)0.12%(312社)0.15%(327社)0.21%(321社)
経常利益比1.72%(182社)2.67%(295社)2.86%(343社)3.47%(315社)
税引前利益比1.78%(176社)2.92%(285社)3.24%(330社)4.25%(310社)

5. 寄付金支出の分野別割合

93年度の寄付金支出の分野別割合は以下の通りである(単純平均)。
318社の回答のなかで支出割合が高いのは、学術研究(16.6%)、地域社会の活動(13.9%)、 教育(13.3%) などとなっている。

項 目支出割合
社会福祉7.2%
健康・医学6.7%
スポーツ6.8%
学術研究16.6%
教  育13.3%
芸術・文化8.8%
環境保全5.6%
史跡・伝統文化保存1.9%
地域社会の活動13.9%
国際交流・協力8.2%
災害救援1.1%
その他9.6%

(2) 社会貢献活動推進のために新規に導入された制度

93年度に社会貢献活動推進のための制度を新規導入した企業は46社(54件) となり、92年度の45社(61件) に比べ1社増加した。とくに各種休職・休暇制度(26件)、マッチング・ギフト(9件) などの導入が顕著であり、企業は従業員の社会貢献活動支援制度の拡充に力をいれている。
また、これまで4年間の合計では 214件の制度導入が行われており、その内訳は、 各種休職・休暇制度(119件) 、マッチング・ギフト(30件) などである。

社会貢献活動推進のための制度の新規導入企業数
90年度
以前
91年度92年度93年度合 計
新規制度の導入企業数 42社35社45社46社168社
(内訳・件数)
ボランティア休職制度 4件9件16件12件41件
青年海外協力隊参加休職制度 11件9件10件5件35件
ボランティア休暇制度 1件11件12件7件31件
地域活動奨励休暇制度 5件2件3件2件12件
ボランティア活動者表彰制度 10件3件6件2件21件
地域貢献活動運動 1件2件0件1件4件
社会貢献委員会の設置 1件1件0件0件2件
マッチング・ギフト制度 9件6件6件9件30件
金額換算ルールの設定 1件2件0件0件3件
その他 9件2件8件16件35件
合 計 52件47件61件54件214件

(3) 社会貢献活動に対する意識と社内体制の整備

  1. 社会貢献に取り組む理由としては、「社会の一員としての責任(85.9%)」を挙げる会社が最も多く、「会社のイメージアップ(38.9%)」、「利益の社会還元(36.6%)」がこれに続く。「社会一般に対し広くパイプを開く(27.1%)」ことを理由とする会社も多い。
  2. 社会貢献を推進するための専門部署を設けているとする回答が増加した (90年度:62社→93年度:91社)。また、社会貢献活動支出を年間予算として計上する企業も増加した (90年度:28社→93年度:54社)。社内体制整備が進みつつある。
  3. 社員のボランティア活動の支援については、55.5%の企業が積極的な姿勢を示している。
  4. いわゆる法人格のない「草の根」市民活動グループへの支援については、64.2%の企業が重要性を認めている。
  5. 寄付金税制については、「免税枠の不足(33.5%)」、「草の根団体への寄付が免税とならない(18.4%)」、ことなどが問題点として指摘されている。

(4) 各社の代表的活動事例報告

93年度は総数 1,813件の活動事例が寄せられた。これは4年前に比べて286件増加しており、 教育(196件)、地域社会の活動(194件)、芸術・文化(192件)、社会福祉(184件) などが多い。 また、全体の 85%が国内事例であり、海外の事例は 15%と少ない。
国内の事例の比率は4年前に比べて5%ポイント上昇しており、地域社会の活動(179件)、 芸術・文化(162件)、社会福祉(159件) などが多い。海外の事例では、教育(53件)、 国際交流・協力(47件) などが多い。


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