主要経済国ビジネス・フォーラム(MEBF:the Major Economies Business Forum)#1 は、12月15日、コペンハーゲンにおいて、COP15における交渉の現状を評価するとともに、主要経済国フォーラム(MEF:the Major Economies Forum)の交渉プロセスがいかに国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の交渉プロセスを補完し得るかについて意見交換し、MEFやUNFCCCの交渉プロセスにおけるMEBFにとっての優先課題を議論するため、会合を開催した。
国連気候変動枠組条約の下におけるポスト京都議定書の協定は、緩和、適応、技術、資金の分野における国際的な協調行動のための明確な枠組を与えるものでなければならない。また、気候変動のリスクに関する科学的な理解と整合的であるとともに、すべての国の共通だが差異ある責任とそれぞれの能力という原則に則った共有の長期ビジョンをベースとするものでなければならない。
ポスト京都議定書の協定は、すべての主要経済国を包含し、経済成長とエネルギー安全保障のための技術革新や投資を促進し、経済界の資源やコミットメントが最大限活用される仕組みを提供するものでなければならない。われわれは、気候変動に対し緩和・適応するための、このような協定の構築に向けた継続的な努力を支持する。新しい協定により、経済発展や経済の競争力、産業における競争条件の公平性を促進することが確保されることに、われわれは強い関心を有している。
われわれは、コペンハーゲンにおいて達する合意が、以上の点について交渉を前進させる土台を形成するであろうと考えている。経済界は、迅速な行動の開始、および、適応、緩和、技術、資金といった進展が必要な優先分野でのさらなる取り組み、の両面において、成功の鍵となる役割を担う。気候変動への対応は、数十年に亘る努力を要するため、短期・長期両方の行動に対する枠組を注意深く整備することが重要である。柔軟で、かつ、経済界による長期の貢献を極大化させるような枠組が望まれる。
MEBFは、よりコスト効率に優れ現実的で持続可能な解決策であるイノベーションや生産を拡大するためには、経済の健全性を回復させることが不可欠であることに合意した。したがって、現在進行中の気候変動交渉では、グローバルな市場、貿易、投資の中での実行可能性を踏まえ、可能な限り早期に、クリアで予見可能な目標と協調行動がさらに明確化されコミットされるべきである。また、MEFにおいては、引き続き、主要経済国がより広範な国際プロセスに対し付加価値を生み出すことができるよう、測定・報告・検証(MRV)や技術、官民連携を優先事項として位置付けるべきである。われわれは、ポスト京都議定書に関する交渉プロセスの進展に対応して、対話を継続し、以下の優先事項に関する提言をさらに精緻化させ、これをMEF加盟国および国連気候変動枠組条約(UNFCCC)と共有していくことで合意した。
ポスト京都議定書の枠組においてコスト効率に優れた解決策を提示する上で、開かれた市場と貿易は不可欠である。規制の枠組と柔軟なメカニズムは、資源の最適配分を実現し、ビジネスや消費者にとって適切なインセンティブを高めるため、相互に効率的に機能しなければならない。とりわけクリーン開発メカニズム(CDM)は、民間部門によるさらに広範な活用に向け、改善・簡素化していく必要がある。短期的には、グローバルな温室効果ガス市場が誕生することはないであろうが、温室効果ガス市場を導入している地域においては、それらの地域市場は、拡大とリンクを促進するため簡素で改善されたものとすべきである。明確かつ共通のルールと透明性を維持しつつ、既存のメカニズムや将来のメカニズムを巻き込んだ、可能性として考えられる移行に対処していくことが必要である。
商取引と投資のほとんどは、UNFCCCの枠外で確立された市場経路を通じて行われている。今後、炭素に関する規制の強化と温室効果ガス市場の拡大の双方が進むことに伴い、民間部門の投資とイノベーションを支援する枠組が成功の鍵を握ることとなる。また、商取引と温室効果ガス市場の相乗効果を特定し強化すべきである。
可能な限り効率的に、公的・民間両部門からの資金の流れを拡大したり、レバレッジを利かせたりすべきである。多くの場合において、公的資金の最も効果的な活用方法は、民間部門の行動を可能ならしめたり、民間部門の活動に伴う何らかのリスクを抑制したりすることである。民間部門と公的部門の資金を最適化するため、透明性、簡素性、予見可能性、さらに強力かつ説明責任を果たせる機関が求められる。この原則は、国・地域・国際すべてのレベルでのアプローチに適用されるものである。
エネルギー効率、および、緩和・適応双方に必要な規模に十分焦点を当てながら、既存技術や先進技術の研究・イノベーション・投資・普及を刺激することは、公的部門と民間部門が連携しなければできないチャレンジである。技術移転メカニズムは、企業間のビジネス取引と調和したものでなければならず、官僚的な諸手続を上乗せするようなものであってはならない。われわれは、MEFメンバーをはじめとする国々のためのクリーン・エネルギー閣僚級会合を、来年ワシントンDCにおいて開催しようというイニシアティブを歓迎するとともに、同会合への参加を希望する。
気候変動の全ての分野で必要とされる広範な技術の研究・開発・普及への企業の投資や技術パートナーシップへの参加を促進するうえで、知的財産権の保護は不可欠である。知的財産権の保護が弱体化すれば、新しい技術を創造し、市場に供給するための企業の投資インセンティブを脅かされかねない。
例えば、適切な規制の枠組の導入、公的インフラの整備、新世代の科学者・エンジニアへの教育などを通じて、すべての国において温暖化対策に必要な能力を養成することが、先進技術を開発・普及させていく上で不可欠である。この点に関し、アジア太平洋パートナーシップ(APP)における連携において見られるように、地域センターは双方向のコミュニケーションを促進することに非常に重要な役割を果たし得る。経済界としては、こうした新たな協調的アプローチの明確化を支援し、積極的に参加していく用意がある。
ポスト京都議定書の協定の実効性と主要経済国による実施は、緩和に向けた戦略と資金計画の進捗に対する監視・報告・検証を、いかに強力なものとするかにかかっている。経済界は、温室効果ガスと財務報告に関する長年の経験に基づき、そのための適切な手法の明確化と実行のための協力を行う用意がある。