日本経団連では、昨年6月に「新型インフルエンザ対策に関する提言」を公表するとともに、政府の行動計画や各種ガイドライン策定にあたり、経済界の意見反映に努めてきた。また、業界横断的に経済界の対策のあり方を探るべく、国民生活委員会内にライフライン関連を中心とする業界からなる検討会を設置し、各業界の対策や課題点について情報共有する場を設け、意見交換を行っているところである。
こうした取り組みに加え、今般の新型インフルエンザ(A/H1N1)発生を踏まえ、感染予防・感染拡大防止と社会機能の維持に向けさらに実効性のある対策を推進するために、各企業の新型インフルエンザ対策 (*) の現状や対策を進める上での課題等についてアンケート調査を実施した。
本年6月に、日本経団連会員企業および東京経営者協会会員企業(計2025社)に対して実施した「2009年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」の中で、新型インフルエンザ対策に関するアンケートを行った(454社より回答。詳細結果については別添資料ご参照)。
現在実施中の対策(複数回答)(参考資料P.3)
現在実施中の対策の上位は、「マスクや手袋など衛生用品・食糧の備蓄」(83.3%)、「新型インフルエンザ関連の情報収集・連絡体制の整備」(81.9%)、「職場における感染予防策・感染拡大防止策の策定」(79.3%)であった。
今後1年間で重点的に取り組む予定の対策(複数回答)(参考資料P.4)
今後1年以内に重点的に取り組む対策として、「継続業務の絞込み・業務継続体制の整備」(46.0%)、「発生時対応訓練の実施」(27.3%)をあげる企業が多かった。
感染予防や拡大防止に向けた社内マニュアルの有無(参考資料P.5)
6月1日時点で60.1%の企業が社内マニュアルを整備しており、2009年9月末までに整備する予定の企業を含めると7割以上の企業で取り組んでいる。
新型インフルエンザ流行時の事業継続計画の有無(参考資料P.6〜8)
6月1日時点で32.1%の企業が事業継続計画を整備しており、2009年9月末までに整備する予定の企業を含めると約5割の企業が取り組んでいる。この中で、「電気・ガス・熱供給・水道業」(66.7%)、「金融・保険業」(62.1%)、「運輸・通信業」(37.8%)とライフライン関連の業種で取り組みが進んでいる。特に、「電気・ガス・熱供給・水道業」および「金融・保険業」では、回答企業の全てが年度内には整備すると回答し、その必要性への認識が高い。
対策をより良いものとする上で重要な事項(3つ選択)(参考資料P.9〜11)
各社の新型インフルエンザ対策をより良いものとする(あるいは対策に着手する)上で重要と考える事項について質問したところ、「政府・自治体の新型インフルエンザ対策についての情報」(50.7%)、「パンデミックワクチンの早期接種のための環境整備」(44.7%)、「抗インフルエンザ・ウイルス薬の国家備蓄の促進」(38.3%)を求める企業が多くみられた。
業務継続計画に未着手の企業が、「企業の新型インフルエンザ対策への支援・助言」を求める一方、対策が進んでいる業種は、ワクチン関連の要望に加え、「他業界・企業の業務継続計画についての情報」や「パンデミック時の法令遵守の考え方の明確化」に対する要望が高いことがわかった。
企業の約8割はすでに何らかの対策に着手しており、新型インフルエンザの感染予防・感染拡大防止策の必要性に対する企業の認識は高い。また、感染防止の社内マニュアルを整備する段階から、発生時における業務継続計画等の策定・整備にも着手する企業が増えていることがわかった。
こうした中、業務継続計画を策定した企業(あるいは策定過程にある企業)においては、より実効性の高いものとすべく、他業界・企業の取り組みや法定点検を始めとする法令遵守の考え方など、より具体的かつ仔細な情報への要望が高まっている。また、これから着手する企業は、新型インフルエンザ対策への支援や助言を求めており、対策の底上げを図るために、一層の情報提供が必要であることがわかった。
日本経団連では、こうした結果を踏まえ、企業間の情報交換や情報提供の機会を積極的に設けていく考えである。また、政府・自治体の新型インフルエンザ対策に関する情報提供を求める意見や、ワクチンの早期接種のための環境整備、抗インフルエンザ・ウイルス薬の備蓄といった医療面での要望が多く寄せられたことから、こうした点での政府・自治体の対策の一層の促進を働きかけていきたい。