2008年2月18日 (社)日本経済団体連合会 情報通信委員会情報化部会 ITガバナンスワーキンググループ |
「個人情報の保護に関する基本方針」(以下「基本方針」という)の一部改正(案)は、昨年6月に国民生活審議会の個人情報保護部会が示した「個人情報保護に関する取りまとめ(意見)」を踏まえ、基本方針に適切な修正を加える内容となっており、われわれはその内容を高く評価する。
個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という)の全面施行からおよそ3年が経過し、個人情報に対する意識が国民に根付きつつある一方、個人情報保護法の「個人情報の活用と保護のバランスを図る」という趣旨が国民に必ずしも正確に理解されていない面があるのも事実である。今般の基本方針見直しを契機に個人情報保護法の正確な理解を一般に広く浸透させ、ひいては個人情報を保有する事業者のより適切な個人情報の取扱い、より効率的な情報管理につなげるために、政府がイニシアチブを執り、基本方針の周知徹底を図ることを強く希望する。
以上の認識の下、本改正(案)について下記のとおり意見を述べる。
あえて「過剰反応」という言葉を用いて、政府としてより積極的に広報・啓発活動に取り組む決意を表明したことは評価に値する。また、国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人等における個人情報の取扱いについて、法律・条例の適切な解釈・運用を明記したことも「過剰反応」抑制に有効な対応であると考えられる。
ただし、一連の「過剰反応」への対応の反動で、個人の権利利益保護が疎かにならないよう注意を払う必要はある。
一方、「個人情報保護に関する取りまとめ(意見)」のX1で指摘しているように、行政機関が行政機関個人保護法を理由に、本来公表するべき公務員の情報を公表しなくなった「官の過剰反応」も散見される。国の行政機関等における個人情報の提供については、必要性が認められる場合は個人情報の公表は可能となっており、情報提供の意義を踏まえた上で、行政機関個人情報保護法の適切な運用が図られるよう、行政運営上の改善に取り組んでいくべきである。
企業活動・個人活動がグローバル化している現状を踏まえれば、国際的な取り組みへの対応は積極的に推進すべきであり、本改正(案)に賛同する。特に、事業をグローバル展開している企業にとっては、OECD・APECでの国境をまたぐプライバシー保護の議論への積極的な関与は、責任範囲の明確化、厳正な個人情報の利活用に資するものであり、極めて重要である。アジア随一の経済大国として議論をリードするくらいの積極的な姿勢で臨まれることを期待する。
一方、当然のことながら、個人情報の解釈や範囲については、それぞれの国や地域、民族や文化等によって差異が生ずる可能性がある点には留意しなければならない。
「個人情報保護に関する取りまとめ(意見)」で指摘している事項につき、個別具体的に反映したことは評価できる。ただし、こういった具体的な記述を盛り込むことは、個人情報保護に真摯に取組む事業者の負担感を増大させることにも繋がりかねないため、運用には十分注意が必要である。特に、「取得元、取得元の種類や…、可能な限り具体的に明記すること」の事項に関しては、「可能な限り」の基準を設定する、「具体的に明記」の記述例を挙げる等、基本方針の表現に工夫を加えることが望ましい。
また、「個人情報保護に関する取りまとめ(意見)」のIV 3) (3)アで指摘しているように、主務大臣の権限を適切に行使するなど、個人情報保護法等の厳格な適用により、悪質な事業者の監督強化を図ることも重要である。
市販名簿等の公開情報の処理方法について具体的に明記しており、分かりやすく、内容も妥当である。事業者にとっては廃棄コストの削減に繋がるものとして、高く評価する。