第２回インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)ミッション報告

２００７年１２月１８日
日本経団連産業第二本部

１．これまでの経緯

国連主催の「第２回世界情報社会サミット(2005年11月於チュニス)」において、現行の民間主導によるインターネット管理体制の維持とあわせて、インターネットをはじめ情報社会の諸課題についての議論を継続するため、国連主催の国際会議を５年間にわたり毎年開催することが決定された。
昨年10月には第1回ＩＧＦがアテネ(ギリシア)にて開催され、マルチステークホルダーによる自由闊達な意見交換が行われ、各国関係者が諸課題について共通理解を深めた。日本経団連はミッションを派遣し、日本産業界の意見表明や、ブロードバンド先進国の立場からの先進事例紹介などを通じ、日本のプレゼンスをアピールした。

２．第２回ＩＧＦ概要

[期間]	2007年11月12日(月)～11月15日(木)
[場所]	リオデジャネイロ（ブラジル）
[参加者数]	約１４００名（１０９カ国の政府、民間、市民社会の代表）
[テーマ]	メインセッションでは下記の５テーマを設定。セッションごとに、パネリストと会場が双方向で自由な意見交換を行い、テーマごとの共通理解を深めた。また、並行して諸団体主催によるワークショップやベストプラクティス・フォーラム等、８４の個別セッションが開催された。

テーマ	主な意見等
重要インターネット資源	運営主体のあり方については、今後さらに検討を重ねるべき。ＩＰアドレスの枯渇問題については、マルチステークホルダーによる国際協力が重要。
アクセス	途上国にとっての最重要テーマであり、インターネット接続ポイント設置等の具体的な国際援助が望まれる。途上国側でアクセス改善のイニシアチブをとる推進母体が必要。極めて貧しい国を支援するためには新たなビジネスモデルと国際協力の枠組みが必要。
開放性	表現の自由、情報の自由な流通は最大限尊重すべき。表現の自由とプライバシー、知的財産権の保護と公開性等のバランスを取ることが重要。
セキュリティ	セキュリティの確保には、法律に頼るばかりでなく、マルチステークホルダーによる国際協力が重要。ＩＳＰが果たすべき役割について議論を深めるべき。
多様性	地域格差の解消や独自文化の保護の観点から多言語化の推進を継続すべき。高齢者や身体障害者への考慮も必要。
議長声明(総括)	ＩＧＦはマルチステークホルダーが対等の立場で議論に参加し、認識を共有するための場として有効に機能し、参加者間の国際協力の飛躍的な進展にも寄与した。

３．経団連の活動

(1) 第２回ＩＧＦに向けた意見の表明

メインセッションの５つのテーマについて、日本産業界としての見解を取りまとめ、ＩＧＦ事務局へ提出(2007年8月)。ＩＧＦ事務局が取りまとめた「統合ペーパー」に日本産業界の見解が数多く反映された(2007年11月)。
情報通信委員会において、ＩＧＦに向けた日本産業界の意見を取りまとめ、提言「官民連携による健全なインターネット社会の発展に向けて」として公表(2007年9月)。
アドバイザリーグループ（準備会合）委員に、加藤国際問題部会長(富士通経営執行役)が再任。会議の方向性を検討する際に、日本経団連の意見を反映。

(2) 日本経団連ミッションの派遣

国内のインターネット関係団体と連携し、国際問題ワーキング・グループの委員等により構成する、総勢１８名のミッションを派遣。
（団長：加藤国際問題部会長、顧問：村上情報化部会長代理）
メインセッション(開放性)において、加藤部会長がパネリストとして参加。
他の関係団体と連携し、２つのワークショップを主催。
- アクセスのワークショップ：
  加藤部会長がモデレーターを務め、議論をリードした。冒頭で森総務審議官が基調演説を行った。また、沼尻団員(NTTコミュニケーションズ)がフロアからの発言を行い、途上国でのインフラ構築における日本の国際貢献をアピールした。
- セキュリティのワークショップ：
  伊藤団員(JPCERT/CC）がモデレーターを務め、山川団員(NTTデータ)がパネリストとして参加。日本経団連の提言を踏まえ、日本の取組みを紹介した。また、ベトナムにおけるセキュリティ向上に向けた具体的な国際連携の足掛かりを築いた。
その他、日本としては開会セッションで、秋草富士通会長、森総務審議官がスピーチ。また、今井ＮＨＫ解説主幹がセキュリティセッションのモデレーターを務め、日本全体としてのプレゼンスが高かった。

４．今後の展望

(1) ＩＧＦについて

ＩＧＦはうまく機能し、新たな国際的協力体制の構築に貢献している。来年以降もマルチステークホルダーによる議論継続の場としての役割を果たすことが期待される。
今回は途上国での開催だったこともあり、第２回世界情報社会サミットで見られた「先進国対途上国」の対立軸が再浮上することが懸念されたが、主催国ブラジルの大臣等から総論的な現体制への注文はあったものの、総じて建設的な議論が行われ、大きな枠組みの変更はないことを確認。しかし、次回の開催国も途上国(インド)であり、特にメインテーマの一つである「重要インターネット資源」に関する議論の行方を注視する必要がある。

(2) 日本経団連について

今回は提言の公表だけでなく、「統合ペーパー」への意見反映、２つのワークショップ主催等を通じて日本のプレゼンスを飛躍的に向上させることができた。次回以降も計画的に事前準備を行い、日本経団連としてより効果的なＩＧＦの関与を継続。また、ICC(国際商業会議所)等の世界の産業界との連携も重要であり、ICCのEBITT(情報通信委員会)への参画等を進める。
今回のワークショップ開催を契機に、ベトナムの政府やNational-CERTと連携し、途上国におけるセキュリティ向上の具体的なアクションに繋げる。

以上

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