[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

地球温暖化問題に関する米国調査報告

2007年7月12日
日本経団連産業第三本部

I.調査の目的

II.日程

2007年6月20日(水)、21日(木)

III.団員

笹之内雅幸 環境安全委員会地球環境部会国際環境戦略WG座長(団長)ほか計6名

IV.訪問先

V.調査概要

1.ポスト京都議定書の枠組

(1) 政府 (White House) の方針

  1. ブッシュ政権は、将来枠組については各国の自主性が反映され易く、また議定書のような批准プロセスを必要としない「作業計画」(Work Plan)の形での活動を気候変動枠組条約の下に推進していくことを考えている
  2. 「作業計画」は、技術開発を見据えることが難しい長期(2050年)とは切り離して考え、各国が中期目標(2025年:必ずしも数値目標は要求せず、実施可能性を重視)を掲げ、セクター別に各国それぞれのやり方で取組むというボトムアップ型を想定。AP6のように、民間企業のCEOクラスの参画を期待。対象セクターとしては、AP6の8セクターに加えてモビリティー、原子力、技術移転、ファイナンス等を想定。
  3. 5月31日のブッシュ大統領提案にある通り、将来枠組に関する主要15カ国(EUは1カ国扱い)での会合を開催(10月または11月を予定。9月のAPEC等の場で詳細アナウンス予定)。会合では米国が想定する上記「作業計画」を含め、どのような選択肢があり得るのか議論する。
  4. その上で一定の方向性が定まれば2008年末を目処にクリティカル・マスを形成し、国連(UNFCCC)の場に持ち込み、2009年のCOP15(於:コペンハーゲン)での妥結を目指す。

(2) 産業界の見解

  1. 全ての対策には国際的なスコープが必要であり、中国等の参加がない限り米国が義務を負うことはできない。この点、ブッシュ大統領提案は中国、インドの参画を促すものであり評価できる。
  2. ブッシュ政権が想定している新たな枠組は、京都議定書の延長ではなく、全く新しいものである。同政権が任期中にどこまで具体的なアクションを起こすことができるか注視している。
  3. セクター別・ボトムアップ型のアプローチという点でAP6のイニシアティブに期待。ただし、予算が少なく活動があまり活発でない点を懸念。

2.排出権取引 (Cap & Trade) について

(1) 政府 (White House) の考え

  1. Cap & Tradeの導入には反対。資金が海外に大量に流出することを懸念。
  2. EUETSについてはトップダウンで開始されたものであり、欧州産業界の中に必ずしも好意的でない見解がある中、いつまで続けられるのか疑問。

(2) 議会の動向

  1. 民主党を中心にCap & Tradeの法制化が議論されている。
  2. しかし、Cap & Tradeを通じて排出量を2020年に1990年の水準にするという強硬派から、Cap & Tradeを導入するとしても原単位水準とすべきという穏健派まで立場がまちまちであり、今のところまとまる目処はたっていない
  3. 民主党はCap & Tradeの法制化を考えているが、具体的なスキームが固まっているわけではなく、また、そもそもの仕組や影響を理解している議員は少ない。実際の制度構築に着手した場合、産業界の中でも利害対立が予想されるため、大統領選挙までにCap & Tradeが法制化される可能性はきわめて低い
  4. 民主党としても大統領選挙前にCap & Tradeを導入して経済にマイナスの影響を与えることは本意ではない。

(3) 産業界の見解

  1. Cap & Tradeは、米国経済に打撃を与える可能性がある、割当方法が不透明、削減につながらない(EUETSの参加者の大半は金融機関)、割当がオークションの場合は事実上の環境税(しかも価格が不安定なためより性質が悪い)といった問題をはらんでおり、大多数の米国企業は導入には反対
  2. 一部の企業がUSCAPのメンバーとなりCap & Tradeの導入に前向きであるが、これらの企業はgrandfatheringによる余剰割当等を狙っている。USCAPは産業界の総意ではい。
以上

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