小泉内閣が推進する政策金融機関改革の一環として、現在の国際協力銀行(JBIC)は、国際金融業務については国内政策金融機関とともに新しい一つの政策金融機関に統合、円借款については国際協力機構(JICA)に統合されることとなった。加えて、ODAを含むわが国海外経済協力全体の戦略性向上に向け、内閣総理大臣主導の司令塔「海外経済協力会議」が新設されることとなった。
日本経団連では、わが国の国際競争力向上や資源・エネルギーの維持・確保のための国際金融業務の必要性、ならびにわが国の重要な外交手段であるODAの戦略的かつ効果的・効率的な実施の必要性について予てより主張してきたが、あらためてわが国の海外経済協力体制について、以下のとおり求めたい。
今回の改革により、内閣総理大臣主導の下、官房長官、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣をメンバーとする司令塔「海外経済協力会議」を新設し、ODAをはじめ、OOF(Other Official Flow:その他公的資金)、さらには民間資金の動員までを視野に入れ、わが国海外経済協力戦略を考える体制となった。
司令塔設置は日本経団連の予てからの主張であり、われわれは今回の改革を高く評価する。同会議が、ODA戦略の枠組み、主要途上国に対する経済協力のあり方、重要プロジェクト等につき、機動的かつ実質的に審議する真の司令塔として機能し続けることを期待したい。
JBICの国際金融部門については、国内政策金融機関(国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫)とともに一つの政策金融機関に統合されることになった。新政策金融機関において国際金融業務の質を確保するためには、国際金融業務の独立性の維持が重要である。以下、独立性維持の具体的内容につき、あらためて指摘したい。
わが国としての旗印が明確となるよう、国際金融部門が引き続き「JBIC」の名称を使用できるようにする。さらに、国際金融部門のトップには、現行のJBIC総裁と同様、独自に対外交渉を行える権限並びに相応の名称を付与する。
国際金融業務と国内金融業務の双方を有する新しい政策金融機関が、WTOの輸出補助金協定違反等の国際的批判を招かぬよう、国際金融部門の業務・会計の独立性を維持する。加えて、現行JBIC同様の資金調達を可能とするために、高いBIS(Bank for International Settlements:国際決済銀行)の自己資本比率の維持を図る。
途上国政府、他の先進国政府機関、国際機関、民間企業等との調整・交渉を行う高度な専門性が維持できるよう、国際金融部門の人材確保・育成に十分な配慮を行う。
円借款、無償資金協力、技術協力の三メニューをあわせ持つ新しいJICAにおいては、海外経済協力会議の方針のもと、国益と国際益のバランスをとりつつ、三メニュー間の連携強化が効率的に行われるよう期待する。
国際金融と円借款は、債権管理やカントリーリスク分析等の観点からも引き続き情報を共有することが重要である。新政策金融機関の国際金融部門と新JICAの円借款部門の間に、確固たる連携が取れるよう工夫する必要がある。