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2005年度日本経団連規制改革要望

−規制改革・民間開放の一層の推進による経済活性化を求める−

2005年6月21日
(社)日本経済団体連合会

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企業の体質強化に向けた不断の努力や構造改革の進展により、日本経済は概ね民需を中心に回復基調を辿っている。経済の持続的な成長をより確かなものとしていくためには、(1)経済活力の源泉である企業の活動や、民間の創意工夫の発揮を制約している様々な規制を徹底的に排除するとともに、(2)「民間でできることは国が行わない」との考え方に立ち、公共サービスについて積極的な民間開放を行なうことが不可欠である。政府は、一層の規制改革・民間開放の推進により、わが国の経済の活力と競争力の強化を図るべきである。

1.市場化テストの本格導入に向けて

市場化テスト(官民競争入札制度)は、「官」が独占してきた公共サービスに初めて本格的な競争原理を導入するものであり、官業・官製市場改革のための重要な制度である。
市場化テストの本格導入の実現により、官に緊張感を与え、官が行っている公共サービスの必要性や効率性を不断に見直していく新たなメカニズムが確立されることなる。その結果、(1)公共サービスの質の向上、(2)公共サービスのコスト削減、(3)新たなビジネスチャンスの拡大が可能となり、スリムで効率的な政府の実現につながる。
日本経団連では、かねてより、市場化テストの早期本格導入に向けた環境整備を求めてきた。こうした要望も踏まえ、政府は、2005年3月、「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」(以下、3か年計画)を閣議決定し、市場化テストの本格導入に向けた基本方針等を決定するとともに、今年度からモデル事業(3分野8事業24箇所)を実施している。
しかし、現状では、(1)民間事業者等からの提案をもとに、第三者機関による監視の下で、可能な限り幅広い公共サービスを市場化テストの対象として選定していく手続き、(2)包括的な民間開放を可能・容易にする規制改革、(3)官民間の競争条件の均一化措置、(4)公共サービスに関する徹底的な情報開示、などを実現する強固な法的枠組みは未だ整備されていない
そのため、(1)モデル事業の対象が、法改正を伴わなくても実施可能な事業等、民間の事業提案に比べて限定されたものに止まったこと、(2)官民の競争入札を実施する仕組みが未整備であり、官が参加しない民のみの入札となったこと、(3)法制度に裏づけされた強力な権限を有する公正・中立な第三者機関が存在しないこともあり、公共サービスに関するコスト等の情報公開が不十分となるなど官主導の入札となったこと、等の課題が明らかになっている。
2006年度からの本格導入を行うためには、早期に強固な法的枠組みを整備していく必要がある。法案の策定にあたっては、主に以下の4つの点を踏まえ、効率的でより良い公共サービスが合理的な価格で提供され、競争原理の導入によって不断の改革が実現していく制度とすべきである。

(1)市場化テスト法(仮称)の早期制定と関連予算の早期検討

市場化テストの導入にあたっては、予算や、定員策定プロセスとの連携が不可欠であり、予算や定員の要求から査定に至るプロセスと密接に連携し、効率的な行政の実現を目指すべきである。
こうした観点から、2005年度中の早期に「公共サービス効率化法(市場化テスト法)案」(仮称)(以下「市場化テスト法」)を策定して、国会に提出するとともに、2006年度予算の概算要求の段階から、市場化テストの本格導入を視野に入れた検討を行う必要がある
法律案は、官でなければ当該事業を実施できないとしている個別法の見直しなど関連する規制改革や、徹底した官業の情報開示等による官民間の競争条件均一化措置を、包括的かつ一体的に実現するものとしていくべきである。また、不要な公共サービスの廃止、民営化、民間譲渡等を含めた幅広い民間開放につながるような制度とすることが望ましい。

(2)権威ある強力な第三者機関の設置

市場化テスト法に基づく制度においては、入札対象となる事務・事業は民間の提案が基本となることから、民間にとって提案が行いやすく、透明・中立・公正な競争条件が確保される必要がある。そのため、コストを含めた官業の業務・資産等の調査・査定と徹底した情報開示、実施プロセスの監視等を行う中立で高度な専門知識を有する第三者機関を設置することが不可欠である
この第三者機関においては、官民競争入札が単なる価格競争に陥ることのないよう、事務・事業の効率化や質的な面からの評価など複雑かつ専門的な実務を担うとともに、経営マインドなどが求められることから、官主体とすることは適当でなく、民間人を主体とする独立した強力な権限を有する権威ある機関とし、弁護士や公認会計士等の実務専門家も積極的に登用すべきである。なお、利益相反を避ける観点から、第三者機関のメンバーが入札や監視対象となる事務・事業と密接な関係を有する事案を検討する場合は、当該案件には関わらないことを明確に定めるなど、弊害防止措置を講じていく必要がある。

(3)独立行政法人、地方公共団体が行う事務・事業の対象化

独立行政法人は、国等が行う事務・事業の執行部門を別法人化した組織であることから、その業務は官業そのものであり、市場化テストの対象としていくことが欠かせない。行政改革推進本部に置かれている独立行政法人に関する有識者会議と密接な連携を図りつつ、各中期目標期間の終了時を中心に市場化テストを必ず導入していくべきである。
また、民間に開放すべき事務・事業は、住民に身近な公共サービスを提供している地方公共団体に多く存在しているだけでなく、現在、地方公共団体においては事務・事業の効率化への取り組みが求められている。国等への制度導入と歩調を合わせる形で、市場化テスト導入に向けた地方公共団体向けの統一指針を策定すると同時に、制度の導入を阻害する法令の改正等を行う必要がある

(4)公務員の処遇の在り方の検討

今後検討を要すべき重要な課題は、民間事業者が事務・事業を落札した場合の公務員の処遇である。その検討にあたっては、府省間を超えた配置転換を円滑化していくための仕組み作りや、公務員の新たなキャリアアップの途を開くため、意欲のある公務員が落札した民間事業者で活躍することを可能とする関連制度の改正などが求められる

2.規制改革・民間開放集中受付月間の制度改善

毎年2回(2004年度は6月、10月−11月に実施)、全国規模での規制改革要望を集中的に受け付ける制度が導入されてから既に2年が経過し、この間、広く民間から提案を募り、規制改革を進める仕組みが定着したことは高く評価できる。
ただし、現行のスキームは、(1)政府として対応方針を決定する項目が、比較的短期間の間に措置等がなされるものに限定されている、(2)提案の処理サイクルが実質的に2ヵ月程度と短く、関係府省の回答に対する反論の機会も十分でないなど、提案者にとって使い勝手の良いものではない面もある。
集中受付月間のスキームについては、3か年計画でも常に検証・評価を行い、適宜、その運用・手法等のより一層の充実を図るとされていることから、以下に指摘する諸点を踏まえ、制度の不断の改善を図っていくことが求められる。

(1)個別要望の検討に際し留意すべき事項

[1] 横断的な視点からの検討

民間事業者等から寄せられた要望は、関係府省ごとに振り分けられ、個別に折衝が行なわれるが、手続きの簡素化、検査・検定、資格者等の必置規制、法令解釈の明確化、法令等の運用の改善など、共通の視点から府省横断的にブレイクスルーを図る手法の採用を検討する必要がある

[2] 積み残し課題解決のための取組み

規制改革・民間開放推進本部の決定を経て、政府としての対応方針が示される項目は、遅くとも翌年度中に実施するものであって、対応策が明確であるものに限定されている。本部決定の対象とはならないが、政府として検討等を行うとされた項目は、3か年計画に掲載されるものの、短期間で実現を図ることが困難な要望については、積み残し課題とされるケースが少なくない。また、事実誤認や税の減免等に関するものを除く要望の多くは「対応不可」とされているのが現状である。
そこで、現行の措置の分類(以下の注参照)で、「b:全国規模で検討」及び「c:全国規模で対応不可」とされたもののうち、「構造改革特区に関する有識者会議」の取組みを参考に、規制改革・民間開放推進会議(以下、推進会議)において、特に重要と判断したものについて、例えば「重点継続検討事項」として公表するとともに、集中的な検討を行うことも考えられる

(注)現行の措置分類
a:全国規模で対応
b:全国規模で検討
c:全国規模で対応不可
d:現行制度下で対応可能
e:事実誤認
f:税の減免等に関するもの
[3] 政府として「検討」するとされた事項の実現性確保

関係府省との折衝において「b:全国規模で検討」との回答があったにもかかわらず、3か年計画に反映されない項目がある。また、3か年計画に掲載されたとしても具体的な記述がなく、政府としての対応が曖昧なケースもある。こうした事態を改善するため、毎年末、推進会議が取りまとめる答申に、可能な限り検討の具体的な方向性や内容等を詳述していくことが求められる

(2)要望処理のプロセスの見直し

毎年2回の提案募集を行い、構造改革特区推進室と連携しながらスピード感ある規制改革を実現していくために、短期間での成果を目指す現在の取組み方針は基本的に評価できる。しかし、政府の対応方針決定まで、実質的に2ヵ月間という処理プロセスの期間は、全国規模での規制改革を検討する上で、やや無理のある設定となっている。少なくとも、多くの要望が集中する「あじさい月間」に関する政府決定については、政府方針決定に至るまでの期間について特区との時間的な違いを設けるなど、弾力的な対応を行っていく必要がある

3.地方等における規制改革推進のための課題

(1)地方公共団体における規制改革の推進

国レベルの規制改革は、これまでの政府の取組みにより、一定の成果を上げているが、例えば、大規模小売店舗立地法に係る届出を行う際、法律には定められていない事前協議を求めるなど、条例等に基づく「上乗せ、横出し」に代表される地方レベルの規制改革は一向に進展していない。細部に宿る規制を見直していくためには、「規制改革なくして地方分権なし」との考え方に基づき、国と地方が連携して規制改革を推進していく一体的な取組みが不可欠である
国の法令等に基づく地方公共団体における規制のうち、全国的な規制改革を一層推進する観点から必要と判断される事項については、国が地方における規制改革を支援するための技術的助言等を行うなど、地方公共団体に対し積極的に規制改革に取り組むよう要請を強めるとともに、その徹底を図る観点から、定期的にフォローアップを行う必要がある
また、推進会議として、地方六団体等と密接な連携を図り、地方における規制改革の推進を図るため定期的な意見交換の場を設けることも重要である。

(2)3か年計画に対するフォローアップの充実

3か年計画に記載された事項に関しては、事項名、措置内容ごとに実施時期、講ぜられた措置の概要等が事後的にフォローされる仕組みとなっている。しかし、「措置済み」とされた事項でも事業者として使い勝手の悪いものや、「検討」とされた事項であってもその内容が不十分であるものなど、十分な成果を上げていないケースが散見される。こうした事項については、規制改革・民間開放推進会議において、定期的にヒアリングを含めた検討を行うなど、3か年計画の実効性を向上させていく取組みを検討することが望まれる。

おわりに

構造改革の重要な柱である規制改革・民間開放の推進は、日頃のビジネス活動を通じた民間事業者等のニーズに基づく提案によって支えられている。日本経団連では、例年11月に取りまとめていた規制改革要望を今年度から6月に前倒しし、年2回、実施される集中受付月間のスキームを有効に活用しながら、個別の要望の実現に向けて、最大限の働きかけを行っていくこととする。
以下に掲げる提案について、政府は真摯に対応し、新規要望はもとより、継続要望とされている積み残し課題の早期実現に取り組まれることを望む。

以上

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