[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

今次介護保険制度改革に関する共同意見

2004年12月7日
(社)日本経済団体連合会
会長奥田 碩
日本商工会議所
会頭山口 信夫
(社)経済同友会
代表幹事北城 恪太郎
(社)関西経済連合会
会長秋山 喜久

今回の介護保険制度改革にあたっては、急増する給付費を適正化して、その持続可能性を高めることが最大の課題である。そのためには、真に必要な人に対する、効果のある給付に重点化すること、および公平で公正かつ納得できる負担方式にすることによって、経済活力との整合性をとる必要がある。

こうした基本的観点から、下記の点について共同で意見を表明する。

1.介護保険制度の被保険者範囲は、現行を維持すべきである。

被保険者範囲を40歳未満に拡大することは、加齢に伴う要介護状態の改善という制度創設の趣旨および世代間の公平の観点から、反対である。特に若年者は高齢者介護の問題に直面する状況は少なく、また本人自身が給付サービスを受ける可能性も少ないため、その保険料負担に対する理解が得られない。そのため、保険料の未納・滞納問題が生じかねず、制度の公正さを損なう。
事業主と被用者からすれば、厚生年金保険料負担が毎年1兆円弱ずつ増加していく上に、あらたに介護保険料の負担増が積み重なれば、経済の活力と企業の国際競争力を殺ぐことになり、雇用に大きな影響が及ぶことになりかねない。

2.障害者支援費制度の介護保険制度への組み入れは、各制度の趣旨が異なることから、適当でない。

障害者支援費制度は昨年4月にスタートしたばかりであり、制度の実績についての十分な検証・評価もできていない状況である。また若年障害者には、高齢者と比べ多様なニーズがあり、現行介護保険制度の枠組みの中で効果的に障害者福祉施策が機能するか、疑問である。さらにこうした障害者施策を受益と負担の関係を重視する社会保険に組み込むことにも疑問がある。支援費制度については財源不足がいわれるが、まず、同制度の効率化・合理化を優先し、その費用の適正化を図るべきである。

3.介護保険施設入所時における居住費・食費については、低所得者に対する配慮をした上で、実費を徴収することとすべきである。

多床室入所時における居住費について、一定以上の所得がある受給者に対して光熱水費分のみを自己負担とする案が示されているが、在宅介護サービス受給者の負担に比べて軽すぎると考えられる。在宅介護との均衡や負担能力の観点から、実費を自己負担とすべきである。

4.地域支援事業(仮称)を安易に介護保険制度に組み入れることには反対である。

効果のある介護予防の重要性は理解するものの、地域支援事業(仮称)は、要支援・要介護状態と認定されなかった者についても対象とすることから、対象者の基準が不明確になりがちで、際限のない費用の増大を招きかねない。同事業は税を財源として行うこととした上で、費用対効果を明確に検証・把握できるようにすべきである。財源などに関する議論や、効果の検証が不十分なまま安易に介護保険制度に組み入れることには反対である。

以上

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