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温暖化対策 環境自主行動計画
2004年度フォローアップ結果概要版

2004年11月26日
(社)日本経済団体連合会

1.産業・エネルギー転換部門の2003年度のCO2排出量

日本経団連は、「2010年度に産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量を1990年度レベル以下に抑制するよう努力する」という目標を掲げ、各業種、企業とも、この達成に向けて努力している。
2004年度フォローアップに参加した産業・エネルギー転換部門34業種 #1 からのCO2排出量は、1990年度で5億555万t-CO2 #2 であり、これは、1990年度のわが国全体のCO2排出量11億2,230万t-CO2の約45.0%を占めている。また、この排出量は、わが国の産業部門およびエネルギー転換部門全体の排出量(1990年度6億1,500万t-CO2 #3 )の約82.2%に相当する。
2004年度フォローアップの結果、2003年度のCO2の排出量は5億239万t-CO2となり、2002年度比で1.0%増加、1990年度比で0.6%減少となった。
なお、一部の原子力発電所の長期停止にともなう電力のCO2排出原単位悪化による影響を除いたCO2排出量は、1990年度比で約3.8%減の約4億8,600万t-CO2と試算される。

産業およびエネルギー転換部門からのCO2排出量
脚注4へのリンク 脚注5へのリンク

2.業種別の動向

今回参加した産業およびエネルギー転換部門34業種のうち、CO2排出量が90年度比で減少した業種は19業種、2002年度比で減少した業種は8業種であった。
CO2排出量の削減を目標として示した12業種のうち、90年度比で減少した業種は9業種、2002年度比で減少した業種は4業種であった #6
エネルギー使用量の削減を目標として示した5業種のうち、5業種全てが90年度比で減少し、2002年度比でも2業種において減少している #6
CO2排出原単位あるいはエネルギー原単位の向上を目標として示した21業種のうち、90年度比で原単位が改善した業種は14業種、うち2002年度比でも改善した業種は10業種であった(別紙1<PDF>参照) #6

3.民生業務・運輸部門におけるCO2削減への取り組み

我が国においては、民生業務・運輸部門からの排出が20〜30%増加していることから、環境自主行動計画においても民生・運輸部門での取り組みを強化している。
環境自主行動計画には民生業務部門から10団体・企業、運輸部門から13団体・企業 #7 が参加し、それぞれ自主行動計画を策定し温暖化対策に取り組んでいる(別紙2<PDF>)。
また、産業およびエネルギー転換部門の参加業種においても、民生業務・運輸部門でのCO2排出抑制対策に取り組んでいる。
参加業種から報告された事例によると、オフィスや物流での対策を進めているほか、企業の持つ技術を最大限活用した省エネルギー製品の提供、さらに、従業員を通じ家庭や通勤におけるCO2排出抑制に努めている。またこれらの取り組みのノウハウや技術を総合的に活用し、ESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)事業や、エネルギーマネージメントシステムの事業化を推進している。

※ 参加業種から報告された民生・運輸部門における取り組みの例
≪オフィスにおける対策例≫
≪物流における対策例≫
≪LCA的観点からの取組みの例≫
  定量的評価の例(効果は業界推定)
※ 海外での温室効果ガス削減事業

我が国企業が持つ優れた技術を活用し、海外でのCO2排出抑制を進めることも、産業界の重要な自主的取り組みと言える。特に、海外での削減を日本の京都議定書での約束達成に活用できるクリーン開発メカニズム(CDM)や共同実施(JI)は、自主行動計画の目標達成する手段の一つとして位置付けられる。
今回のフォローアップでは、世界各地での植林や省エネ事業、バイオマス発電やメタンガス回収などの具体的な事業を実施している例が報告された。さらに自主行動計画を実施している多くの業種・企業が、世界銀行を始めとする海外の炭素基金や、日本の民間企業主体の基金である「日本温暖化ガス削減基金」に自主的に参加し、海外での温室効果ガス削減に取り組んでいる。
また、現在までに具体的な取り組みを実施していない業種においても、取り組みの準備を進めている例がある。

4.自主行動計画の取り組みの評価

(1) 産業およびエネルギー転換部門のCO2排出量変化の要因

下記に34業種からの2003年度のCO2排出量が1990年度より比較して0.6%減少した要因を分析した。CO2排出係数の悪化や生産活動量の増加以上に活動量あたりの排出量の改善が進んでおり、各業種・企業による省エネなどのCO2排出削減対策が効果を挙げていることが分かる。
一方、2002年度と比較した要因の分析からは、各業種・企業による生産活動による生産活動あたり排出量の削減は進んでいるが、原子力発電所の長期停止によるCO2排出係数の悪化、また生産活動の増加による影響により、CO2排出量は前年度より1.0%増加したことが分かる。

1990年度比2002年度比
CO2排出係数の変化 *1+0.4%+0.8%
生産活動の変化 *2+4.9%+0.8%
生産活動あたり排出量の変化−5.9%−0.6%
−0.6%+1.0%

*1 燃料については発熱量あたりのCO2排出量、電力については電力量あたりのCO2排出量

*2 生産活動の変化を表す指標は、各業種において最もエネルギー消費と関連の深い指標を
選択している。産業及びエネルギー転換部門34業種全体の生産活動量の変化は、各業種
の指数をCO2排出量に応じて加重平均したものである。

※ 原子力発電所の停止による影響

2003年度は一部の原子力発電所が長期停止し、電力の安定供給を目的として、その発電量を火力発電によって補った影響により、電力の使用に伴うCO2排出原単位が悪化した。
電気事業連合会の試算にもとづき推定した原子力発電所の長期停止の影響がない場合の電力のCO2排出原単位(3.24t-CO2/万kWh:全電源、発電端)を用いて計算すると、34業種からのCO2排出量は約1600万t-CO2(約3.2%)減少する。

(2) エネルギー効率の国際比較

参加業種が行なったエネルギー効率の国際比較によれば、いずれの業種においても、既に世界トップレベルのエネルギー効率を達成している(別紙3<PDF>)。
我が国の企業が持つ、優れた省エネ・新エネ技術等の海外移転を進め、地球規模での温室効果ガスの排出抑制に貢献することが重要である。

5.今後の方針

景気回復に伴う生産量の増加にも拘らず、参加業種の取り組みにより2003年度のCO2排出量は1990年度比0.6%の減少となった。1990年度以降、CO2排出原単位やエネルギー原単位の向上あるいは炭素含有量の少ないエネルギーへのシフトが着実に進むなど、産業界の自主的取り組みは十分に成果をあげている。
また、主要業種のCO2排出量見込みをもとに試算すると、2010年度においても「1990年度レベル以下」という目標の達成は十分に可能な範囲であるといえる(別紙4<PDF>#8
日本経団連としては、今後とも参加業種に対して、個々の目標達成に向けた対策の着実な実施を求めるとともに、「2010年度に産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量を1990年度レベル以下に抑制するよう努力する」という全体としての統一目標の達成に向けて努力していく。
環境自主行動計画については、2002年度より第三者評価委員会を設置し、中長期にわたり自主行動計画の枠組の中で産業界の取り組みを続けるための評価を受けている(別紙5<PDF>)。
本年度のフォローアップでは、同委員会の指摘を受け、フォローアップの透明性の向上、原単位評価やエネルギー効率の国際比較による参加業種の努力の明確化、2010年度の全体目標の達成可能性の検証などの改善を図ったところである。今後とも自主行動計画の透明性、信頼性の向上とともに、京都メカニズムの活用も図りながら、確実な目標達成に努める。
同時に、産業界としては、自らのCO2排出抑制のみならず、民生・運輸部門等への貢献をさらに強化する。具体的には、本年7月に公表した提言「地球温暖化対策の着実な推進に向けて」の中で宣言した、(1)省エネ製品の開発・普及や (2)省エネに関する消費者への情報・サービスの提供、(3)物流における温暖化対策の推進、(4)森林整備活動の推進、(5)家庭やオフィスにおける温暖化対策の推進を進めていく。
さらに、地球温暖化問題は地球規模の問題であり、かつ長期的な取り組みが必要である。産業界としては、我が国の優れた技術による海外への貢献、また温暖化問題解決の鍵である技術開発を引続き進めていく所存である。

以上

  1. 本年度より石炭エネルギーセンターが参加を取り止め、産業およびエネルギー転換部門からの参加業種は以下の34業種となった(50音順);
    板硝子協会、住宅生産団体連合会、情報通信ネットワーク産業協会・電子情報技術産業協会・日本電機工業会・ビジネス機械・情報システム産業協会、精糖工業会、製粉協会、石油連盟、石灰石鉱業協会、セメント協会、全国清涼飲料工業会、電気事業連合会、日本アルミニウム協会、日本衛生設備機器工業会、日本化学工業協会、日本ガス協会、日本建設業団体連合会・日本土木工業協会・建築業協会、日本鉱業協会、日本工作機械工業会、日本ゴム工業会、日本産業機械工業会、日本産業車両協会、日本自動車工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車部品工業会、日本伸銅協会、日本製紙連合会、日本製薬団体連合会・日本製薬工業協会、日本石灰協会、日本造船工業会・日本中小型造船工業会、日本鉄鋼連盟、日本鉄道車両工業会、日本電線工業会、日本乳業協会、日本ベアリング工業会、ビール酒造組合。

  2.   産業界全体の排出量の算出にあたっての電力原単位は、下記の電事連出所データ(全電源平均、発電端)を利用している。また、個別業種(個別業種版に掲載)が使用している電力原単位についても特に説明のない限り、下記のデータを利用している。

    (t-CO2/万kWh)
    1990年度1997年度1998年度1999年度 2000年度2001年度2002年度2003年度 2010年度2010年度
    (BAU)
    3.743.263.163.34 3.383.383.623.89 2.993.89

      その他の各種エネルギーの換算係数:発熱量については、総合エネルギー統計、資源エネルギー庁「エネルギー源別発熱量表の改定について(2001年3月30日)」、電事連調査データを活用。発熱量表の改定にともない、1999年度以前と2000年度以降では熱量換算係数が異なる。炭素換算係数については、環境庁「二酸化炭素排出量調査報告書(92年)」を利用。

  3.   環境省発表のわが国のCO2排出量の内、エネルギー転換部門、産業部門、工業プロセスの合計である。

  4.   CO2排出量の実績値や見通しについては、数字の精度を高めるために毎年見直しを行なっていることから、昨年の結果と比較して、増減が生じている。

  5.   参加業種の想定に基づくBAU(Business as usual:自主行動計画を2004年度以降実施しない場合における2010年度のCO2排出量)は1990年度実績より約3800万t-CO2増加すると見込まれる。

  6.   CO2排出量実績とCO2排出原単位を目標として掲げる日本ガス協会、CO2排出量実績とエネルギー使用原単位を目標として掲げる日本ゴム工業会、CO2排出原単位とエネルギー使用原単位を目標として掲げる全国清涼飲料工業会、製粉協会、またエネルギー使用量とエネルギー使用原単位を目標として掲げる日本工作機械工業会、日本電線工業会については、それぞれの目標について改善業種数に含めた。

  7.   民生業務部門の参加業種(50音順):
    全国銀行協会、日本LPガス協会、日本損害保険協会、日本チェーンストア協会、日本百貨店協会、日本ホテル協会、日本貿易会、日本冷蔵倉庫協会、不動産協会ならびにNTTグループ
      運輸部門の参加業種(50音順):
    全国通運連盟、全日本トラック協会、定期航空協会、日本船主協会、日本内航海運組合総連合会、日本民営鉄道協会ならびにJR貨物、JR九州、JR四国、JR東海、JR西日本、JR東日本、JR北海道

  8.   2010年度の生産活動量を予測する際は、共通となる経済指標(平成16年1月16日経済財政諮問会議参考資料、内閣府)を前提としたが、業種によっては独自の前提に基づく場合がある。


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