[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

企業買収に対する合理的な防衛策の整備に関する意見

2004年11月16日
(社)日本経済団体連合会

日本経団連では、経済構造の転換と企業の「選択と集中」の円滑化の観点から、組織再編関連法制・税制の整備を求めてきた。その結果、累次にわたる商法、税法等の改正が行われた。また、わが国は、対日直接投資が経済の活性化に資することから、1994年に対日投資会議を設置し、その促進に努めており、投資残高は着実に増加している。他方、これらとあいまって、近年、株式持合いの解消や株式市場の低迷による時価総額の低下等もあり、合理的な防衛策がない現状の下で、企業価値を毀損する恐れのある買収への懸念が高まっている。

こうした中、会社法制の現代化において、合併等の対価を柔軟化し、親会社株式等を対価とできる方向で検討が行われている。例えば、全く企業風土の異なる会社が、子会社を買収対象企業と合併させ、自社の株式を対価として、現金を負担することなく、100%子会社化することが可能となる。

これに伴い、企業の長期的利益にコミットしていない買収者が、自らの短期的利益の追求を図ることにより、企業価値が損なわれたり、株主や従業員、地域社会等に大きな不利益を及ぼすリスクが増すことは否定できない。

例えば、長期的利益の源泉となる人的資産の解体や事業部門の切り売りが行われる恐れがある。また、従来の雇用慣行の継続性が損なわれ、経済社会に重大な悪影響が及びかねない。さらに、株主の情報不足を利用して売り急ぎを煽ったり、極端な場合は買い集めた株式を安定株主等に高値で買取るように迫る行為が行われる懸念もないとは言えない。

これらの企業価値を毀損する恐れのある買収について、例えば米国においては、いわゆるポイズン・ピルを始めとして様々な防衛策が整備されており、具体的な事例の積み重ねにより一定の評価が定着している。また、欧州においても、このような買収に対抗できる制度が種々用意されている。

他方、わが国においては、1996年に上に述べた対日投資会議において、企業買収に対する防衛策のあり方を多面的に検討する必要があるとされたにも関わらず、未だに合理的な防衛策が整備されていない。

そこでわが国においても、企業価値を毀損する恐れのある買収に対し一定の歯止めを設け、国際的なイコール・フッティングを実現する観点から、会社法制の現代化と併せて、企業買収に対する合理的な防衛策を早急に整備すべきである。

以上

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